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イラク水滸伝

イラク水滸伝

イラク水滸伝

作家
高野秀行
出版社
文藝春秋
発売日
2023-07-26
ISBN
9784163917290
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イラク水滸伝 / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

なぜ、よりにもよってこんな時期にイラクに行くのか。誰もがそう思う。ところが、高野秀行の発想は逆である。こんな時期だからこそ、そしてイラクだからこそ行く価値があると。私たち(少なくても私)の持つイラクのイメージはいたって貧困である。かつての4大文明発祥の地。バグダッドにバビロンといった「千夜一夜」を連想させる幻想的な国。ただし、今はアメリカの空爆に晒されたばかりか、テロリストの跳梁跋扈するところ。周囲は一面の砂漠地帯。そんなマイナスイメージの宝庫である。ところが、そんなイラクの南部アフワールには⇒

2023/12/11

starbro

9月の第一作は、以前から気になっていた高野 秀行の最新作です。古代メソポタミア文明、6000年の歴史と文化が香るイラクの圧巻のノンフィクションでした。イラクや中東の不幸は、原油が産出したことによる欧米の利権争い、略奪によります。著者が絶賛するイラク料理、検索しましたが、東京にはイラク料理の専門店はなさそうです。トルコ料理が世界三大料理の1つですから、その系統でしょうか❓ https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163917290

2023/09/01

パトラッシュ

ソマリランドに続いてイラクの大湿地帯と、高野さんは地球から消えたと思われた未開の辺境を次々と探り出してくる。葦の浮島に反体制派が逃げ込み、迫害され続けた古代宗教マンダ教が健在で、水牛と共に生きる牧畜民がいるなど、文字通り水滸伝の世界が今日も健在とは、圧倒的な事実の迫力の前に、日本人の貧弱な想像力など吹き飛んでしまう。中東はイスラムや政治体制で単純に色分けなどできず、マーシュアラブ布のように強烈な意志と力の絡み合った人間模様が織られた世界なのだ。この布をクリスティが収集していたのが事実なら、ぜひ見てみたい。

2023/09/11

のっち♬

非主流派やアウトローが集まるイラク湿地帯の滞在ルポ。舟旅が叶わなかった分著者らは歴史調査、インタビュー、生活模様の観察を多角的かつ深く考察。グノーシス思想、カオスの二重構造、アザール布が持つ象徴性など考察は面白いし、SDGsの極致な循環共生型生活は山田ならではの視点。カオスの更なる深淵で営まれる五千年続く民間工芸や生活観は、水不足や圧政からして今後危うい意味でも実に貴重な記録。気高く多弁で行き当たりばったりな個人主義への嫌味のなさ、ジャーシム宋江やアヤド呉用らの献身ぶりから著者の安定した好人物像が伺える。

2023/09/24

読特

アフワールは湿地帯。自由に動けぬその土地はレジスタンスが逃げ込む場所。さながら水滸伝の梁山泊。ムディーフは葦で作られた館。ゲストを迎える建物。タラーデは舳先が反りあがった族長船。湿地を縦横無尽に駆け巡る。ゲーマルは水牛の乳が原料の食べ物。うっとりするような香りと旨味という。アザールはマーシュアラブ布。羊毛100%の刺繍で多様な模様が描かれてる...親子のブッシュが仕掛けた戦争、その後の統治混乱、イスラム国…暗さと怖さしか感じなかった国での明るく楽しい報告書。辺境作家が本領発揮。イラクという国を見直した。

2023/11/01

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