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スピノザの診察室

スピノザの診察室

スピノザの診察室

作家
夏川草介
出版社
水鈴社
発売日
2023-10-27
ISBN
9784164010068
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「スピノザの診察室」のおすすめレビュー

本屋大賞ノミネート『スピノザの診察室』は『神様のカルテ』著者の最新作。患者と向き合う医療と、京都の和菓子から生きる幸せを考える

『スピノザの診察室』(夏川草介/水鈴社)

 自分の人生の終わり方を想像したことはあるだろうか。どんなに強靭な肉体を持っていても、折れない精神力を持っていても、死は誰にでも平等に訪れる。穏やかにそのときを迎えたいと思うけれど、最期が良ければいいという話でもない。その人にとっての願いや希望に寄り添う医療とは何か。幸せとは何か――。『スピノザの診察室』(夏川草介/水鈴社)は、そんな大切なことを静かに問いかけてくる物語だ。

 本書の著者は2009年に『神様のカルテ』でデビューした夏川草介氏。医師として地域医療に長年従事してきた夏川氏が新たに描いたのは、さまざまな疾患を抱えながらも最期まで自分らしく生きようとする患者に寄り添う医師たちの物語。2024年本屋大賞にノミネートされた話題作だ。

 物語の舞台は、京都にある小病院「原田病院」。消化器疾患を専門科として小規模の病棟を備えた地域病院で、高齢の認知症患者や先の長くない末期がん患者も多く、自宅療養しているお宅への往診やお看取りも日常的にある。

 主人公の雄町哲郎(通称:マチくん)は原田病院で働く内科医。3年前に最愛…

2024/2/22

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ダ・ヴィンチ編集部が選んだ「今月のプラチナ本」は、夏川草介『スピノザの診察室』

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年1月号からの転載になります。

『スピノザの診察室』

●あらすじ● 京都の町中にある地域病院で、日々多くの高齢患者を診る内科医・雄町哲郎は、かつて大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。しかし、30代後半に差し掛かったとき、妹が病死。彼は一人残された甥の龍之介と二人で暮らすため、今の職への転向を決めた。そんなある日、かつての同僚で大学准教授の花垣が、弟子の南茉莉を哲郎のもとで勉強させたいと言い出して――。

なつかわ・そうすけ●1978年、大阪府生まれ。信州大学医学部卒。長野県にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で小学館文庫小説賞を受賞、デビュー。同書は10年の「本屋大賞」で第2位、映画化もされた。他の著書に『本を守ろうとする猫の話』『臨床の砦』『レッドゾーン』など。

夏川草介水鈴社:発行 文藝春秋:発売 1870円(税込) 写真=首藤幹夫

編集部寸評  

あの町に、あの場所に、あの人がいる 強く、強く心に響く。医療の現場を描くことで命を照射する試みは数あれど、本作が掌…

2023/12/6

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 21回目となる今回のノミネート作品10作の中から大賞に選ばれたのは、宮島未奈氏の『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)!

2024年本屋大賞受賞作 『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈/新潮社)

『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈/新潮社)

【あらすじ】  同作は、第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞した短編小説「ありがとう西武大津店」を含む宮島未奈のデビュー作だ。

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まとめ記事の目次 ●黄色い家 ●君が手にするはずだった黄金について ●水車小屋のネネ ●スピノザの診察室 ●存在のすべてを ●成瀬は天下を取りにいく ●放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件 ●星を編む ●リカバリー・カバヒコ ●レーエンデ国物語

金とは、生きるとは何かを問いかける『黄色い家』

『黄色い家』(川上未映子/中央公論新社)

 同作は、芥川賞作家・川上未映子が2023年2月に発表したクライム・サスペンス小説。“黄色い家”に集う少女たちの危険な共同生活を描いた作品で、「王様のブランチBOOK大賞2023」や「第75回 読売文学賞(小説賞)」といった数々の賞を総なめにしてきた。

 物語は202…

2024/2/25

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スピノザの診察室 / 感想・レビュー

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starbro

夏川 草介は、ほとんどの作品を読んでいる作家です。本書は、哲学的幸福論医療連作短編集の感動作、偶然にも発売日が私の誕生日でした。シリーズ化しそうな予感です。何時か未読のスピノザを読んでみたいと思います。この世でぜひ味わうべき三つの食べ物が「矢来餅と阿闍梨餅と長五郎餅」だと知りました(笑)私は大腸癌の吻合不全でリオペとなりました。雄町哲郎のような医師に主治医になっていただき、最期は看取られたいと夙に願っています。 https://www.suirinsha.co.jp/books/detail11.html

2023/11/12

名古屋ケムンパス

どこまでも滑らかな筆致に魅了された挙句、残りページが愛おしくなる程の読書でした。常に生と死に向き合うことになるお医者さんたちは哲学者となります。「たとえ病が治らなくても、仮に残された時間が短くても、人は幸せに過ごすことができる。…そのために自分ができることは何かと、私はずっと考えているんだ」と主人公のマチ先生は研修医に語りました。そんな医師に対しては、”おおきに 先生”と今わの際の患者は、労いとお礼のあたたかい言葉を残すのです。

2023/11/24

tetsubun1000mg

名作「神様のカルテ」の作家で現役医師という夏川草介さんの新作。 大学病院勤務で実績を残しながら、地域医療をになう原田病院に勤務するマチ先生と同僚や病院長のキャラクター設定や会話が素晴らしい。 病院の仕事や最前線の医療についてもリアリティが感じられて興味深く読める。 心に響く会話と死にゆく患者の皆さんの生きざまに心を打たれる。 元同僚の敏腕准教授の依頼で、弟子の緊急オペに協力して超難手術をサポートするシーンとその後の結末には感動を受けた。 さすがは本屋大賞2024ノミネート作品。

2024/03/12

hirokun

星5 四編の医療連作短編集。私は医療関係の作品が大変好きであるが、この作品は、人の終末期をいかに生きることが幸せなのかということについても考えさせてくれる物語だった。医師という人間の生死と向き合う職業を通して、訴えかけているテーマについては、自分自身が年齢を重ね死についても考えざるを得ない時期になったからこそ理解の深まるテーマであったと思う。また、文中にあった『暗闇で凍える隣人に、外套をかけてあげる』ことは、今後の自分の生き方の指針とすべきことのように響いた。

2023/11/18

松本ぼんぼん

夏川草介の最新作。舞台は松本から京都に変わり、凄腕の雄町先生が主人公。シリーズ化の予感です。 登場する医師たちの名前がなんだか日本酒の名前のように思えたのは私だけでしょうか? 内視鏡手術の様子など、ひきこまれてしまいます。 雄町先生を敵視している西島先生との関係、雄町先生から指導を受けている南先生との関係など、今後興味深いです。 最後に久し振りに「緑寿庵清水」の金平糖が食べたくなりました。

2024/01/04

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