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母のあしおと

母のあしおと

母のあしおと

作家
神田茜
出版社
集英社
発売日
2018-08-24
ISBN
9784087711547
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「母のあしおと」のおすすめレビュー

私の人生を逆から辿ったら…? 死後から始める“私の生きてきた道”

『母のあしおと』(神田茜/集英社)

「自分のこれまでの人生には、どんなドラマが詰まっているのだろう」―そう考えさせてくれる『母のあしおと』(神田茜/集英社)は、ひとりの女性の生涯を逆から順に辿っていくという、新感覚な連作短編集だ。

 主人公は北海道に住んでいた、「道子」。5人兄弟の末っ子として生まれた道子は妻、母、義母、祖母として生き、天に旅立っていった。物語は、そんな道子の死後のエピソードから幕を開ける。妻の死後を生きる夫やお葬式の時の次男、長男の婚約者など視点人物を変えて語られていく道子の人生には、様々な喜怒哀楽が詰め込まれている。

 人は生きているうちに、どん底な日を何度も経験することがある。しかし、そんな日さえも長い目で見たら、「悪くない」と思えるのかもしれないと感じさせる力が本書にはある。

 主人公である道子は万人から愛される完璧な人間ではなく、視点人物やその時の状況によっては「苦手」や「性格が合わない」と思われることもある。それは、等身大の私たちと同じだ。

 人間はロボットのように完璧にはなれないため、悪口を言われたり、大切な人の気持ちが離れ…

2018/10/9

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母のあしおと / 感想・レビュー

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いつでも母さん

私には母がいる。私も母だ。しかしまだ姑では無い。母にも私にも幼い頃があって、娘時代があったのだ。これは一人の『道子』という女性を描いた7話からなる連作短編。どれも鼻の奥がツンとなったり、心のどこかがキュンとした。道子さん目線の話じゃないのに、却って道子さんが浮き彫りにされて人柄・心情が伝わってくるのが好い。私が夫より先に逝ったら夫や息子は私の何を想うだろう・・ここの道子さんのどこかに私もいるのかなぁ。過去があって今の私がいる。

2018/09/26

🐾Yoko Omoto🐾

近所の老人会で出会った女性に亡き妻の面影を重ねながら、彼女と歩んできた人生を折に触れ思い出す夫の物語から始まる連作短編。妻・母・姑、そして娘・義娘・妹と、人生で何役もこなしてきた道子さんという一人の女性の人生が、時を遡りながら身内視点のエピソードと共に綴られていく。平凡に見える人生も、大波小波、山あり谷あり、十分にドラマティックでかけがえのないもの。私の母もきっと、私の知らぬ顔をいくつも持ち、様々な思いを抱えながらこれまでの人生を歩んできたに違いないと、その人生に思いを馳せてしまう、そんな良作だった。

2019/01/13

風眠

私の人生は私のもので、もちろんその人生という舞台の主人公も私。私の人生はまだ途上であるけれど、それでも、喜びも哀しみも、怒りも苦しさも、幸せも、病も、困難も、たくさん、たくさん、経験した。この世界では、時に主役になったり脇役になったりしながら、それぞれの見え方や感じ方の中で生きているのだと、思い出させてくれる物語だった。死後から幼い頃へ、逆戻しで語られていく道子の人生。私も自分の死後に「あの人こうだったよね」と、共演者に思い出してもらえる人でありたい。できれば思い出し笑いしながら思い出してもらえるような。

2018/11/03

モルク

「道子」さんの生涯を亡くなってから幼少期まで遡って語る連作短編集。語り手によって道子さんの妻、母、姑、嫁、妹、娘…としての姿が浮き彫りとなる。特に息子から見た母の「もち」と息子の婚約者としての視点「ははぎつね」が印象的だった。視点がかわるとこんなにも違うというのがよくわかる。息子の婚約者に対してヤキモチをやく道子さんは人間的だなぁ。「クリームシチュー」での姑と道子さんの関係がチクチク痛い。本作から母を思い出したと同時に、私自身は夫や娘、娘婿、姑、母…から見たらどうかを考えたら…悪いことしか思い浮かばない。

2019/01/17

のんき

道子さんの人生を、亡くなったときから、遡っていきます。母に、妻になったとき、娘時代と、その時の道子さんの周りの人が道子さんのことを語る連作短編。入院している道子さんのお母さんが道子さんを心配する気持ち。泣けましたあ。道子さんが、いなくなったとき、わたしも母親と同じくらい心配したし、道子さんが事故で亡くなってしまったりとか、わるいことばかり考えてしまいました。でも、やっぱりいいことを考えてあげることが一番なんだなあ。その願いをご先祖さんが一生懸命働いて叶えようとしてくれているんだなあ。

2018/11/29

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