ヴォルテール、ただいま参上! (Shinchosha CREST BOOKS)
ヴォルテール、ただいま参上! (Shinchosha CREST BOOKS) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
啓蒙思想の祖であるヴォルテールと啓蒙専制君主であるフリードリヒ二世には交流があった。その交流を書簡などを並べることで淡々と描く。そこから浮かび上がってきたのは啓蒙思想家も君主も何とも先進的な思想を生み出せるがお金にがめつく女タラシな雑草根性やインテリに憧れるが根はジャイアン思想などの人間らしかったかということだ。特にヴォルテールを自分のものにしたいフリードリヒ二世が遂に彼を手に入れた時の「ヴォルテールを所有したい!」の次に「シュトレ地方を征服したい!」という文が続いたのには思わず、笑ってしまいました。
2015/06/30
りつこ
なんともいえず独特な作品。ことさら滑稽に描いてるわけではないのに全体に漂うのは乾いたユーモア。歴史に名を残す王様も哲学者も我々と何ら変わるところのない…いやむしろ高いところにいるからこその身勝手さや卑小さを振り回すことができる?ちょっとあっけにとられて薄笑いを浮かべながら読み終わったけど、後書きがまたとてもいい。なかなか。
2015/05/12
星落秋風五丈原
フリードリヒ二世とヴォルテールの関係を描いた本書は空想力や描写力ではなく史実と文献という事実でぐいぐい押すまるでじゃがいものような中身重視の作品。派手な修飾詞・形容詞を用いないため淡々とした描写が続く。しかし、激するべきところで表向きは激さず、その分、親しい相手に向けて書かれた書簡や側近への遠慮のない会話では怒り大爆発!という激しく裏表のある当人達のキャラクターが強烈な印象を与える。ヴォルテールの旅費を巡る騒動などどちらかの器が大きければ騒ぎにならず。つまりは二人とも我々と同じ弱さと複雑さを持つ人間。
2015/04/28
紅はこべ
最近は薄い本で歴史をコンパクトに色濃く語るというのが流行りなのかな。ヴォルテールがこんなにがめつい男だったとは。しかも姪を愛人にするなんて、島崎藤村か!プロイセンの君主がドイツ語が苦手というのに大笑い。フリードリヒ大王はマリア・テレジアの宿敵という印象しかなかったけど、ヴォルテールとこんな確執があったなんて。殆ど恋の駆け引きだね。思想家や芸術家は権力者とはある程度距離を置くべきだというのがよくわかりますね。シャトレ侯爵夫人は魅力的でした。
2015/06/07
棕櫚木庵
ここで紹介していただき,ヴォルテールが主人公ということで読んだのだけど,むしろ,パトロンから自立しつつある頃の文筆者の話として面白かった.それ以上に興味深かったのがその形式.小説,あるいは評伝を書くための資料カードを並べて見せたよう.情景や,とりわけ心理の描写はほとんどない.事実をとびとびに列挙して読者の想像を喚起する手法とでもいうか.ところで,シャトレ夫人がアインシュタインの質量とエネルギーの等価式を先取りしていたというのは(pp.22-23)もちろん冗談だろうけど,ちょっと“盛り”過ぎじゃないの^^;
2022/05/08
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