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乱視読者の帰還

乱視読者の帰還

乱視読者の帰還

作家
若島正
出版社
みすず書房
発売日
2001-11-01
ISBN
9784622048176
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乱視読者の帰還 / 感想・レビュー

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Tonex

大学院時代にナボコフの『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』を読もうとして何度も数十ページで挫折した話から始まるエッセイ集。書評集。▼ものすごい情報量。通読しても読むそばから忘れるので、途中から拾い読みに変更。▼64頁に植草甚一の文章は読んだ後で何が書いてあったかすぐ忘れてしまえるのが特徴というか美点で、読み返すたびに新たな驚きがあると書いてあったが、たいていの本はそういうものだと思う。▼ナボコフの名言。「ひとは書物を読むことはできない、ただ再読することができるだけだ。」

2016/02/27

koo

 再読。京大文学研究科名誉教授である作者の評論集ですが白眉は「そして誰もいなくなった」全編でクリスティが仕掛けた叙述トリックを論理的に解説した「明るい館の秘密」です。読者が1度は思う「登場人物10人の独白を目にしながら何故犯人がわからないのか」という事に明快な解答を出してくれているだけじゃなくクリスティが如何にフェアに書いているかを解説してくれています。底本となる清水俊二氏の致命的な誤訳にも言及され自分が10代で読んだ時おかしいと思った辻褄の合わない部分が払拭されました。一読をおすすめするベスト評論です。

2024/01/31

mejiro

時の流れに消えていった作家たちに惹かれた。「彼の登場した時代が早すぎたということだろうか。作家たちの明暗を分けるのは、つねに運なのかもしれない」という言葉が印象に残った。著者の頭の中には超巨大なデータベースがあるに違いない。ミステリからナボコフ、ジョイスまで幅広く洞察し読みごたえがある。 

2015/06/07

Hotspur

前作『冒険』から8年後の『乱視読者』第二作。版元もなぜか自由国民社からみすず書房に変わっている。一冊の中で、段組も一段から三段まで様々。もちろん著者の興味の焦点は前作と変わらず、第一章、第六章が丸々ナボコフに充てられるほか(これらの章は改めてナボコフを読みたくなるほど素晴らしい)、各所でナボコフが言及される。一方で、本書では比較的ミステリ評論のウェートが高く、しかも力作ぞろい。特にアガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』の叙述トリックを分析する「明るい館の秘密」のシャープさは比類がない。

2022/04/11

アルパカ

大学の先生の評論集。有栖川有栖さんがこちらの「そして誰もいなくなった」の評論に感銘を受けた、と前回読んだ本に書かれていたので。私はさらにバークリーの作品のいくつかとダフネ・デュ・モーリアの「レベッカ」についての考察がとても興味深かった。最後までヒロインの名が明かされないことは読者がヒロインにより近しい感情になれるようにではないか、レベッカもヒロインも主人のマキシムを愛しているのではなくて屋敷のマンダレーを愛しているのだ、そしてデュ・モーリアはレズビアンではなかったか、というところです。

2020/03/13

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