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塞王の楯

塞王の楯

塞王の楯

作家
今村翔吾
出版社
集英社
発売日
2021-10-26
ISBN
9784087717310
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「塞王の楯」のおすすめレビュー

「どんな攻めをもはね返す石垣」と「どんな守りをも打ち破る鉄砲」が戦ったらどうなる? 戦国エンターテインメント小説『塞王の楯』のスゴイところ

『塞王の楯』(今村翔吾/集英社)

『塞王の楯』(今村翔吾/集英社)は、石垣作りの職人を主人公にした戦国エンターテインメント小説である。

 感想を先に書いてしまうと……とにかく面白かった。4、5時間ある映画を夢中で観続けたかのような満足感と心地よい疲労、爽快感があり、久しぶりに没頭して読んだ歴史小説だった。

 主人公の匡介(きょうすけ)は、幼い頃、落城から逃げる途中で家族を亡くし、源斎に拾われる。源斎は穴太衆(あのうしゅう)という石垣を作る職人集団「飛田屋」のリーダー「塞王」であった。彼のもとで修行を重ね成人した匡介は、後継者に目されるほどの実力をつけていく。

 匡介の願いは「絶対に破られない楯」として「石垣」を作り、戦をなくすこと。自分のように、戦乱で家族を失う人々を増やしたくないという想いを強く抱いている。

 ある時、匡介ら飛田屋は京極高次が城主の大津城の改修を依頼される。

 大津城は湖畔にたつ水城なのだが、外堀の正面に水がない。そこに水を満たすことができれば、さらに堅固な城になると考えた匡介。しかしそれは「低い所から高い所へ水を運ぶ」ことになり、誰も…

2021/10/26

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塞王の楯 / 感想・レビュー

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starbro

明日の直木賞発表前に、ギリギリ第166回直木賞候補作5/5コンプリートしました。今村 翔吾、3作目です。書き尽くされている時代設定ではありますが、ブラタモリ的歴史小説、発想が新鮮でした。帯に書かれている単純に矛盾的な話ではなく、核の抑止力的な発想です。 明日の直木賞受賞十分可能性ありだと思います。 https://lp.shueisha.co.jp/tatexhoko/

2022/01/18

しんごろ

戦国時代で戦い抜いた者は武士だけではない。表舞台に立つことはないが、そこには職人による戦いがあった。石工の穴太衆。鉄砲職人の国友衆。石工の匡介達が、鉄砲職人の彦九郎達が、京極高次が城主の大津城を舞台に、世から戦を無くすために、己が信じる物を貫き通すために、攻める。守る。撃つ。凌ぐ。決して交えることはないが何度も戦ってるうちに互いに認めあう。もはや邂逅だ。今村翔吾が描く漢達は、あきらめることを知らず、なんて気高いのだ。そして、漢達を支える女性陣は、なんと凛々しいことか。今村翔吾作品に、またもや感動を覚えた。

2022/01/27

パトラッシュ

日本史上の一大イベントたる関ヶ原の合戦に比べ、その前哨戦とされる大津城の戦いは教科書にも載らないほど注目度が低い。その地味な舞台で石垣造りのプロの穴太衆飛田屋と、鉄砲職人集団の国友衆の技術者としての意地とプライドが衝突するのだ。双方の頭領である匡介と彦九郎は共にいくさで親を亡くしており、彼らが生み出した絶対に破られない楯と強力極まりない大砲がぶつかるシーンの連続は凄まじい。無能な蛍大名と嘲られていた京極高次の意外なリーダーぶりと匡介の密かな慕情が物語に彩りを添えており、読み応え十分な戦国絵巻を堪能できる。

2021/11/26

海猫

これまた分厚い単行本なので、読む前はちょっと怯んだ。が、読み始めたら物語に乗せられ、ぐいぐい読める。石垣造りのことなど、全く興味がなかったのに、ディテールの描き込みが素晴らしく、どんどん引き込まれる。主人公の匡介が石垣職人として成長していく様も面白く、師弟ドラマの側面も強い。後半の大津城の攻防戦が、圧巻。「絶対に破られない石垣」と「どんな城も落とす砲」の対決は、どちらが勝つのか?描写に臨場感があり、圧倒的な迫力。このような職人の立場から見た合戦シーンは初めてで、新鮮だった。登場人物それぞれの想いが、熱い。

2021/11/07

のっち♬

関ヶ原前夜、穴太衆を継いだ匡介は大津の存亡をかけて大津城に籠城した京極高次に協力する。切羽詰まった舞台設定もさることながら石垣造りという斬新な視点が大きな魅力だろう。敵方の視点を加えることで次々と講じられる多彩な智略が劇的なものとして映るし、終盤へ進むにつれて手段が限られていくので必然的に攻防もスリリングに。思考と会話と説明のバランスが絶妙なのでテンポが良いし、賽の河原のモチーフもうまくクライマックスに昇華されている。『塞王の楯』—それは何度崩されても泰平の世を築こうと奮闘する人々の意志の結集ではないか。

2022/03/02

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