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じい散歩

じい散歩

じい散歩

作家
藤野千夜
出版社
双葉社
発売日
2020-12-16
ISBN
9784575243574
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「じい散歩」のおすすめレビュー

山あり谷ありな人生も悪くない! 89歳の爺さんに「人生の楽しみ方」を学ぶ

『じい散歩』(藤野千夜/双葉社)

 年老いた時にもし、自分の人生を振り返ったら、私はどんな感想を抱くだろう。これまで歩んできた道は正直、よかったとは言いがたい。けれど、そうした人生も悪くなかったと思える自分でありたい。

 藤野千夜氏が手掛けた『じい散歩』(双葉社)はそんな気持ちになる、一風変わったシニア小説。飄々としたひとりの老人から、私たちは人生の受け止め方を教わる。

89歳の爺さんが人生回想する「じい散歩」

 明石新平は、もうすぐ89歳。散歩をし、喫茶店やレストランに寄ってはコーヒーを飲み、おいしいものを食べることが日課。ひとつ年下の妻・英子には認知症の兆しが。新平の散歩を怪しみ、浮気を疑っている。

 2人の間には、アラフィフの息子が3人。息子たちはみな結婚しておらず、子どももいない。長男の孝史は高校中退後に引きこもりとなり、現在、無職。フラワーアーチストの次男・建二は男性が恋愛対象で自称・長女。三男の雄三はグラビアアイドルの撮影会を主催する会社を興したが、毎月赤字で親に何度もお金をせびっている。息子たちには、いわゆる「常識」が通じない。

 だが、新…

2021/4/1

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じい散歩 / 感想・レビュー

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ひさか

文學界2018年2月号掲載を再構成し、小説推理2019年12月号〜2020年9月号掲載を加えて2020年12月双葉社刊。確かに散歩の話は出てきますが、メインではなくあまり関係がない。本人、妻、家族、近所のとりとめのないストーリー展開で、あまり興味を惹かれませんでした。主人公が元気な人だなぁというところには感心しましたが、いずれにしても、ふーんそうなんだぁという感じで終ってしまいました。

2022/04/29

ちょろこ

ちょっと違ったけど、の一冊。勝手に想像していた自分好みの可愛らしい優しいおじいちゃんとはちょっと違ったけど楽しめた。かくしゃくアラ90にびっくり。認知症の妻との仲は微妙。これだけ長年連れ添っていれば夫婦どちらかの心にだけ引っかかってることって星の数ほどあるのかも。独身兄弟がまた見事にバラバラ個性的で良し。自称「長女」の健二が甘味。柔らかい言葉と母をサポートする姿に、ホッと和んだな。ラストは新平じいさんのスマイル、ピースサインを思い浮かべた。人生最後まで楽しまなきゃね。おやつのように軽く楽しめる作品。

2021/03/11

Makoto Yamamoto

夫婦の年齢は足すと180になってしまう老夫婦。 夫、新平はかくしゃくとしていて、毎日の朝食から始まり、ぶらっと散歩に出て、喫茶店で女の子と話すルーチーンを行い、妻、英子は家にいて主婦。 妻に最近認知の症状がみられるなか、夫の生活が少しづつ変わる。 自立できていない息子3人は親の面倒を見ることができそうにもない育ち方をし未婚で、二人が同居。こんな中英子が倒れ、新平が頑張る。 なんとしっかりした90歳。 最後まで妻をみて、本人が動けなくなったら施設に入ると決めている新平に思わず拍手。

2022/01/25

とろとろ

90歳になるじいさんの散歩の話。昔の思い出話と今の状況が交互になって話が進む。独特の体操と朝食のおかげで病気も無く全く健康(健全とは言えないが)に過ごしている。金が無いと言いながら毎日の散歩のついでに外食、あちこち女性にチョッカイだして精神的にも極めて若い。50歳を越えた3人の独身息子がいる。だが、8050問題じゃないけれど、じいさんの方がむしろ元気。最後の項で、弱った妻は自分が面倒を見るが自分がダメになったら全財産を処分して施設に入る。息子たちが困ってもよいと言う。じつにアッサリしていて気持ち良い結論。

2021/07/24

のぶ

物語の始まり当時、89歳の新平と88歳の英子、老夫婦を中心にしたやさしさが伝わって来る家族小説だった。英子には認知症の兆しがあるが、新平は元気そのもの。三人いる息子は全員独身で孫はいない。そして生活環境や仕事で問題を抱えている。読んでいていろいろな家族が存在するものだと改めて気づかされた。傍から見れば大変な状況なのだろうが、藤野さんは、決してその状況をネガティブにとらえず、希望を持たせるものとして描いていて、生きている人間の素晴らしさをあえて際立させている。老人をテーマにした作品の中でもほんのりする一冊。

2021/04/05

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