迷彩色の男
ジャンル
「迷彩色の男」のおすすめレビュー
ブラックミックスのゲイ4人が社会に復讐する小説でデビューした安堂ホセ氏の第2作。濃厚な描写と豊かな色彩表現の妙
『迷彩色の男』(安堂ホセ/河出書房新社)
ブラックミックスのゲイ4人が社会に復讐する小説『ジャクソンひとり』でデビューした安堂ホセ氏は、同作で文藝賞を獲得し、芥川賞の候補にもなった。そんな氏の最新作『迷彩色の男』(河出書房新社)は、いっけん同作の延長線上にありそうな作風だが、鋭利な文体に宿る濃度と密度は格段に増している。妖しく艶めかしい情交、容赦のない過激な暴力、冷徹で殺伐とした空気——。冒頭からむせかえるほどに濃厚な描写に脳髄がシビれた。
ブラックミックスでホモセクシュアルの主人公=私は、同様の属性を持つ〈いぶき〉と、男性限定のクルージングスポット(いわゆるハッテン場)で出逢う。いぶきは酷い暴行を受けた痕跡があり、瀕死の状態にあった。背景にはヘイトクライムの影も見え隠れする。〈私〉は暴行事件に関わったと思われる迷彩色の男を追うのだが……。
状況の説明や心情の吐露などは、意図的に省かれているようだ。少なくとも、詳述することは周到に避けられている。断片的な情報が提示され、読者の想像力を開くようなつくりを意図したのだろうか。散文詩としても読めるような…
2024/1/22
全文を読むおすすめレビューをもっと見る
迷彩色の男 / 感想・レビュー
starbro
第170回芥川賞候補作第一弾(1/5)、安堂 ホセ、第168回候補作『ジャクソンひとり』に続いて二作目です。まだ候補作1作目なので何とも言えませんが、インパクト&先進性からすると芥川賞受賞もあると思います。但し、山田 詠美&ゲイの選考委員(存在していますでしょうか❓)が強く推さないと難しいかも知れません。 https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309031415/ 【読メエロ部】
2023/12/30
パトラッシュ
男色がテーマの小説は、どうしても『禁色』と比較してしまう。正統な文体と展開でゲイの心情や社会との関係を描く三島に対し、本作は散文詩風な文章でハッテン場へ出入りする主人公の経験を断片的に紡ぐばかりで、特に性的少数者に対する差別問題を訴えるわけでもない。都会の夜に男が男を求める暗くぐじぐじとしたドラマが中心で、三島が好んだ眩しい夏の太陽に照らされた明るい昼のシーンはほとんどなく、性的描写は濃厚だがエロティシズムは皆無だ。綺麗事の正義を掲げる一般社会と、性的志向に忠実に生きるゲイの世界の断絶こそが中心と思える。
2023/11/05
いたろう
芥川賞候補ということで手に取った。デビュー作である前作も芥川賞候補だったようだが、そちらは未読。前作から続くらしいテーマとして、ブラックミックスのゲイが出てくるが、これは、作者自身の境遇なのか。LGBT、人種に対するヘイトクライムが描かれ、舞台は、国会議員が、LGBTのために税金を使うのはおかしいという発言をして物議を醸した2018年になっている。その問題提起の意図は分かるし、決して、LGBTに偏見はないつもりだが、BLと呼ばれるマンガ、小説とは一線を画すハードな描写は、これがリアルなのか、読むのが辛い。
2024/01/14
なゆ
ずっと地下の暗いところにいるような感覚で読んだ。赤と青の明滅、濃密な人のうごめく気配、何かに追われるような追ってるような、緊迫感。クルージングスポットで起こった事件から、何かが狂い始めたのか。怒りの矛先がどこに向かうのかわからず、最終的にはもっと違うものに向けられてる気がする。常にカムフラージュしていないとヘイトの刃を向けられかねない、迷彩色の男たちってことかな。
2024/02/22
いっち
舞台は、東京都心の雑居ビルの地下。「男たちはその通路を回遊しながら男を探し、惹かれあった男たちが板で仕切られた簡素な個室で、」。描かれてるのは体験したことのない世界。だが、この世界観に既視感はあった。前作『ジャクソンひとり』や、千葉雅也さんの作品と似てる。黒人と日本人のハーフ、ゲイ、ハッテン場。ストーリーは違うが、男が男を探すシーンは、小説で読んだことがある。では、「迷彩色の男」とは誰なのか。「迷彩色の男が私にみせたパターンは四種類あった」とある。「恋人」「仲間」「単一な男」はすぐ出てくる。あと一つは。
2023/12/27
感想・レビューをもっと見る