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櫛挽道守

櫛挽道守

櫛挽道守

作家
木内昇
出版社
集英社
発売日
2013-12-05
ISBN
9784087715446
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櫛挽道守 / 感想・レビュー

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yoshida

お六櫛で名高い木曾藪原宿に生まれた登瀬。父の吾助は藪原一の櫛挽職人である。幕末にかけての登瀬と家族の物語。櫛挽は男がするものという風潮のなか、登瀬は父のお六櫛に惹かれ、自らも櫛挽になりたいと密やかに思う。後継ぎである弟の直助が亡くなり、直助の姿を求める母の松枝。問屋の奨める縁組を断った吾助と登瀬は櫛挽に命を込める。妹の喜和との確執と悲哀。後に夫となる実幸との櫛に対する考え方の対立。登瀬のお六櫛は父の櫛に比肩する程になる。実際に藪原のお六櫛を見ると、その繊細な造りに驚くのだ。職人の意地と生き様を考えた作品。

2017/09/03

文庫フリーク@灯れ松明の火

『漂砂のうたう』で直木賞受賞された木内さん。私の職人物好きを差し引いても、この『櫛挽道守』が直木賞受賞作と言われたら納得してしまうだろう。これだけの佳作、ユーザー数の少なさはあまりにもったいない。幕末の木曽は藪原宿。目の詰んだ硬いミネバリ(別名・斧折樺)の木から造られるお六櫛。髪を梳く櫛(くし)だけに歯が細かく、およそ10センチにも満たない素材に100本以上もの歯を、印も付けず鋸(のこぎり)で均等に挽く神業の名工・吾助。「櫛木に鋸を入れ、歯の長さの中程まで一旦挽き、そこから鋸を押し戻してもう一度挽き直し→

2014/07/02

ちょろこ

大作で良作の一冊。時代を追いながら一人の女性の歩む姿を細やかに追う大作は良作の一言。時は幕末。揺れる世の中の傍らで木曽の櫛職人を目指す主人公 登瀬の心も揺れに揺れる。ただ父のようになりたい。その一途な思いに待ち受ける困難。まるで大小の岩に阻まれ思うように歩めないもどかしさが丁寧に綴られ、その都度登瀬の胸の内がじっくり心に沁み渡るほどだった。弟 直助の草紙が次第に重みを増す終盤は秀逸。登瀬の心の雪解けを感じた。そして父の言葉。幅の広い平行線のような心が次第に距離を狭めて寄り添う様を思い浮かべ、思わず落涙。

2021/04/02

めろんラブ 

時代小説の醍醐味について一家言をお持ちの方は沢山いらっしゃるでしょう。想像力と共感力に劣る私はこのジャンルが苦手で、完全なる読まず嫌い。しかし、本書が宿す「道を究める覚悟と情熱」と「女として生まれ出ずる苦しみ」は、いかに生きるべきか苦渋の選択を迫られる現代女性にも当てはまる普遍的なテーマ。共感と感慨をもって読み進めました。幕末の動乱を匂わせつつ、市井の人々のつましくひたむきな生き様を細やかな情感溢れる筆で描いた本書は、時代小説マニアならずともきっとのめり込む珠玉の逸品。読後感はまさに薫風の如き爽やかさ。

2015/04/28

なゆ

ひたすらに地道に黙々と淡々と…櫛引職人もそうだが、読み応えも職人肌の本と言えそう。木曽路の宿場町でお六櫛という実用的な梳櫛を代々作り続ける一家の物語。そして長女・登瀬の、おなごだてらに父親のような櫛引きになりたいと願う半生。神業といわれる父親の櫛引きを身に付けることだけに頑なすぎる登瀬には少々苦笑い。実幸との間も、ひねくれてねじくれてどうなることかと。ラスト近くの登瀬の気づきでやっと、心と涙腺が緩んで…息苦しさから一転、希望に満ちてくる。幕末の騒ぎを遠くに見つめながらの、しみじみと読みごたえのある話。

2014/06/01

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