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号泣する準備はできていた (新潮文庫)

号泣する準備はできていた (新潮文庫)

号泣する準備はできていた (新潮文庫)

作家
江國香織
出版社
新潮社
発売日
2006-06-28
ISBN
9784101339221
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号泣する準備はできていた (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

第130回(2003年下半期)直木賞受賞作。直木賞もまた芥川賞同様に振幅が大きいが、本篇はプロットのエンターテインメント性に依拠しておらず、その意味では純文学に近い位置にあると言える。表題作を含めて12の短篇からなるが、いずれも大人の女たちを主人公にした、それぞれに過去を持つ、ほろ苦さを伴った物語である。また、ここに描かれる恋は時には「肉欲に溺れ」たりするように、けっして観念的なものではなく強く実態的である。しかし、確かさを信じていたはずの互いの関係性は儚く、それらの恋はその本質において究極的には孤独だ。

2015/03/26

さてさて

私達は長い人生を生きる中で、色んな経験をしながら歳を重ねていきます。そんな歳月は連続する”瞬間”の集まりです。その”瞬間”、”瞬間”に何かを思い、何かを考えながら私達は生きています。それらの大半は、実際には記憶の彼方に忘れ去られてしまうものも多いのだと思います。”ある瞬間”に大きな意味を持っていた事ごとも、長い時間の中では均されて平板、平坦、そして平穏な日常の中に埋もれていきます。そんな12の”ある瞬間”に光を当てるこの作品。何も起こらない12の物語が故に、人生とは、と逆に考えてしまう、そんな作品でした。

2021/05/26

三代目 びあだいまおう

人間って複雑。感情はちょっとしたきっかけであっちいったりこっちきたり。単純に割りきれる感情なんて1つもない。喜びも怒りも悲しみも、寂しさも悔しさも切なさも、勇気も不安も理解も孤独も、もちろん愛も!何気ない日常の、ちょっぴり憂鬱なワンシーンに漂う、私達の言葉にできない複雑な感情を江國さんはその表現センスで文章化する。表題作のP195の1段落の表現は断トツだ!この作品が本書全体を亘るテーマではなかろうか?元々短編苦手ですが、これは一冊で色んな人の複雑な感情をセンチに疑似体験したような江國ワールドでした‼️🙇

2019/09/05

こーた

テンポよく平易なことばで描かれる情景には、どれもことばであらわすのが難しい、複雑な心情が潜んでいる。自分自身も気づいてさえいなかった日々のモヤモヤを、ていねいに、二十頁ほどの短さで、スパッと切り取る。この切れ味の鋭さ。アメリカの短篇のような、固く乾燥した枠の内側に、湿度をまぶしたようなアンバランスが心地いい。バー、温泉旅館、デパート。日常のすぐそばにある非日常に身をおくことで、日常の側がよりよく見える。この十二篇の物語そのものが、ぼくらの日常に光を充てる、ちょっとした非日常、のようである。

2019/10/22

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

過不足ない生活というのは、どうしようもなく満ち足りていて、残酷でこわい。甘やかな行き止まり、ざらっとした質感、混乱。私たちはそこから何処へも行けないのだ。 江國さんの作品は何が起こる訳でもなかったり、似たような状況を描いてることが多かったりで、短編集は特に本を閉じたら何が書かれてるか忘れてたりするんだけど、ページを繰って独特の表現に浸る時間が好き過ぎて何度も読んでしまう。自分では絶対使わない言い回しがびっくりするほどしっくりきたりするんだよなぁ。江國さんの感受性がほしい。今回は熱帯夜が好き。

2019/05/17

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