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回送電車 (中公文庫 ほ 16-1)

回送電車 (中公文庫 ほ 16-1)

回送電車 (中公文庫 ほ 16-1)

作家
堀江敏幸
出版社
中央公論新社
発売日
2008-06-25
ISBN
9784122049895
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回送電車 (中公文庫 ほ 16-1) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

「小説でも評論でもエッセイでもない偏狭な文章」と自ら語るごとく、本書は確かにジャンルに分けることの困難な散文群の集積だ。ただ、それらには一貫して著者に固有の感性が息づき、良質の小説から漂う(しかし同時に「間の抜けたダンディズム」とする規定が肯けもするような)読後感に浸ることになる。そして、静かに語られる想念の随所から、軽やかなノスタルジーが立ち上り、それらは変奏を重ねていくのである。それは時には『トトロ』の三輪トラックであったり、故郷の川の風景であったり、はたまたパリの小さな本屋の光景であったりもする。

2014/07/07

KAZOO

随筆のようなものや短い小説のようなものもあり、この著者が様々なメディアに書いたものを1冊に収めています。また著者が読んだ本などについてもかなり書かれていて、好みがよくわかります。読んでいてゆったりとした気分にさせてくれる本です。

2015/04/16

aika

書くことにつきまとう領分をするりと通り抜けた回送電車の穏やかな流れに、すっぽりとくるまれました。少年さながらトラクターや珍種の動物に並々ならぬ熱をもち、娘さんが学校から預かった赤ちゃんちゃぼとのお別れに寂しさを募らせ、不作のために売られて娼妓になる娘と若い青年との淡い恋を描いた瑞々しい小説を愛する堀江さん。パリ留学時代に、貧しい自分に全集を譲ってくれた書店主への恩返しや、「リ・ラ・プリュス」という煙草にまつわる誤認を素直に認め、真実を最後に明かしたその誠実さが目に留り、この作家の心を知れた散文集でした。

2020/03/29

chanvesa

「回送電車主義宣言」からなるほどと思う。確かに回送電車の運転手さんは通常運行の電車の運転手さんとは何か気分的に違うのではないかと思わせる。「猫のいる風景」は『おばらぱん』の「のぼりとのスナフキン」でも語られていた漂白者としてのスナフキンへの愛が語られていたが、それの応答になるかのよう。「Eメールの効用」はウイットに富んでいて素敵なお話。

2017/01/04

メタボン

☆☆☆☆ 小説のようなエッセイ。文章が美しく、噛み締めるように読んだ。「回送電車こそ、永遠に見つからない逃避への道を探っている寂しい漂泊者の似姿なのかもしれない」。紙巻煙草の発音をめぐる裏話が面白かった(友人が吸っていたリ・ラ・プリュスという紙巻煙草は大麻の符牒であり、煙草はリ・ラクロワ)。

2023/01/23

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