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どうしてわたしはあの子じゃないの

どうしてわたしはあの子じゃないの

どうしてわたしはあの子じゃないの

作家
寺地はるな
出版社
双葉社
発売日
2020-11-18
ISBN
9784575243475
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「どうしてわたしはあの子じゃないの」のおすすめレビュー

『どうしてわたしはあの子じゃないの』――閉鎖的な田舎の村で育った3人の男女、16年後の再会がもたらしたものとは

『どうしてわたしはあの子じゃないの』(寺地はるな/双葉社)

『どうしてわたしはあの子じゃないの』(寺地はるな/双葉社)の、タイトルを見ただけでドキッとする。誰だって一度は「あの子みたいにきれいだったら」「もっとお金持ちの家に生まれていたら」「才能があったら」と夢見たことがあるだろう。あたかもみんなが平等かのように扱われる、子どもの頃なら、なおさらだ。

 とはいえ、本作で描かれるのは、マウントをとりあうドロドロの人間関係では、決してない。自分なんかには手の届かない相手だから好きになったはずなのに、自分と同じ場所におりてきてくれない相手が憎らしくて、みじめになってしまう。相手を想う気持ちが少しずつ濁っていくことが、耐えがたく苦しい。そんな複雑な感情を、本作はさまざまな立場から丁寧にすくいあげて、描きだす。

 閉鎖的な田舎の村になじめず、いつか東京へ出ていくことだけを夢見る中学生だった天。彼女にとって、東京からやってきて、村いちばんの権力者である祖父をもち、見た目の美しい人気者の親友・ミナは憧れの存在だった。幼馴染の美少年・藤生も、他の男子生徒同様、ミナのこ…

2021/1/7

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自分は自分にしかなれない――。「嫉妬心」と向き合う小説『どうしてわたしはあの子じゃないの』

『どうしてわたしはあの子じゃないの』(寺地はるな/双葉社)

 すぐれた誰かがそばにいると、自信が揺らぐ。他者との比較によって自分の価値は変動する。この比較軸を自分が決めてしまっていることに、なかなか当事者は気付けない。もしも誰かの視点で自分のことを観察したら、自分でも気付けない価値を見つけられるかもしれないのに。寺地はるなさんの『どうしてわたしはあの子じゃないの』(双葉社)は、その“もしも”を体験させてくれる。

 田舎の文化や家族の粗暴さに嫌気がさし、上京を夢見ている中学生・天。その天に想いをよせる、顔がよくて人気者の藤生。その藤生を目で追いながら、藤生から愛される天にあこがれる、東京生まれのかわいい令嬢・ミナ。天は藤生とミナの顔や家族を妬み、藤生は天があこがれる東京を嫌い、ミナは慣習にこだわらない天を羨んでいた。学校卒業を機に、未来のそれぞれに宛てた手紙を書く三人。その手紙は東京に戻るミナの手に託され、三人は別れを告げた。時は流れ、三十歳になった天のもとに、ミナから「あの手紙を三人で読もう」と誘いの電話がくる。それぞれ別の場所で人生を歩んでいた三人…

2020/12/31

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どうしてわたしはあの子じゃないの / 感想・レビュー

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ウッディ

閉鎖的な村も、古い考えの親の束縛も嫌な天は、優しい母がいて、可愛いく、東京から転校してきたミナのことが羨ましい。一方、好きになった藤生が想いを寄せる天の事が羨ましいミナ。それぞれの気持ちを伝えられないまま離れてしまった3人は、30歳になり、当時の気持ちを記して封印した手紙を開けるために再会する。都会への憧れ、友達への羨望など、思春期の葛藤を3人の視点から描いた物語。周りを気にせず、思ったことを口にする天が、口にできなかった思いが切なく、そんな天の事を好きになった藤生の気持ちがわかるような気がした。

2021/04/28

fwhd8325

率直な感想は「美しい」です。人は美しいんだと思います。妬みや嫉み、それは醜い面もあるけれど、真っ直ぐに生きる、後悔は後悔として受け入れる、そんな姿は美しいのだと思います。寺地さんの作品には、すぅーっと背筋を伸ばさせてくれる力があるように感じます。この作品で、寺地さんの作品はすべて読むことができました。今年中になんとか読みたいと思っていたので、目標達成もうれしく思います。

2020/12/24

ひめか*

どうしてこんなに上手くいかないんだろう。天もミナも藤生もコンプレックスを抱えて他人を羨ましく思っている。自分にはない他人の一面を見て自分を蔑んだり、見えている部分だけを見て羨んだり。私もそういう経験はあるけど、あまり意味のないことで勿体ないなと思った。人には人の悩みがあって、誰もが順風満帆なわけじゃないのに。自分の悩みも相手への想いも伝えなければわからない。時間はかかったけど、手紙で互いの真実を知れてよかった。自分を受け入れるしかないと悟ったのは、みんなが大人になったからなんだろうな。思春期の心は複雑だ。

2021/06/21

のぶ

佐賀県の耳中市肘差という地区を舞台にした連作風の物語。どの話にも登場するのは、身寄りのない街で一人小説を書き続ける三島天、その幼なじみで彼女に特別な思いを抱く藤生、都会育ちで人気のあるミナの3人。読み始めは何を書きたいのか分からなかったが、読み進むうちに3人の関係が明らかになって行く。30才になり、久しく途絶えていた村の伝統行事の復活を機会に集まり、若い頃に書いた手紙を読もうと連絡があり、その手紙を開封する事になる。寺地さんの文章は押しつけがましさがなく、それぞれの個性が際立って出ていた。心に沁みる一冊。

2021/01/03

いつでも母さん

『なにを言葉にして伝えるか。あるいは、伝えないか。わたしたちはいつもその選択を迫られる。そうしてたいていの場合、まちがったほうを選ぶ。』生きて来て今、大抵とはいかないが心当たりはあるなぁと。賢しら顔の私に「それも手軽な優越感に浸ってない?」と天なら言うだろうか。タイトルだけで多少の想像は出来る本作、寺地さんはこちらの心をくすぐるように痛いところを衝いてくる。15の頃の何とも言えない気持ちがひしひしと伝わる。30歳になって再会した3人が私には眩しい。正直で脆くて、強くて儚い。「3人ともこれからだよ!」

2020/12/10

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