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つみびと (中公文庫 や 65-3)

つみびと (中公文庫 や 65-3)

つみびと (中公文庫 や 65-3)

作家
山田詠美
出版社
中央公論新社
発売日
2021-09-22
ISBN
9784122071179
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ジャンル

「つみびと (中公文庫 や 65-3)」のおすすめレビュー

「幼児置き去り死事件」に隠された声にならない叫び。山田詠美が実際の事件から着想を得た小説『つみびと』

『つみびと』(山田詠美/中央公論新社)

 最近では『A2Z』の映像化が話題の山田詠美氏が、30年以上に及ぶ作家生活で初めて実際の事件から着想を得て書いた小説『つみびと』(中央公論新社)。著者が事件のルポなどを読んだ上で描いたフィクションだが、事件に関わる人物の背景や心の深部に浸る経験を通じて、自らの価値観や行動を問い直すほどの衝撃が体に走る作品だ。

 2010年に起きた、23歳の母親が二児をマンションに置き去りにして餓死させた通称「大阪二児置き去り死事件」をベースにした小説。ふたりの幼子を放置して死なせ逮捕された母・蓮音と、彼女の実母である琴音、そして妹と共に置き去りにされる4歳の桃太という3つの視点から、物語は描かれる。

 罪を犯した蓮音の生育環境と、シングルマザーになり子を置き去りにするまでの過程、心情に加えて、その母親である琴音の人生と心の内も描かれる。蓮音ら3人のきょうだいは琴音からネグレクトを受けていて、その過去が蓮音の人生に影を落とす。しかし、琴音も少女時代、暴力的な実父と自らに性的虐待を繰り返す継父に苦しめられ、結婚して家族を持ってからも…

2023/5/3

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つみびと (中公文庫 や 65-3) / 感想・レビュー

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ゆいまある

大阪2児餓死事件を題材にしたフィクション。エイミーに外れなしと思ってたけど、これはないなあ。愛情をかけられていない生育歴や知識の欠落を書くことで、母親だけを責めてもどうにもならないよということを言いたかったんだろうけど、三世代の女が書かれ、不幸が続いてるさまを読ませる構成なんだが、虐待がちっともリアルじゃなくて、むしろ母親が後で知り合った男としみじみ幸せになる所にフォーカスが当たってる感じで何を読んでるんだろというか、時間の無駄というか、読む価値あるのは最後の対談だけだった。杉山春さんのルポがいいだけに…

2022/03/12

あきら

読み進めるのがとても苦しく、重たい話でした。 たしかに他人事とは思えない。 世の中色んな情報がありすぎるから、表面上の出来事しか攫わなくなる。裏側の物語が丹念に描かれています。 インパクト大。

2021/10/09

ピロ麻呂

大阪2児餓死事件がモチーフの作品。このニュースを初めて知ったとき、激しい憤りを感じたことを今でも思い出します。この作品を読むと、子供をネグレクトした母親にも色々な事情があったのだとは思います。それでも、幼い子供たちを苦しませ、死なせた罪は重い。唯一頼れる母親に見放された子供たちは、どんな思いで50日間を過ごしたのか…もう二度と同じような事件が起こらないように祈るばかりです。

2021/11/04

Shoji

物語前半はモラルも教養も収入も何もかも低い、どうしようもない人たちのどうしようもない物語だと思って読み進めていた。後半に差し掛かり、物語の核心に入って行くにつれ、とてつもなくずしりと重たいお話だと気づかされた。風俗嬢がホストに入れ込んだ挙句、育児放棄で幼い子を死に至らしめてしまう。そこに至るまでの殺伐とした精神、出自、血筋や血統がこれでもかと書かれている。久しぶりに読み応えのあるヘビーな一冊だった。

2021/11/13

ゆきらぱ

重く苦しいテーマでしたが、素晴らしい内容で読んで良かったです。巻末の春日武彦氏との対談も良かったです。この苦しいストーリーが終わりに近づく頃に私は本質に触れたような気がします。(間違っているかもしれませんが)それは人間は、被害者の時には謂れのない罪悪感を抱き、逆に人を痛めつけ加害している時にこそ被害を受けている気分になるのでは?という恐れです。この的外れともいえる感覚のズレが悲劇を生むのかもしれないし、反省の難しさがあるのではないのでしょうか。

2021/10/26

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