遅いインターネット(NewsPicks Book)
「遅いインターネット(NewsPicks Book)」のおすすめレビュー
ネットに流されないために今大切なのは? “他人の物語”に感情移入するより「自分の物語」を発信する方法
『遅いインターネット』(宇野常寛/幻冬舎)
インターネットは元来、自分が情報に接する速度を自由に決められるメディアだったはずだ。だが現実には、SNSの書き込みへの反応を四六時中気にし、いいねを沢山もらうことに躍起になるユーザーも少なくない。言い換えれば、SNSはファストな承認欲求のはけ口としても機能しているのだ。
また、不倫や薬物などの問題を起こした有名人をより早く叩いた者勝ちという、脊髄反射的な書き込みも溢れている。ツイッターのタイムラインでは投稿がストックされずにフローしていき、インスタグラムのストーリーは24時間で自動消滅する。こうした状況下で、多少時間が経っても価値が薄れない良質のコンテンツを積み重ねていこう、と提唱するのが宇野常寛の『遅いインターネット』(幻冬舎)だ。
例えば、インターネット普及以前であれば、気になる作家がいたらまずは書籍を手にとっていたはずが、今ではツイッターで作家のアカウントをフォローし、ウィキペディアを閲覧するだけで満足してしまう。そんな覚えがあるのは筆者だけではあるまい。
本書のもうひとつの要諦を成すのは、テレビ…
2020/3/19
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遅いインターネット(NewsPicks Book) / 感想・レビュー
mitei
ついつい簡単に物事を断罪してしまうネット社会に問題提起した一冊。Ingress、ポケモンGOなど親しみやすい話も交えて書かれていたので、面白く読めた。
2020/12/31
vinlandmbit
かなり時間はかかったものの、所々を読み返しながら読むと昨今のCOVID-19を端にした生活の変化から来る米国の問題やSNS起点での悲しい事件等諸々についても繋がるものを感じる一冊でした。今後もポイントポイントで読み返し理解深め自身の考えを問答してみようかと思います。
2020/06/06
速読おやじ
民主主義の暴走によるポピュリズム回避のためには、立憲主義にパワーバランスを戻す方が良いという。世の中はグローバルなAnywhereな人とローカルなSomewhereな人に聞さんされている。虚構の時代は終わり、拡張現実へ移行し、ポケモンGOが生まれた。虚構(共同幻想)を共有することで人間は拠り所にしてきたが、インターネットの出現により、誰もが発信できるようになり、様々な幻想が溢れかえっている。Facebook(自己幻想)、LINE(対幻想)、Twitter(共同幻想)。遅いインターネットの概念にたどり着く。
2021/01/14
ミライ
評論家の宇野常寛さんの新刊。平成の30年は「失敗したプロジェクト」、令和の時代になり日本の未来を取り戻すには「遅いインターネット(スロージャーナリズム的なネットでの質の高い情報発信)」が必要だと著者は語る、特に「書く」という行為についてじっくり考えさせられた。ディズニーのマーベル、NianticのポケモンGOを例に、「モノからコトへの時代の移行」を語っていたり、目の付け所が違うというか独特の視点で語られていて非常に面白い。人によってとらえ方がいろいろありそうな作品なので、読後感が分かれる一冊かなと思う。
2020/03/07
おにぎり
インターネットの速すぎる回転に巻き込まれないようにじっくり「考えて」情報に接する場をつくることが本書の主旨。インターネットは多様な情報発信を可能にするメディアでありながら、価値ある発信ができる人間がほとんどいないことを証明してしまった。世界にある情報の多様性を扱っているのは一握りの天才のみ。自己幻想に肥大した人間はFacebookに依存し、共同幻想に同化した人々はTwitterに粘着するという哀れな状況。悔しかったらこれらのツールをテロ防衛やロシア停戦に講じてみろと言いたい。
2023/03/05
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