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青の刀匠 (一般書)

青の刀匠 (一般書)

青の刀匠 (一般書)

作家
天沢夏月
出版社
ポプラ社
発売日
2022-11-24
ISBN
9784591175057
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「青の刀匠 (一般書)」のおすすめレビュー

鉄を鍛えて刀をつくることは、自らの心を鍛えること――刀鍛冶の世界に飛び込んだ少年の再生と青春を描く感動作『青の刀匠』

『青の刀匠』(天沢夏月/ポプラ社)

 高校生コテツの日常は、突然の火災事故によって一変する。父親は重傷を負って意識不明となり、コテツ自身もひどい火傷を負ってしまう。そんな彼を引き取ったのは、遠縁にあたる老婦人の剱田かがりだった。実は彼女は日本唯一の女性の刀鍛冶であり、コテツはその弟子となる――。

 今年で作家デビュー10年目を迎えた天沢夏月氏。部活動小説というジャンルを確立させた一方で、せつなさに充ちた恋愛小説家としても人気を博している。思春期の心のゆれと、その爆発。部活や恋愛というテーマと添わせて数々の青春小説をものしてきた氏が、新作『青の刀匠』(ポプラ社)で扱うモチーフは「刀鍛冶」だ。この一風変わった題材からして、わくわくさせられる。

 主人公は、心身ともに傷ついた17歳の少年コテツ。『海が走るエンドロール』(秋田書店)の漫画家、たらちねジョンさんが装画を手がけた表紙のコテツのまなざしが強い印象を放っている。

 東京を離れ、かがりの住む島根へやってきた彼は、学校になじめず不登校になる。左頬にできた火傷の痕に注がれる周囲の視線、心に刻みつけられた火へ…

2022/11/24

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青の刀匠 (一般書) / 感想・レビュー

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シャコタンブルー

高校生のコテツは火事で顔の左半分に大火傷を負い、火に対するトラウマを抱えている。そんな状態でありながら火を扱う刀匠の見習いになっていく様相が描かれている。トンテンカン。トンテンカン。刀匠がリズミカルに鎚を振り下ろす音が響き渡る。単調に思える作業だが毎日同じリズム同じ力で鉄を打つことの難しさ、厳しさは熟練の為せる技だ。以前本物の刀を握らせてもらった時に、背筋が凍るような感覚と凛とした緊迫感を体感した事を思い出した。現在に刀を造る意義、刀の存在する意味、それを模索し挫折しながらも成長していく姿が清々しい。

2022/12/16

よっち

突然火事に遭い火傷を負った東京の男子高校生コテツ。父も植物人間状態に陥り天涯孤独となった彼は、遠縁の島根に住む女性の刀鍛冶・剱田かがりという老婦に引き取られる青春小説。自暴自棄にな気持ちで島根にやってきたものの、クラスメイトの視線に耐えられず学校に行けなくなってしまうコテツ。そこから少しずつ弟子たちと刀剣の仕事を手伝う展開で、現代で刀を作る意義や弟子たちとの関わりで葛藤を抱きながらも鉄を打ち、熱に溶かされて変わってゆく心境があって、心の傷が癒やされて様々なことに向き合い受け入れてゆくその姿が印象的でした。

2022/11/29

おかだ

開幕直後に主人公が火災に見舞われ、あれよあれよという間に刀鍛冶の世界と出会う。火でえらい目に遭ったのに鍛造とか大丈夫なのか?と思ったけど、荒療治的な感覚だろうか。作中問われる、今の時代に刀は必要か、人を殺せる道具を作る意味とは?…考えながら読んだけど、自分の中で答えは出ない。でも、色んな人の迷いや想い、脈々と受け継がれた願いが込められ鍛錬された刀に、意味がないとは思えない。丹精込めて打たれた刀は、さぞかし美しいだろう…と想像してゾクゾクした。前を向いて歩き出すためのグッとくる言葉がいくつもあった。

2023/07/14

信兵衛

ちょっと変わり種の青春成長ストーリィ。 孤独な高校生が刀鍛冶場で働くことにどういう意味があったのかは、読んでのお楽しみです。

2022/12/28

きたさん

島根に住む遠縁の刀鍛冶の下に身を寄せることになった、火事で心身共に傷を負った少年の話。登場人物が決して多くなく、また話自体も狭い場所で進められることがほとんどだったせいか、非常に濃密さを感じました。「打つ人の思いが込められた」という言葉の本当の意味に触れられたような気がして、その意味でも素敵な読書になりました。読み終わった今でも「刀になりたくない鉄」の件が心に残っています。

2023/02/14

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