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真実の航跡

真実の航跡

真実の航跡

作家
伊東潤
出版社
集英社
発売日
2019-03-05
ISBN
9784087711806
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「真実の航跡」のおすすめレビュー

実際に起きた凄惨な事件がモデル――戦争中の闇、忖度文化が生んだ罪と戦犯裁判を通じて見いだされる希望とは?

『真実の航跡』(伊東潤/集英社)

一手先さえ読めない者がいる。

 戦争中の話だからといってまるで他人事じゃない、と小説『真実の航跡』(伊東潤/集英社)を読んで背筋を正したのは、このセリフが発せられたときだ。BC級戦犯として起訴された軍艦「久慈」の艦長・乾について、弁護士の河合と鮫島が意見を交わす場面である。

 直前にこんなセリフもあった。

その決断には一貫性も大局観もなく、その場その場で、眼前に置かれた選択肢のよいと思う方を選んでいるだけだ。

 それは多くの大人たちが、仕事の現場で犯しがちなミスではないだろうか。それをしたら、次にどうなるか。一瞬、冷静になって考えればわかることを、考えられずに悪手をうつ。追い詰められた焦りで悪手を重ね、ますます目先のことしか考えられなくなる。

 その結果、乾が招いてしまったのが「ダートマス・ケース」。昭和19年3月に実際に起きた、「ビハール号事件」がモデルとなった事件である。

 昭和19年3月、大日本帝国の軍艦「久慈」は、インド洋でイギリス商船「ダートマス号」を撃沈する。艦長の乾は、112名の捕虜のうち69名を、救助したのち…

2019/4/16

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真実の航跡 / 感想・レビュー

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いつでも母さん

敗戦国・日本の『日本人の魂』を持って五十嵐司令官は責任者として絞首刑に臨む。戦犯裁判で法の正義など絵に描いた餅なのだ。が、その弁護を担った若い弁護士・鮫島の苦悩と奮闘を、伊東作家が今の日本を嘲笑うかのように突き付ける。どこまでが真実か、何があったのか、どう活かされるかを私達は今また知ることになる。事ここに至る時、人の真価が試される。苦しい読書になった。今、この国は五十嵐の望んだ国になっているのだろうか。私達は『日本人の誇り』を持っているだろうかー

2019/04/15

starbro

伊東 潤は、新作中心に読んでいる作家です。著者の新境地でしょうか? 第二次世界大戦後のB級戦犯軍事法廷物の感動作、ドラマがありました。戦勝国が敗戦国を裁く軍事裁判は、茶番でしかありません。五十嵐中将は武士の鑑でした。

2019/04/25

yoshida

伊東潤さんが戦争関連の作品を書いたのは初めてではなかろうか。戦後のBC戦犯裁判。英領香港の法廷で裁かれる海軍の五十嵐と乾。弁護の為、香港に赴く鮫島。戦勝国の裁判であり有罪は確定している。鮫島は法の正義の為、日本の新生の為、裁判に挑む。印象に残ったのは「忖度」と「空気を読む」、そして「仕方ない」。様々な事柄に、これらの要素が絡んでくる。そして何より、現在でもこの状況は色濃く残っている。政界に、会社組織に、日本人の美徳でもあり弊害でもあろう。戦後の日本で、この空気が払拭されていないことに危うさを感じた。力作。

2019/09/01

のぶ

裁判小説としても、戦争文学としても読み応えがあった。太平洋戦争最中に起きた一つの事件。日本の巡洋艦「久慈」は、インド洋でイギリス商船の「ダートマス号」を撃沈、救助した捕虜を殺害した。戦後に艦長だった乾と、司令官の五十嵐は、戦犯として起訴される。弁護にあたるのは鮫島。BC級戦犯の話は今までに何冊か読んできたが、戦場では誰もが異常な状況になっているので、それがどう裁かれるのかが読みどころ。当時の現場の描写はリアルだし、裁判もサスペンスとして面白く描かれていた。戦争の愚かさの一端を見た一冊だった。

2019/03/19

buchipanda3

戦後の戦犯裁判を描いたドラマ、骨太な内容で読み応えがあった。ただ、終盤、もっと本作の根幹(事件の真因)を追求する形の方にして欲しかったかなという印象も。本作は実際に起きた出来事をベースにしており、かなり細部まで描かれている。特に艦上での事件はあまりの惨状に声が出なかった。戦時中は他でも惨劇はあったと思う。ただこれは防げた可能性があっただけに悲惨さが際立つ。要因は「忖度」と「責任の所在の曖昧さ」という現代にも通じてしまうものだろう。法の正義を掲げて理想を追い求めた鮫島はこの2点を突き崩すことが出来たのか…。

2019/03/12

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