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ある男

ある男

ある男

作家
木内昇
出版社
文藝春秋
発売日
2012-09-27
ISBN
9784163816401
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ある男 / 感想・レビュー

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yoshida

明治維新後の世を生きる男達の短編集。「一両札」での贋造の仕事へかける誇りと、帰順部曲の若者達の拙速さとの鮮やかな対比。そして有平糖で知る贋造の弟の、贋造を想う気持ちに胸が熱くなる。「女の面」での瀬喜の恐ろしさ。「道理」で福島県の自由民権運動に触れられていて、楽しく読めました。「フレーヘードル」で遂に胸襟を開ける相手を見つけた男の感動と、姑の小気味良さ。どの短編も滋味深い良さがありますね。世の中が大きく動く時、様々なドラマが生まれる。懸命に生きる市井の名も無き男達の淡い輝きが詰まっています。安定の良作です。

2017/09/15

藤枝梅安

理想を持って運動を始め、同志が集まって流れが形成されるが、見かけの成功を収めると腐敗が始まる。「集団」とか「権力」とはそういうものなのだろう。明治初期を舞台に薩長政権の陰で「維新の後始末」をする男たちや、「権力」に乗っかろうとする人々を見て、その浅ましさに呆れ、「権力」から外れていく男たちを描く。「明治維新」という荒療治が実は現代にもその病巣を残し、未だに「権力」の構造が変わらないことを、この小説は無名の「男」に語らせている。「男」の名前を出さず、普遍性を持たせる反面、周りの人物造形・描写も巧みである。

2014/05/13

巨峰

明治初年度、古い政治が崩されたあとに作られたのは、前と同じように古い政治だった、そんな時代に生きた7人の男たちを主題にした7つの短編。そして、女たちも、いや女たちの方がさらに個性を感じた。(最後の短編の姑!)さすが木内さんらしく、ルーティンを感じさせる作品が一つもなく、全てが非凡だった。短編らしく全てを語りつくさずに余韻が残ったが、もう少しだけでもこの話の続きを聞いてみたいとも思った。特に後半の作品が素敵に思った。

2018/12/06

naoっぴ

【時代・歴史週間@月イチ】明治維新後の混沌とした時代背景の中で生きる男たちの物語。とてもとても良かった!「ある男」のタイトルどおり、主人公は「男」としか表記されない。使命感に燃える男、世渡りで生きる男、頑固な職人、信念をもつ男…様々な名もなき市井の男たちが、それぞれ確かな心理描写でもってここに息づいている。混迷する政治事情も交え、どの話も実に骨太。またすんなり終わらせない皮肉なラストが妙に現実味を帯びていてどの話も秀逸!中でも「女の面」「道理」が好きです。読みごたえ大満足の短編集でした。

2017/02/22

財布にジャック

明治初期の有名な人達も沢山登場していますが、それぞれの短編の主役は名も無き男達です。ちょっと地味過ぎる気もしますが、派手さがない分リアルに感じられます。史実をふまえて巧く書かれていて、全てが本当の話なのかと勘違いしてしまうほどです。更に、明治という時代にスポットを当てた小説はあまり読んでいないため、新鮮な気持ちで読むことが出来ました。ただ読んでいて、あまり楽しいというタイプの小説ではないので、人にお勧めしにくいかなぁと思います。

2013/03/06

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