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笑いと忘却の書

笑いと忘却の書

笑いと忘却の書

作家
ミラン・クンデラ
西永良成
出版社
集英社
発売日
1992-04-20
ISBN
9784087731460
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笑いと忘却の書 / 感想・レビュー

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hagen

この小説は7章が独立した構想を持つ。興味深いのは7つの物語は一見すると相関関係が希薄な断片によって構成されている事、ところがその逸話がこの小説の全編の中で章を飛び越えて連係している様にも思えるところ。祖国チェコスロバキアの国籍を剥奪された後に執筆されたというクンデラの当時の不安定な情緒が素地になっている事は見えない組織に対する恐れによって表れる。そして描かれているテーマは、性への根源的な問い、被服をじわじわと引き剥がされる様な不条理で赤裸々な様々な分野の要素を含みながら、予測が困難な方向に拡散してゆく。

2020/08/02

かやは

​世界の名も無き事象を、言葉を尽くして表現すること。それが文学だと思う。笑いは秩序の破壊。秩序が失われると笑いが起きる。失われすぎると悲鳴が起きる。そのバランスはとても大切。笑いも忘却も、そして性愛も、秩序の存在しない、人の理性の外側にあるものだ。人は誰かと結びつきたい。世界に産み落とされた瞬間から、人の孤独は始まる。極端な主張に傾倒する人は、実質その中で語られていることなどどうでもよくて、その主張によって強く結びつけられている集団の一員になりたいだけなのかもしれない。

2017/02/11

saeta

昨年からの年またぎで読了。途中で休止したりする場合の短編集は有難い。もう何度読み返したか思い出せないが、再読も10年振りぐらいだろうか。古今東西の様々な作品を読んでみて読み返すと、新たに気付いた箇所などもあり、充実した読書体験だった。一つ一つの作品が完結しているが、あの作品の登場人物が別の作品で現れたりなど、この辺りの関係性を変奏曲になぞられたのか。最後の海辺でのダフニスとクロエの例えは、キリスト以前の社会(世界)へのノスタルジアなのか、あるいはこれこそ笑いなのか忘却なのか。

2022/01/06

azimuth

どのエピソードも面白いのに記憶にあまり残っていないのはなぜだ。第七章、墓場でのシーン、伏線回収のような快感をおぼえる。一番興味深かったのはリートストという「他の言語には翻訳できないチェコ語」。「恨めしさ」に近いのではないかと思うけれどどうだろう。恥辱と情けなさが入り混じって卑屈で自暴自棄な怒りに変化する。ある言語でしか言い表せられぬ感覚は、その話者の国民性/民族性を端的に表したものだとは容易に想像できる。リートストはチェコ人固有の感情であり、国の歴史や文化を説明する手掛かりになるのかもしれない。

2012/06/09

けいと

再読。歴史に翻弄されて故郷を追われるというのは非常に重いことなのになぜ軽さ、笑い、忘却などを核として小説を書いているのか。読みながら考えていた。

2014/01/19

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