宇宙の果ての本屋 現代中華SF傑作選
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「宇宙の果ての本屋 現代中華SF傑作選」のおすすめレビュー
子宮と膣がない状態で産まれてきた女性の数奇な運命とは? 人類の普遍的な問題をテーマにした最新中華SFアンソロジーが面白い!
『宇宙の果ての本屋 現代中華SF傑作選』(新紀元社)
第41回 日本SF大賞・特別賞を受賞した、中華SFアンソロジー『宇宙の果ての本屋 現代中華SF傑作選』(新紀元社)が刊行された。第一弾『時のきざはし』につづき、立原透耶氏が編んだ第二弾で、15作品を収録している。作家の年齢や性別に偏りがないように意図して編集されたそうで、第一弾よりもSF色が強め、と序文に書かれている。
普段SFに馴染みがなく、中国の文学と言われてもイメージが湧かない読者も多いと思うが、本書で扱われているモチーフはいずれも今日的。ジェンダー、環境問題、格差社会など、卑近な話が多くを占める。譚楷(タン・カイ)「死神の口づけ」のように、80年代発表の作品ながら、コロナ禍を予見していたような小説も含まれる。
劈頭を飾るのは、顧適(グー・シー)「生命のための詩と遠方」。海洋汚染処理の国際コンペに参加した研究チームが、海への原油の漏出などを鎮静化するために、優秀な機能を持つマイクロロボットの利用を提案。汚染を防ぐ技術もつくりあげるが、公的には認められなかった。だがしかし、まったく予期せ…
2024/1/17
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宇宙の果ての本屋 現代中華SF傑作選 / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
人生を賭けた水星への創造物誕生と密やかな愛に心を躍らせた「水星播種」。しかし、幕引きはシニカルだ。結局、新しき生物も業には敵わないのか・・・。「時の点灯人」は時間列が分かるとアッと言わせられるミステリーとなっているのが見事。「人生を盗んだ女」は映画『パラサイト』のように努力が必ず、報われる訳ではなく、人生すらも階級とそこに付随する環境で決められてしまう事の絶望と足掻きを痛々しいまでに真摯に描く。とは言え、眠っている間にじっと顔を覗き込み同期しようとする人がいるって十分、ホラーだが・・・。
2024/04/30
緋莢
図書館本。『時のきざはし』に続くSFアンソロジーで、15人の作家による15編が収録されています。宝樹、陸秋槎、陳楸帆など、日本で翻訳の単著が出ている作家から、万象峰年、譚楷などこの本に収録されている作品が、初邦訳という作家までいます。その譚楷の作品「死神の口づけ」は、1979年にソ連で起こった、ある流出事件をモデルとしているようで映画「アウトブレイク」公開されて間もない頃に(続く
2024/04/14
本の蟲
『時のきざはし』に続く立原透耶編、アンソロや単行本でお馴染みの作家から、初邦訳作家まで含む現代中華SF傑作選15編。環境、ロボット、宇宙、言語、中国古典に仏教SFまで、どれも密度が高く、外れなしの高水準でどんどん読み進められる。お気に入りは神話的結末で幕を閉じるリアル「新世界の神になる」案件の王晋康『水星播種』。杞憂が杞憂でない、既読単行本より好きになった陸秋槎『杞憂』。言語は人格や文化も浸食する、長谷敏司作「地には豊穣」を思わせる昼温『人生を盗んだ女』
2023/12/21
もち
「これはあんたがあの時ここに預けたもの。センパイが今から返すよ」◆同時通訳者になりたい少女を救うため、語り手は奔走するが――。ミラーニューロンと知識と時間の向こう側。超技術がもたらした変革と、最後の切ない大逆転。(『人生を盗んだ少女』)■億年単位で描かれる水星での文明興隆、瓶の液体が革命の裏側を見せる時間SF、「本」の真の意義が驚きと感動を伴って導かれる表題作など、年間ベスト級の新鋭SFが揃う。短編ながら切れ味鋭いミステリ的解決を遂げる作品も多く、何度も目を明かされた。
2023/12/28
スイ
手にした時には分厚さに驚いたけれども、読み始めたらどの作品も面白くて面白くて、いつのまにか読み終わってしまった。 「猫嫌いの小松さん」(程婧波)には胸が温まり、「杞憂」(陸秋槎)にはスケールの大きさに圧倒された。 「水星播種」(王晋康)と「人生を盗んだ少女」(昼温)は、読み終えた後もずっと考えてしまう良い作品。
2024/02/05
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