京極夏彦、“4形態同時発売”を語る(後編)

新刊著者インタビュー

更新日:2013/8/9

インクスブスというのは夢魔とか淫魔のことです


 「ルー=ガルーは、一話ごとに少女たちの視点を交代させる構成で、シリーズ五話まで考えていました。二話目はもともと作倉雛子視点の話だったんですね。

 インクスブスというのは夢魔とか淫魔のことです。そこからもわかるように、性的虐待を扱ったシビアな内容でした。初は続けて出す予定だったので、書き始めていたんですが、事情があって止めてたんですね。そしたら十年経っちゃった。

十年で社会状況も変わっているから、どうもいけないなと考えて、二話と三話をリミックスする形に作り直したんです。もともと来生律子視点は三話目になる予定だったんです」

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 少女たちが主人公ではあるが、昨今流行の“萌え”的な部分は少ない。
むしろ、 主人公の一人・神埜歩未などは、プロの殺し屋のようなイメージさえある。
また、少女や近未来というキーワードから軽い読み物を想像してしまうが、けっして軽くはなく、かなり重たいテーマが込められている。それでいて読了後は すっきりする娯楽小説になっているのだ。

「そもそも人殺しの話なんだから、軽くてはいけないんだろうと思うんですよ。 でも、娯楽小説ではあるわけだから、深刻なだけじゃいけないだろうと。でも、ただぬるくしたんじゃ面白くないですからね。そこの加減が難しいところですね」

取材・文=村上健司 写真=首藤幹夫

電子ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔(上・下)

講談社/各700円

近未来。少女・牧野葉月たちは閉じた世界の中、携帯端末(モニタ)という鎖に縛られて生きていた。そこは窮屈ではあるものの不純物のない安全な檻――のはずだった。が、その世界に突如現れた連続殺人犯。少女たちは、殺人犯とその背後に聳える巨大組織との対決を余儀なくされる。
驚愕の事件から数ヵ月。世間は一時、安定を取り戻したように見えた。
前回の事件の被害者として、この世界に漠然とした不安を抱えていた少女・来生律子のもとに、小瓶に入った謎の毒を持った作倉雛子が訪ねてくる。雛子は毒を律子に託し姿を消す。奇妙な毒の到来は、新たなる事件の前触れなのか--。
「突如凶暴化する児童たち」「未登録住民達の暴動」「奇怪な製薬会社」「繋がる過去と、現在の事件」すべての謎が明かされるとき、新たなる扉を開けた少女たちは何を想う!?

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『ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔』
単行本・ノベルス・文庫本(上・下)