所有と分配の人類学 ――エチオピア農村社会から私的所有を問う (ちくま学芸文庫 マ-53-1)
所有と分配の人類学 ――エチオピア農村社会から私的所有を問う (ちくま学芸文庫 マ-53-1) / 感想・レビュー
逆丸カツハ
エチオピアのある村でものが周囲との関係性によって分配の対象になったり、独占的な富になったりするその動態的な様子を記述していてなかなかにおもしろかった。歴史が近代以前に完全に巻き戻ることはないだろうが、資本主義からコモンの再生が叫ばれる中、ものを所有するという概念へのオルタナティブの可能性を示している。どのような社会のあり方があるかはわからないが、所有の思想は実体の思想に近く、それへのオルタナティブはものとの関わりを見る関係論的な思想になるのではないだろうか。
2023/11/24
Nさん
2023年文庫化(初出は2008年)。エチオピアの農村社会でのフィールドワーク。我々は「人類学」と聞くと、ついつい、現代社会が失ったノスタルジーや、未だ見ぬユートピアを想像してしまったりしないだろうか?ハッキリ言うと、本書のフィールドにはそのような世界はない。そこには、貨幣を媒介しないやり取りと、貨幣を媒介とするやり取りが存立しているが、その一つ一つが実に人間臭い。所有や分配に関する正当性=「言い分」をミクロ(家族)から、メゾ(村・町)、マクロ(国家)レベルに分けて調査・分析を行った重厚な一冊。(→続く)
2024/02/13
こじこ
難
2023/12/15
感想・レビューをもっと見る