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カーテン 7部構成の小説論

カーテン 7部構成の小説論

カーテン 7部構成の小説論

作家
ミラン・クンデラ
西永良成
出版社
集英社
発売日
2005-10-26
ISBN
9784087734355
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カーテン 7部構成の小説論 / 感想・レビュー

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zirou1984

評論集ではあるが後書きにもある通り7部構成・主題の反復というその形式は小説的でもある。読者家としてのクンデラはラブレーやセルバンテの様な古典作家がいかにカーテン=紋切型の表象を切り裂き、喜劇によって世界がそうであるものと思われていた意味を剥ぎ取っていったのかを示していく。語りの通底として諦観が透けて見えるのは、いつになく直接的に示される亡命者としての悲しみに、滅びやすいものである芸術の歴史が重ね合わされているからだろうか。美しいものは決して不滅ではない、だからこそそれは語らなければならないものなのだ。

2014/09/19

三柴ゆよし

タイトルのカーテンとは、我われの世界を覆う予備解釈のことであり、クンデラ曰く、そのカーテンを引き裂いて、剥き出しの喜劇性=散文性を露呈させることが、小説家の役割であるという。つまりクンデラの言に従うならば、紋切型のポーズを否定し、なじみ深いシンボルをかなぐり捨てた地平にこそ、小説芸術のアイデンティティは在る。小説論としても卓抜しているのだが、テーマを扱う手法がまたクンデラ独自のもので、彼のこれまでの読書経験や、国内外との作家たちとの交流が巧みに織り込まれており、一種の自伝としても読めるのがおもしろい。

2014/03/30

やいっち

チェコ(筆者は、ボヘミアと呼ぶ)は、ロシアに占領されるなど、自国中心主義に陥りたくてもなれなかった。文学を幅広い観点から捉える視座を得るに至った。読了してみて、文学は国を超え、地域を超えて、作家が別の作家に文学のバトンをリレーしていく……なんてのは、非常に甘い認識だと、痛棒を食らった気分である。グローバリズムの圧倒的な潮流は、世界の小さな思いや言語や文化や民族、宗教、共同体を呑み込もうとしている。今にも生き絶え絶えの辺境の文化や人や生きものや自然。文学は、この先、どう時代の潮流に抗っていくのだろうか。

2016/09/03

ロピケ

小説はその形式の自由さから、予想外の変遷、革新を遂げていった、というクンデラさんの持論の展開が面白かったばかりでなく、中央ヨーロッパから見た、歴史認識にハッとしました。今まで、中央ヨーロッパが「(ロシアに)誘拐された西欧」なんて思いつかなかったですから。「スラヴ世界」としてロシアと一括りにされ、西欧の歴史から(ドイツからさえも)切り離されているのを変だと気付かないこと、こういう感覚は、今までどんな本にも読んだ覚えが無かった。「ビ―ダーマイアー」という用語も、長年謎だったけれど、この本を読んですっきりした。

2012/10/26

パオー

面白かったー。セルバンテスに始まる「小説」の歴史はどのように発展してきたのか。ラブレー、スターン、カフカ、フローベール、ドストエフスキー、トルストイ、ジョイス、フォークナー、ムージル、ブロッホ、ゴンブローヴィッチ、ガルシア・マルケスなどの南米の作家たち、さらには大江健三郎、ほかにも多数。これらの作家たちの小説をクンデラはどう読むのか教えてもらえるだけでも面白いのに、それらを通して小説がどのような技術的進歩を遂げてきたのかを知ることができる。これから小説を読むにあたってのヒントをたくさん教えてもらいました。

2012/05/08

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