鐘を鳴らす子供たち (小学館文庫 ふ 1-6)
鐘を鳴らす子供たち (小学館文庫 ふ 1-6) / 感想・レビュー
エドワード
戦後、「鐘の鳴る丘」というラジオ番組が大人気を呼んだ。戦災孤児たちが協力して児童福祉施設を作る物語。素人の小学生が出演した。終戦後、小学生たちは教科書を墨で塗ったり、御真影の礼拝がなくなったり、突然の変化に驚く。そこへラジオ劇への出演だ。練習や生放送の緊張も興味深いが、本当の戦災孤児に会い、彼らから「あまりに嘘っぱちなので聴くのをやめた」と言われる場面が印象的だ。しかし全国の聴取者からの声に励まされ、公開生放送を成功させる。民主主義、基本的人権、アメリカへの複雑な思い。子供の眼から見た、生きた戦後史だ。
2023/09/21
niisun
敗戦後の日本を東京郊外の小学生たちの目から描いた実話をベースにした物語。ラジオ劇『鐘の鳴る丘』のことは始めて知りました。私の祖父は戦前・戦中・戦後を通じて小学校の教師をしていたので、この物語に登場する菅原先生と同じような葛藤を抱かながら生きたんだろうと思います。また、私の両親はまさに、物語の主人公たちと同世代ですが、父は田舎の農家の長男で、母は比較的名の知れた会社の社長令嬢だったので、かなり事情は違ったのだろうと想像がつきます。ここでは、都心から少しだけはなれた場所という地域性が色濃く感じられましたね。
2023/10/18
リュウジ
★3 すごいなぁ。地べたから立ち上がり再び始めようとする人たちは。なんせ誰もが勝つと信じた戦争に負け、あるゆる仕組みや価値観≒アイデンティティが崩壊したまんまの昭和22年だ。子供たちを元気づけたい、勇気を与えたい。キレイごとだろうが嘘臭かろうが、あるのはそんな熱い気持ちだけ。心に種を撒いておけば、やがては生きる力となる。たとえ未来に再び裏切られても。しかし、どっちも逞しいな。生きるために悪に手を染めた上野の戦災孤児たちも、大人と時代に欺かれた子供たちも。どちらも正解。小説としてはちょっと作り過ぎだけどね。
2024/02/13
すみっちょ
戦後2年経って日本が前を向きはじめた頃の物語ですが、戦後の復興の波に乗れなかった人もたくさんいたんだろうなと思いました。慰問の場面が印象に残っています。良仁達のいたたまれなさも三津彦の怒りもすごくよく伝わってきました。大人になった良仁たちが再会する場面は現実的で、そんなものだろうなとすんなり受け取れました。将太にはビックリだったのですが…本当にどこにいるんだろう?なんだかんだで将太が一番まっすぐだったのかもしれないなと感じました。
2023/08/21
はなちゃん
史実をモチーフにした小説とのことだが、戦後の混乱期、たくましく生き抜いた人達の物語は、どんどんひきこまれ読めた。忘れてはいけないことが、お説教臭くなく、たくさん盛り込まれていた。
2024/01/13
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