楠木正成(下)-新装版 (中公文庫 き 17-17)
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楠木正成(下)-新装版 (中公文庫 き 17-17) / 感想・レビュー
優希
信念を貫いたばかりに苛酷な運命と死への道を歩むしかなかったのでしょう。こう考えると正成は単なる悪ではなく、悲運の名将だったことが想像できます。その生き様の迫力を感じることができました。
2022/07/17
Y2K☮
今作の解釈だと、足利直義が北条時行に敗れたのは尊氏が京を離れる口実を作るため。大塔宮が直義のいる鎌倉へ流罪になったのは帝の意志で、要は処断を期待してのこと。直義は本当に戦下手だと思うが一理ある。建武の新政は典型的な坊っちゃん体質。反吐が出るほど世間知らず。悪党・楠木正成は何を考えて彼らへ与したのか。なぜ赤松円心みたいに見切りを付けなかったのか。帝への忠節? あるいは。でも違う気がする。彼は武士が支配する世の中を厭い、同時に武家の棟梁としての尊氏を認めていた。その葛藤が率直に生き方に表れている。不器用な男。
2022/07/02
どぶねずみ
鎌倉幕府討幕に貢献したために悪党として名高い楠木正成だが、北方健三さんはこの悪党をとても人情味ある人物像として書き上げているので、本当のところはどうなのかわからない。当時の幕府が腐っていたため、それを立て直そうと努めたところはとても彼が悪党だったとは思えない。それまで素晴らしい知力を戦に活かせていたものの、湊川の戦いでは負け戦になると知りながら戦わざるを得なかった生涯に後醍醐天皇を尊ぶ心を感じ、この人が国を動かしていたらその後にどんな幕府が誕生していたかと想像が途切れない。
2023/10/07
フミ
皇国史観にとらわれない、北方先生、独特の「楠木正成」のお話。「悪党(武装した商工業・庶民階級)」の力で武士(武装農民)を倒したいと願う正成は、大塔宮・護良親王の人柄に希望を感じて、後醍醐天皇の笠置山挙兵に連動。下巻の前半から、戦いに次ぐ戦いで、各地で山岳戦を展開します。「なんとか武士の力を借りずに、六波羅を落としたい」と願うのですが、物語は歴史通りに進み…という感じです。六波羅が落ちる前の「こんな社会にしたい」「こんな風に勝てれば」という理想と、夢破れた後との感情の落差が大きいです。(コメントに続く)
2022/10/05
てぃと
理想と現実との葛藤。悪党として生きるための蜂起だったにも関わらず、自分の思い描いたものと違う展開となってしまった正成の虚無感のようなものを強く感じました。正成と赤松円心、足利尊氏とのやりとりで醸し出す男気にグッと来た。ここで描かれた楠木正成の生き様が強く印象に残りました。
2024/03/18
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