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可笑しい愛 (集英社文庫)

可笑しい愛 (集英社文庫)

可笑しい愛 (集英社文庫)

作家
ミラン・クンデラ
西永良成
出版社
集英社
発売日
2003-09-19
ISBN
9784087604443
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可笑しい愛 (集英社文庫) / 感想・レビュー

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zirou1984

旧題『微笑を誘う愛の物語』からの改訳なのだが、確かにこの短編集は微笑よりも哄笑の方が良く似合う。冗談が冗談として通じない社会で繰り広げられる可笑しい愛、滑稽な愛、諧謔的な愛。好色と征服欲に駆り立てられる主人公たちの多くはドン・ファン的であり、それは現代語に言えばヤリチン文学と呼べるものなのだろう。しかしそれはクンデラの言葉を借りるならば抒情的ではなく叙事的なものなのであり、だからこそ猟色の隙間から世界と人間が持ちうる不条理な構造が暴き倒されている。笑いからもこぼれ落ちた笑いが不器用に微笑んでいる。

2016/06/13

ぞしま

タイトル通り。可笑しな愛が満載で読みごたえ十分です。特に最後のエドワルドと神は、忘れがたい作品になりそう。どこかカミュの異邦人にもつながる不条理を感じました。ドンファン主義、色情から横溢する物語は対話的な進行を取り、一言で言えば俗なのだが、そこにはある種の人間の本質(みたいなもの)が描かれていて、目を背けたいような、背けたくないような。前提として個人の孤独が確立されているからこその物語、その奇異な帰結はいまっぽく訴求力を持つ。エドワルドの冷徹な悲しい悟り、同じ男としてやり切れさも感じる。

2014/09/21

長谷川透

題が示すように週録された全7篇のどれも普通の恋愛は書かれていない。恋愛で生じる歪み、僻み、妬み、そして拗れた関係を傍観する中で、彼らはなぜ普通に人を愛せないのだろうかと思う。思案を突きつめて行くと、では普通とはなんぞや、という疑問にぶち当たるが、クンデラの小説の中に伏流している意思や行動を縛りつける柵が可笑しい恋の元凶ではないかと不図思う。社会主義体制は極端な柵ではあるが、管理社会ではなくても人の関係を縛り付ける柵は必ず存在する。そうなってくると彼らが示す可笑しい愛も普遍性を持った身近なものに見えてくる。

2013/11/08

ぷるいち

デュラスの「著述というものの根源的な慎みのなさをかばう手だてはもはやあるまい」という言葉が浮かんだ。クンデラは非常に巧妙に小説を組み立てるのだけれど、ときに遠慮のなさを感じることがある。少なくともこの小説では、彼は人間心理に、一人の部屋に、性的な場面に登場しあらゆることを書き倒してしまっている。もっとも、小説の人物たちが「辱められた」と感じさせる時点である程度成功しているわけだけれど。なんとなくやるせない気分になるのは僕だけだろうか?

2016/05/16

ふくろう

クンデラは、繊細な美学を持つ殺し屋、もしくは手さばきの美しい外科医のようだ。笑顔で容赦なく、しかもエレガントに人の心を暴いてくる。おすすめは「シンポジウム」。「彼女の尻はもはや尻ではない。形の整った見事な悲しみだった」などの名言がすばらしい。

2009/09/30

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