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神様のボート (新潮文庫)

神様のボート (新潮文庫)

神様のボート (新潮文庫)

作家
江國香織
出版社
新潮社
発売日
2002-06-28
ISBN
9784101339191
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神様のボート (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

こんなタイトルを付けてしまうところが江國香織さんらしい。児童文学作家として出発した彼女にとっては、自然なことであったかも知れないが。さて、本書は母親の葉子と娘の草子が交互に語りを担当する構成を取っている。それぞれの文体の語り分けには工夫が必要だっただろうが、そのあたりは作家の得意領域か。また、全篇を漂う抒情性もいい感じだ。草子の成長と、それに伴う息苦しさもよく書けている。ことに、「ママはパパと旅に出たことは一度もない」と草子が看破する辺りは秀逸だ。エンディングは読者の想像通りとはいえなんとも残念である。

2018/12/25

さてさて

『小さな、しずかな物語ですが、これは狂気の物語です』と語る江國香織さん。そんな江國さんが綴るこの物語は、いつまでも現実を見ようとしないでひたすらに過去に生きる母親と、それを反面教師とするかのように現実を見据え、今を生きる娘の極端なまでの生き様の違いを見るものでした。『骨ごと溶けるような恋』にいつまでも執着する母親の狂気の中に、人が一人の人をいつまでも愛し続けるということの意味を深く考えさせられるこの作品。いつまでも待ち続けるという強い思いの先にどんな解が待つのかを見てみたい、そんな風にも感じた作品でした。

2021/05/22

ちょこまーぶる

読み始めは、微笑ましい母娘の関係だなと思っていたが、読み進めていくうちに葉子には共感できなくなってしまったし、恐怖すらも感じてしまった。子どもである草子の生き方に親の生き方を当てはめてはいけないんじゃないだろうかとも思ってしまい、高校で家を出ていく草子にホッとしてしまった。皆さんの感想を見ると、再読している人が非常に多いような気がする。何回か再読しなければ、この作品の本意は解らないのではないだろうか。いつの日か再チャレンジ本とする。

2013/01/14

ソルティ

静かに綺麗な言葉で、大きな変化なく淡々と進むお話だけど、信じ過ぎるが故に狂気じみてる。母は夢の世界に生きていて、娘は成長と共に現実を見るようになって⋯。ずっと夢の中にいた方が幸せだったかも。1度ここに来ましたよ、なんて聴いてしまったら、私だったら、同じ想いだった喜びと、もう会えない悲しさで号泣してしまいそう。胸が締め付けられる。「まほちゃんにはあきれられてしまうだろうけど、私はあの人を疑ったことがない。絶対にみつけてくれると約束した。私がどこにいても、なにをしていても、絶対にさがしだしてくれると。」

2023/03/16

エドワード

どこか夢見がちな母親・葉子はピアノ講師とカフェ勤めをしながら、ひとつところにとどまらず一人娘・草子と旅からすを続けている。いつか必ずパパが私達を見つけてくれると信じながら。草子が幼いうちは二人の心は寄り添って平穏に暮らしているが、中学生になり草子の自我が目覚めていく。その過程を江國香織らしく、こどものようにイノセントな母の視点と成長していく娘の視点を見事に交差させて描いていく。二人の心の交流には、草子と同世代の子供を持つ私にはじんと来るものがある。この作品は江國香織の最高傑作だと思う。

2011/08/11

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