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口の立つやつが勝つってことでいいのか

口の立つやつが勝つってことでいいのか

口の立つやつが勝つってことでいいのか

作家
頭木弘樹
出版社
青土社
発売日
2024-02-14
ISBN
9784791775996
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「口の立つやつが勝つってことでいいのか」のおすすめレビュー

理路整然と論破するのはただのインチキ? 『絶望名人カフカの人生論』著者が潰瘍性大腸炎になって気づいた言語化について

『口の立つやつが勝つってことでいいのか』(青土社)

 私は口が立つ子供だった。小学校の休み時間はひとりで図書室にこもりきり、棚の端から端までを黙々と読んでいた。だから、「口が立つ」というよりは「語彙が(当時の同級生と比べて)多かった」のだろう。普段は無口なくせに、ディベートの授業では相手チームの女子を泣かすほど攻めた。

 だから、頭木弘樹『口の立つやつが勝つってことでいいのか』(青土社)にギクリとした。本書は『絶望名人カフカの人生論』で知られる文学紹介者による、初のエッセイ集である。序盤、このような記述がある。

〈小学生の時、私は口が立つ子供だった。〉

 なんだ! 頭木さんもそうだったんじゃないか! ちょっとだけホッとして読み進める。続きはこうだ。

〈当時もう学校は「暴力はダメ、話し合いで」というふうになっていた。だから、とっくみあいのケンカなんかしていると、先生があいだに割って入って、「手を出しちゃダメ! 口で言いなさい」と両者を分けて、(中略)それぞれの言い分を、ひとりずつちゃんと聞いてくれる。〉

 頭木は「口が立つ」から、「これこれこうで、相手がよく…

2024/4/9

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口の立つやつが勝つってことでいいのか / 感想・レビュー

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ゆきらぱ

楽しみにしていたエッセイ集。タイトルがまず良い。いつも頭木さんの文章を読んではその視点の驚くほどフェアなところに痺れていた。それは二十歳の時に始まったという闘病生活から得たものなのかなと思ったりもしたが、今回小学校の間に7回も転校しその度にキャラが変わったことと、小六の時の不思議な不思議な担任の先生のエピソードとそれを受け入れていたことを知りこの視野の広さは元々の素質なのだと感じた。私は最後の章の「誰かの恩人ではないか」が特に好きです。ストレンジャーに救われるのは人生の彩りだと思うので。

2024/02/27

阿部義彦

ちくま文庫の『トラウマ文学館』の編者として知った頭木弘樹さんが、大好きな人文書の出版社青土社(ユリイカ)からエッセイ集を出しました。これが、言葉や会話に対する信頼感を根底から覆す体験を語られていて、この世の見方まで揺るがせられる快著です。思いがそのまま言葉として出てくると思っている素朴な人はまだまだです。言葉で信頼を取り戻せるか?それよりも自然と助け合い、それが当たり前で感謝の言葉などそもそも必要の無い共同体に過ごしてその夢見心地な体験に著者は打ちのめされます。言葉程うらはらな物も無い!と言葉で綴る。

2024/03/23

ryohjin

若い頃から難病を患った著者の文章は弱者の立場に視点を合わせています。「口の立つやつが勝つ」「能力で人を判断する」...世の中では当たり前ととらえられていることを見つめ直し、角度をかえた考え方を語りかけてくれます。それは声高になることなく、おだやかにむしろ控えめに語られていますが、じんわりと心に落ちてきて共感を覚えました。カフカをはじめとして、文学作品の紹介もあり、楽しみながら読了しました。やわらかい感性にあふれ、やわらかい気持ちになれる本だと思います。

2024/03/26

昭和っ子

口の立つ子供だったという著者。人とのケンカでも、間に入った先生に自分の言い分を主張し、口ごもる相手をやり込めつつ、口が立つ方が勝つだけの理不尽さを申し訳なく思っていたとか。そんな彼が二十歳で難病に罹患し「言語化できない、どう説明しても人にはなかなかわかってもらえないことを、山ほど経験することとなった」その視点からのお話に、励まされて落ち着いた気持ちになれた。牛乳瓶でキスの練習。知らないうちに誰かの恩人になっているかもしれない。もし病気が完治したら、病気のままの自分を思って泣くだろう。読めて良かった。

2024/04/13

読書一郎

「暴力はいけない」じゃあ「口が立つやつが勝つってことでいいのか」。「やらないで後悔するよりはやってみるべきだ」でも「後悔するのも豊かな生き方ではないか」…言葉にならない感覚を、繊細な手つきですくいあげたエッセイ集です。声高に主張するのではなく、世界にあふれる暴力性を片隅でやり過ごすような、著者の静かなまなざしが光ります。

2024/04/17

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