裏切られた遺言
裏切られた遺言 / 感想・レビュー
zirou1984
これ程までに多弁で、こんなにも情熱的なクンデラが他にあっただろうか。傑作『不滅』執筆後に書かれたエッセーをまとめた本作では、芸術とは決して不滅のものではなく、その通俗的な側面のみ普遍的なものとして残されてしまう前作の主題に徹頭徹尾、抗おうとしている。カフカとヤナーチェクというチェコの代表的芸術家である二人を中心としながら、ここにあるのは時に作家至上主義に見えてしまう不器用なクンデラの姿だ。それはいつになく隙だらけでありながら、だからこそ時代の、歴史の、芸術の困難さを語ろうとする力に満ち溢れているのだ。
2014/10/08
原玉幸子
『存在の耐えられない軽さ』のM・クンデラのエッセイですが、彼が網羅言及する分野や時代や例示する芸術家に馴染みがないからか、字面だけを追って、理解出来なかった章もありました。音楽を解説して「小説たるもの」に理論付けるところは、「おぉー、芸術の真髄!」と思える箇所もありましたが、難解と言うより喩えや構成が読み難く、全編を通じてはタイパで首を傾げる印象でした。表題に繋がるカフカの評伝挿話が抜群に面白いので、その章だけで本にしてくれれば良かったのに。(◎2023年・冬)
2023/11/18
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作家の私的生活を擁護して、クンデラはカフカの遺言は真に受けられるべきだったという。しかしカフカに関して、その断片すべて、その生の片鱗すべてにいたるまで価値がある、と感じることは、古い文学観に属することだろうか? ある種の作品主義(作家の実存を括弧に入れること)は、キッチュの最高度の蔓延とともにすでに死に瀕しているのだとしたら?
2019/07/17
美東
Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%88 によると、(カフカの友人である)”ブロートはカフカの遺稿の管理人となった。カフカ自身は遺言ですべての遺稿を焼却するようにとブロートに頼んでいたが、ブロートは自己の信念に従い、生前未発表であった(中略)カフカの遺稿を次々と公刊していった。”「裏切られた遺言」である。
2023/02/25
はるわか
どれだけの時間のあいだ、人間は自分自身と同一だとみなされうるのか?
2019/12/05
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