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ほろびぬ姫 (新潮文庫 い 79-7)

ほろびぬ姫 (新潮文庫 い 79-7)

ほろびぬ姫 (新潮文庫 い 79-7)

作家
井上荒野
出版社
新潮社
発売日
2016-05-28
ISBN
9784101302577
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ほろびぬ姫 (新潮文庫 い 79-7) / 感想・レビュー

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ミカママ

「あなたはあなたが連れてきた」。奇をてらった冒頭でいやぁな予感のまま、最後まで誰のことも好きになれずに読了。主人公のみさきはまさにタイトル通りの「姫」。死にゆく夫に守られ、夫の一卵性双生児の弟や、同僚の久保などとも駆け引きを楽しむ(わたしにはそう思えた)いけ好かない女。そもそもわたしはこういう、生活力や常識のない女が大嫌いなのだ。でも世の中、すいすいと上手に渡っていくのは、得てしてこういう女なんだよなぁ。

2018/04/03

ヴェネツィア

設定はやや特異だが、プロット展開の巧みさで無理を感じさせない。練達の小説。若いとばかり思っていた井上荒野もいつの間にか60代。なんだか、一気に円熟期に達したのを見た思いがする。エゴイズムは愛を上回るのか。夫の新時が問いかけるのはそれだ。もっとも、彼とても混乱の極にあり、自身の望みが何であるのかがわからない。まして、みさきには。作者がみさきをそれまで何も知らない、できない、いわば無垢のままに置いておいたのはその故だろう。それにしても、みさきをここまで翻弄するのは何故であったのか。作者自身の⇒

2023/09/17

新地学@児童書病発動中

夫が自分の死を前に連れてきた弟が、主人公のみさきの心を掻き乱す。夫の死を受け入れるのは難しい。かと言って、弟を夫のかわりにすることもできない。弟は兄と違い乱暴な性格だ。「あなた」という言葉が、効果的に使われている。夫に対しても弟に対しても、みさきは「あなた」と呼びかけるので、読者は兄と弟の区別がつきにくいことがある。これは作者の狙いの一つで、人と人の絆の不確かさが浮き彫りになる。短いが濃密な物語だ。愛とは何か?人生の意味は? 男女の真の絆とは? 生きる上で大切なことを、作者は読者に問いかける。

2018/01/29

キャプテン

★★★☆☆_大混乱サーズナイト、脳みそシェイク中。「あなた1号」=旦那、「あなた2号」=旦那の双子の弟。ある夜、1号は生き別れたはずの2号を連れ帰宅し、自身の余命が短いことを告げる。姿形が1号とはいえ、1号亡き後に2号を愛せることになるのか?鋭利な「愛」を問う物語。1号も2号も、主人公は「あなた」と呼ぶため、情景描写が大混乱に陥る。双子のハードとソフトの入れ替わり性を絶妙に伝える表現。『あなたはあなたの車に乗る』『あなたはあなたを連れてくる』…目がチカチカして、ケンシロウの「アタタタァ!」に見える不思議。

2016/10/13

shizuka

あなたがふたり。どっちのあなた?と読みながら考えていると、感情が「みさき」にリンクしはじめる。そしてなんだか悲しくなってくる。不快や軽蔑や侮蔑などそういう負のオーラをまとった悲しみではなくて、とても透明で純粋でただただ「悲しい」という気持ち。確かに死に往くあなたは、みさきが抗えないほどの大きな存在で実力や経験があって、先を読む能力も多少はあるのかもしれないけれど、その小さな沼からみさきが這い出そうと無意識にも頑張っている姿に不愉快な感じは抱かなかった。みさきはいつまでもねんねじゃない。見縊ってはいけない。

2016/07/09

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