KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

花衣ぬぐやまつわる… 下 わが愛の杉田久女 (集英社文庫)

花衣ぬぐやまつわる… 下 わが愛の杉田久女 (集英社文庫)

花衣ぬぐやまつわる… 下 わが愛の杉田久女 (集英社文庫)

作家
田辺聖子
出版社
集英社
発売日
1990-06-20
ISBN
9784087495881
amazonで購入する

花衣ぬぐやまつわる… 下 わが愛の杉田久女 (集英社文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

優希

高浜虚子との出会いにより、俳句の才能を伸ばしていく久女。天才俳人の名をも手にしたものの、突如坂道を転がり落ちるように世界が変わるのが恐ろしかったです。突如除名されたことで待っていたのは不幸な生活でしかなかったですからね。様々な不運が重なりながらも懸命に生きる久女。芸術と家庭の間で懸命に生きた天才女流歌人の辛い真実を見たようでした。

2018/06/09

ひらちゃん

ユダにもなれずノラにもなれず。ホトトギスを追われ、戦争の中の孤独な姿、それでもずっと胸に抱え守ってきた俳句を。そしてあまりに辛い最期を。久女伝説の彼女はやはりここにはいない。没してなお追い討ちをかけた虚子にどうしてここまでと問いただしたい。娘さんもやり切れないでいただろうに。俳諧の重しがとれて、やっと本当の久女像が見えるようになった。自由になれた今なら久女はどんな句を読むだろうか。

2021/09/22

Rico

友人に杉田久女の俳句を紹介してもらい、そこから松本清張の「菊枕」を読んだら、「菊枕」に描かれている久女(ぬい)はご本人とは違う、という指摘を見つけ、田辺聖子版も読んでみることに。確かに田辺さんも指摘されているように、松本清張版は、久女を描きたいというより、松本世界の短編集になっていたので、こちらの方が丁寧な文献の読み込みや考察に基づいていてご本人像に近いのではないかと思う。何より田辺さんの愛情あふれた目線が感じられて、女性俳人の昭和初期における地位などを含め、女性から納得度の高い描き方になっていた。

2020/08/18

haruko

杉田久女が、こんなにも苦しい一生を終えた女性だったとは全く知らなかった。心の通じ合えない夫婦、俳句にのめり込み、他は何も見えなくなる妻。しかし二人の娘を見捨てることは出来ない。ノラにもなれず、と、彼女は詠んでいる。「ホトトギス」会員となり、師と仰ぐ高浜虚子からも、あまりの激しさ故か疎まれる。戦後昭和21年に久女は精神病院内で栄養失調のため57歳で没。結局彼女は何も報われず怒りのうちに死んだことになる。何故もっと早くに夫と別れなかったのか、何故、虚子を見捨てて他へ目を向けなかったのか?読者に悔しさがつのる。

2013/01/11

つる

「杉田久女像」がどのように作られていったのか、一歩引いた視点から、ルポタージュのように描かれている。 一人の女性俳人の人間性への評価が、周囲の人間や組織によって、歪められていく過程が恐ろしかった。 古い俳壇とはこんなに閉鎖気質だったのかと驚いたが、その時代の俳句界の情熱の凄まじさ、 終章の「残るものはおのがじしの珠玉の作品ばかりである」という言葉が沁みた。 久女は、残してくれた句の中に生きている。それで良いと思った。

2022/08/27

感想・レビューをもっと見る