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眠りつづける少女たち――脳神経科医は〈謎の病〉を調査する旅に出た

眠りつづける少女たち――脳神経科医は〈謎の病〉を調査する旅に出た

眠りつづける少女たち――脳神経科医は〈謎の病〉を調査する旅に出た

作家
スザンヌ・オサリバン
高橋洋
出版社
紀伊國屋書店
発売日
2023-04-28
ISBN
9784314011976
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眠りつづける少女たち――脳神経科医は〈謎の病〉を調査する旅に出た / 感想・レビュー

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アキ

ロンドン国立神経・脳神経外科病院に勤務する神経科医で専門は心身症。世界各地の心因性反応を現地を訪れて考察する。スウェーデンの難民の少女たちのあきらめ症候群、ニカラグアで集団発生した幻覚が主症状のグリシシクニス、カザフスタンの鉱山町での眠り病、キューバのアメリカ大使館で起きたハバナ症候群、コロンビアの女子学生の集団での解離性発作、アメリカ・ル・ロイでの集団心因性疾患、ロンドンの病院で担当した解離性発作の女学生。心身症は文化・社会的な面を含めた物語(ナラティブ)と診断が与える不安の身体化にも注意を払うべき。

2023/06/12

藤月はな(灯れ松明の火)

社会・政治的葛藤、宗教と文化の対峙構造など、様々に絡み合った不安要素から身体に不調が起こる。それは集団化する事もあり、その理由を突き止める為に原因の究明が必要だが、人は容易に原因を求めがちだ。その結果、見世物化されたり、陰謀論としてさらに不安を煽られたり、その不安に付け込む自称・専門家が出たりもする危険性について説く。特に事前に診断が下されてしまうと症例もその診断に沿った形で出てしまうという「可能性の一つとしての原因をレッテル張りされ、転換された思考による身体への辻褄合わせ」に動揺した。

2023/09/10

やいっち

「◎スウェーデンの難民家庭の少女たちに広まった「あきらめ症候群」◎ニカラグアに現存する幻視や憑依を主症状とする「グリシシクニス」◎カザフスタンの鉱山町で発生した「眠り病」◎キューバ駐在のアメリカとカナダの外交官らが罹患した「ハバナ症候群」◎コロンビアの女子学生たちに集団発生した「解離性発作」◎アメリカ北東部の地方都市ル・ロイと南米のガイアナで発生した「集団心因性疾患」◎ロンドンの病院で著者が担当した患者の「解離性発作」」などの謎の病を扱う。

2024/04/30

読特

「病は気から」と言われても、簡単に”気”は変えられない…スウェーデン、ニカラグア、カザフスタン、コロンビア、キューバ、米NY州のル・ロイ。集団奇病を訪ねて世界を歩く。器官の機能に問題はない。かといって演技でもない。思い込みを指摘しても治らない。心が体に及ぼす作用は、想像以上に制御が難しい。生物だけでなく心理や社会という側面でも評価し対処しなければいけない。西洋医学が世界で通じるとは限らない。”おまじない”が功を奏することもある。自身の健康管理にも、人の病に向き合う時にも、心と体の奥深さを思い知らされる。

2024/01/08

泰然

調査紀行系の科学図書として教示に富む。脳神経科医が世界各地で奇妙な心因性疾患の「謎」に迫るなかで見た一律ではない世界の作り。本書は他者の経験や他の世界を理解するためには自分の位地を解体し、相手の場所で再構築する必要性を警鐘する。表題の北欧の難民家族の少女たちに広まった「あきらめ症候群」で食べもしない、目も開かず、ベッドで眠り続ける彼女たちの症例を起点に展開される、生物・社会・心理モデルの理論は「世界を捉え直す」。わたし達は簡単に浅はかな仮説、紋切り型の概念、習俗の軛、陰謀論に呑まれる。異常とは何なのか?

2023/07/30

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