転落 (光文社古典新訳文庫 K-Aカ 4-2)
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転落 (光文社古典新訳文庫 K-Aカ 4-2) / 感想・レビュー
ポテンヒット
この本は解説やあとがき、ネタバレ感想を最初に読まないで本文を読んだ方が数倍面白いと思う。話しかけてきた男クラマンスのいう「告解者にして裁判官」とはどういう意味なのか、彼に何があったのか、近づいてきた理由は何なのか、「転落」とは何を意味するのかを探りながら読む面白さがある。彼の人間を見据える悪魔のような冷徹さに心奥を覗き込まれた思いがして肝を冷やす。読了後に解説を読んで、カミュがこの本を書いた背景を知り唸る。
2023/06/23
fseigojp
読書会課題本 カミュ最後の小説(未完はあるが、完結はこれが最後) 長編は、異邦人、ペストとこれだけ いかに若くして名声をえたかがわかる ちなみにノーベル文学賞の最若年受賞はキップリングで41歳、カミュは43歳で2位だ
2023/08/05
てつを
クラマンスが誰に向けて論じているのかを明かす場面に至るまでそれを楽しみにしながら、「告解者にして裁判官」とはなんなのかを追い続けた。なかなか本題に帰ってこない語りの中にも本題と僅かに交わるテーマや論理が認められ、徐々に「告解者にして裁判官」の輪郭が掴めてくる。自らの罪を(あたかも普遍的な過ちかのように)告白することで周囲から裁かれることを避け、普遍的な過ちを告白しない罪人たちに対して裁判官の態度でいられることが、それなのかな。SNSを例に挙げる訳者あとがきが結構面白かった印象。
2023/07/31
Fumitaka
東出祐一郎先生の『吸血大殲』で引用されていて知った小説。大戦が終わって間もないアムステルダムを舞台に、自らを「告解者にして裁判官」と自嘲しつつ、一方で「自分は謙虚な人間だから他人を攻撃できる」という傲慢さを帯びた主人公クラマンスの語りをひたすら聞かされるという話で、しかしその卑小さと再現性の高さは本質的な普遍性を具えている。印象としては『地下室の手記』に近い。カミュの人は俺の中だと身近なテーマを扱うのが上手い人という印象があるが、解説を読む限りでは本当に実体験(サルトルとの論争)に強く根ざしているようだ。
2023/05/23
ゆー
やたらと饒舌な語り口がおもしろい。 わたしは捕虜収容所で教皇に任ぜられたのです。p.149 とか、ところどころ唸るような表現もある。ネットで拗らせたおじさんのような思想で確かに現代的。解説によるとサルトルとの論争が背景にあるというのも興味深い。訳者の解説、後書きも良い。
2023/06/15
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