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定食屋「雑」

定食屋「雑」

定食屋「雑」

作家
原田ひ香
出版社
双葉社
発売日
2024-03-21
ISBN
9784575247275
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「定食屋「雑」」のおすすめレビュー

肉じゃがや酢の物にドバドバ「すき焼きのたれ」を入れる定食屋? 離婚を切り出した夫を虜にした定食屋を巡る感動の物語

『定食屋「雑」』(双葉社)

 すべてにおいてまじめに取り組む、がモットーの沙也加は、夫から唐突に離婚を切りだされる。その理由は、食事をしながら酒を飲むことを好まない自分といると、息が詰まるからだという。夫を虜にしてしまった定食屋「雑」へ沙也加は偵察にいくが……。

『三千円の使い方』や『ランチ酒』シリーズなどで人気の原田ひ香さん。人の心の機微や男女のすれちがい、生きることの哀歓をじっくり、しんみり伝える作風が多くの人に愛されている。本作『定食屋「雑」』(双葉社)の第一話になっているのは、2021年に刊行されたアンソロジー『ほろよい読書』(双葉文庫)に収録されている同名短編。夫との離婚に悩む女性が定食屋で働くうちに、新しい生き方を見つけていく内容だ。2話以降はその続きが描かれた長編となっている。酒の酔いにたとえるなら、短編版の楽しさは“ほろ酔い”で、長編版のこちらは“陶酔”というところだろうか。それぞれに旨みがたっぷり詰まっている。

「雑」の料理の特徴は大雑把で甘みが強いこと。それもそのはず、肉じゃがにも煮っころがしにも酢の物にまで「すき焼きのたれ」で味を…

2024/3/30

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定食屋「雑」 / 感想・レビュー

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旅するランナー

客対応が雑な定食屋を営むぞうさん。夫から離婚届を突き付けられアルバイトに応募してきた沙也加。お店の常連高津さん。そんな人たちの、しみじみとした人情話。コロッケ、トンカツ、から揚げ、ハムカツ…人情の中に深い味わいがある。人生に不器用な人たちの控えめな優しさが心に響きます。

2024/04/21

いつでも母さん

ひ香さんの作品の中でもかなり好み(当方比)6話の連作にサイコーのエピローグまで拍手だ。気持ちが離れてしまった夫とよりを戻したい妻・沙也加の離婚の話からこの物語は始まる。夫が立ち寄る定食屋「雑」を偵察し始めて、1人で切り盛りする女店主・ぞうさんに雇ってもらうことに・・離婚の件は「離れた気持ちは戻らないよ」と思いつつ、それよりもぞうさんとのやり取りや「雑」に集う常連客や、出される料理に気持ちが傾いていく私。ぞうさんの醸し出す雰囲気(大雑把で愛想が無くて、でも情はある)にハマってしまった。あぁ、もっと読みたい。

2024/04/18

のぶ

原田さんの食べ物に関する話は面白い。本作も楽しめた。町の年季の入った定食屋「雑」が舞台。味のある店主ぞうさんと離婚問題を抱えた沙也加、「雑」の常連客高津などを中心に話が進んでいく。町の定食屋の日常と、登場人物それぞれの人生が交差していくような話。コロナ禍が始まりそれに苦しむ飲食店の様子も改めて思い起こした。ぞうさんの味のある人柄がひとつの読ませどころで、沙也加の離婚問題での悩みと交錯して二人の関係がよく描かれていた。人生は思い通りにはいかないと痛切に感じさせられると同時に温かさにも満ちた作品だった。

2024/04/14

ゆみねこ

第1話はアンソロジー「ほろ酔い読書」で既読。沙也加は、ある日夫の健太郎から離婚して欲しいと言い出され家から出ていかれた。夫の行きつけだった定食屋『雑』でアルバイトをすることに。『雑』でみさえの作る大雑把で味の濃い料理を手伝い、常連客とのやり取りをしながら変わってゆく沙也加。みさえの来し方も含め、とても読みやすく面白かった。第1話では沙也加の頑なさで健太郎は息苦しいだろうと思ったが、話が進むとクズっぷりに腹が立つ。

2024/04/17

花ママ

よかったです。夫に出ていかれた主人公の沙也加。夫がよく立ち寄っていた定食屋「雑」に偵察に行き、その店でアルバイトとして雇われることになる。その店の女主人〈ぞうさん〉の作る料理は大雑把な濃い味付けながら、わからないようなところに手をかけて、おいしく仕上げた品々だった。年齢は勿論、 個性も育った環境も違う2人が、次第心を通わせていく様にホロッとした。沙也加の離婚、そしてコロナ禍の中でも二人三脚で乗り越えて行こうとする2人にエールを送りたい。おだやかな気持ちで読了できました。

2024/04/20

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