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ウエハ-スの椅子 (ハルキ文庫 え 2-1)

ウエハ-スの椅子 (ハルキ文庫 え 2-1)

ウエハ-スの椅子 (ハルキ文庫 え 2-1)

作家
江國香織
出版社
角川春樹事務所
発売日
2004-05-01
ISBN
9784758431026
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ウエハ-スの椅子 (ハルキ文庫 え 2-1) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

「私」の日記風の記述と過去の回想とが、物語世界を紡ぎ出してゆく。そこに過去と現在とはあるのだけれど、未来がない。「いつかマジョルカ島」での「いつか」は永遠にやってこないのだ。そのことを私は熟知している。だから、果てしない寂寥の中に生を送ることになる。恋人は、とうとう私を理解することはないだろう。もちろん、私もそんなことはわかっている。甘やかな回想―例えばフランスキャラメル―に浸る時、その時こそ私が解放される時だ。私の行く末は「行き止まり」なのだから。アンニュイにして切ない、江國香織ならではの小説世界だ。

2018/07/17

三代目 びあだいまおう

『私は、自分が恋人の人生の離れに間借りしている居候であるように感じる』この一文のもの寂しさが全体を漂う。不倫相手を『恋人』と表する主人公『私』の一人称で終始する、切なくどんより重い独白。もう戻れないことがわかっている子供の頃、ウエハースで椅子を作り、幸せの象徴と信じていた。恋人と過ごす時の幸せは、同時に恋人と会えない時間の暗い闇を深める。闇を埋めようと、思考と感情を動かそうとするのだが闇が重すぎて沈むしかない。孤独と寂しさに溺れながらの独白に自分が同化されそうになる。流石の言葉選びと描写センスです‼️🙇

2019/10/11

❁かな❁

冒頭から一気に江國香織さんの綺麗な世界に入ってしまう。38歳独身の私は妻子持ちの優しい恋人が訪ねて来るのを待っている。恋人は完璧なかたちをしていて一緒に過ごす時間は幸福な気持ちになる。だけど孤独、絶望が付き纏う。静かに穏やかに綴られていく。恋人と一緒に同じ本を読んでいき、読んでいる途中や読了後に語り合ったり、おいでと呼ばれて膝に頭を乗せて座ったり、髪をなでられたりなど簡単なことで満ち足りてしまう気持ちもわかる。「私はあなたに出会ったときに、もう恋をしていた。」ウエハースの椅子のように危うさを感じる作品。

2017/09/05

夢追人009

江國香織さんが描く名もなきヒロインの過去と現在と愛と人生の物語です。両親と死別し画家として暮らす38歳の私は妻と息子と娘がいるやさしい恋人との愛を信じて生きているのですが、悲しいけど何事も永遠には続かないのでしょうかね。「なぜ、マジョルカ島にいく日が来ないのかわからなかった」妹も姉と性格が真逆に見えても二股野郎の大学院生の男と別れずにズルズルと関係を続けているのですから根っこは同じなのでしょうね。最後に人生最大の危機を乗り越えたヒロインの未来は未だ不透明だけど粘り強く生きて行ける所まで行って欲しいですね。

2020/01/03

hitomi.s

こんなに生活が豊かなわけでもないし、愛の言葉を掛け合ったりもしてないし不倫をしているわけでもないけど、なんか「あーわかるわー」と思ってしまった。 この、「どこへも行けない感」とか「今は子どもの頃みたいな添えられた角砂糖ではないのに、と時々確認しちゃう部分」とか。 もっと、一般的に、日常は、「ウエハースの椅子ではないもの」なのでしょうか。 考えると息詰まる。あーおいしいもの食べよう!

2017/08/25

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