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世界でいちばん透きとおった物語 (新潮文庫 す 31-2)

世界でいちばん透きとおった物語 (新潮文庫 す 31-2)

世界でいちばん透きとおった物語 (新潮文庫 す 31-2)

作家
杉井光
出版社
新潮社
発売日
2023-04-26
ISBN
9784101802626
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「世界でいちばん透きとおった物語 (新潮文庫 す 31-2)」のおすすめレビュー

15万部突破の ”体験型”感動ミステリー。「絶対電子化不可能」「何を言ってもネタバレになる」仕掛けとは

『世界でいちばん透きとおった物語(新潮文庫)』(杉井光/新潮社)

 仕掛けに気づいた時、全身に鳥肌がたった。なんという熱量なのかと恐れ慄いた。仕事だろうと、プライベートだろうと、活字中毒として、毎日ありとあらゆる本を読み漁っているから、「これはすごい」と思わされる本と出会うことは、正直、少なくはない。だが、この本には、読み手としてはもちろんのこと、編集者としても、文章を書くことを生業としている者としても、完膚なきまでに打ちのめされてしまった。

 そう思わされた本とは、『世界でいちばん透きとおった物語(新潮文庫)』(杉井光/新潮社)。発売から約1カ月で累計発行部数10万部を超えた、今話題のミステリーだ。どうしてこの作品が話題を呼んでいるかといえば、「ネタバレ厳禁」の大きな仕掛けが隠されているところにある。ごく普通の文庫書き下ろし。挿絵があるわけでも変わった装飾があるわけでもない。だけれども、「電子書籍化は絶対不可能」。紙の本ならではの体験ができるこの本は、読む者に大きな感動を与えてくれる。

 主人公は、ハタチの青年・藤阪燈馬。彼の父親は宮内彰吾という大御…

2023/6/23

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30万部突破「電子書籍化は不可能」”体験型”感動ミステリー。年末年始に読みたい心温まる小説4選

 怒涛の忙しさを乗り越えて、ようやくやってきた年末年始の休日。凍えるような寒さの外にお出かけするよりも、家でぬくぬくと読書に励みたいという人も多いのではないだろうか。そこで「年末年始に読みたい、心温まる小説」を4冊ご紹介する。これを読めば、冬の寒さなど関係ない。身も心もぽかぽかと温められるだろう。

まとめ記事の目次 ●宙ごはん ●それは誠 ●宙わたる教室 ●世界でいちばん透きとおった物語

●【本屋大賞2023ノミネート】涙なしには読めない栄養満点小説『宙ごはん』

『宙ごはん』(町田そのこ/小学館)

 決していいことばかりではなかった2023年。そんな出来事をどうにか消化して心に栄養を蓄えたい——そんな人にオススメしたい本が、『宙ごはん』(町田そのこ/小学館)。あたたかい料理と、母娘の姿を描き出したこの作品は、『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ/中央公論新社)で本屋大賞に輝いたことで知られる町田そのこさんの傑作だ。

 小学生から中学生、高校生へと成長していく少女と、大人らしいことは全くできない母親。そんなふたりの日々は決してほんわかしたものではない。と…

2024/1/1

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世界でいちばん透きとおった物語 (新潮文庫 す 31-2) / 感想・レビュー

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休憩挟みながら読む私としては、何だかこの本は休憩を入れるタイミングが毎度キリが良くて、読みやすいなと思いながら読んでいたのですが、まさかまさか、そんなところもこの物語の思うツボだったなんて驚きました。最後まで読んだ後で、透き通らせてまた戻って見てしまうこと間違いなしです。よく書いたなぁこの本。作者大変だったろうな。

2023/07/10

夢追人009

地元の図書館にリクエストしまして入荷が随分と遅れましたが遂に読みました話題の一冊ですね。衝撃のラストで本に対する価値観が変わる作品でしたね。著者の企てた大仕掛けの趣向を思う存分に楽しませて頂きました。ネタバレ厳禁ですので注意して書きますね。大御所ミステリ作家が死去し妻以外の交際女性との間に生まれた子供の僕が異母兄から「世界でいちばん透きとおった物語」という父の遺作原稿の行方を探して欲しいと依頼される。この隠された大仕掛けを何故に施さなければならなかったのか?の理由の手掛かりは序盤に伏線が張られていますよ。

2023/08/24

海猫

タイトルからしてライト文芸的な恋愛小説かな?と思って読み始めたらぜんぜん違いました。亡くなった大御所ミステリ作家の遺稿を探す話なので、この作品もミステリ的な興味が持続して引っ張られる。文章もしっとりとした情感があって読み心地が柔らかい。推理小説協会を訪ねていくあたりは、実際の推理作家協会がモデルになってるんだろうな。事務所が普通のマンションの一室だ、とかね。そう思いながら読んでいくと、終盤は作品全体の仕掛けがわかって大いに驚く。なんとなく違和感があったんだけど、そうなってたんだー。いやはや感心しましたわ。

2023/06/30

青乃108号

俺はこういう仕掛け本に滅法弱く、ネタバレをくらう前にと、普段図書館本しか読まないくせに一大決心して書店で買った。読んだ。確かにこれは間違いなく「世界で一番透きとおった物語」だ。文字通りの。死を間近にした作家の父が「透きとおった物語」しか読む事のできない息子に、最後に読ませたかった物語の内容自体は原稿の消失の為に想像しか出来ないが、「透き通った物語」に仕立てる為の途方もない艱難辛苦を、弱った体で最期まで乗り越えようとしていた父の姿に胸がいっぱいになり、そして最後には心暖かくなる作品となっている。

2023/06/20

bunmei

題名から連想した内容とはいい意味で裏切られ、病死した人気作家の遺作を巡る謎解きミステリー。そして、その遺作の裏に隠された真実が明らかになった時、紙媒体の書籍だからこそ織り込むことのできた、親子の絆と愛情が、鮮やかなトリックとなって浮き上がってくる。このトリックに気づいた時、きっと誰もがページを透かせてみたことだろう。また、前半部の会話や事象がラストへの布石となって繋がりをみせ、本書の校正の凄さと緻密に計算された著者の筆致力に衝撃が走った。そこには、確かに『世界で一番透き通った物語』が映し出されていた。

2023/06/21

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