蒼井 優「20代後半のこじらせは、30代になったら、勝手にラクになる」

あの人と本の話 and more

2016/12/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、映画『アズミ・ハルコは行方不明』で、行方不明となる主人公・安曇春子を演じている蒼井優さん。本作に描かれているのは、今を生きる女の子たちのヒリヒリとした焦燥感。20代後半の女性なら誰もが通り過ぎる「第二の思春期」を振り返る。

「消えたいなと思ったこと、ありますよ。別にそんな暗い話でもなくて、今はそう思わないけど“自分なんかいなくなっちまえ!”と思うハルコの気持ちはわかる。周りは逃げたと思うかもしれないけど、自分の中ではきっと前に進むことだったんだと思う」

 20代後半は「女性にとって第二の思春期」だという蒼井さん、どうやってそれをくぐりぬけたのだろう。

「こじらせるだけこじらせておくしかない(笑)。30代になったら、勝手にラクになると思うよ、って。20代後半は勝手にこじれるものだし、頭で考えて、それを真っ直ぐにしようとすればするほど、抜ける時間はかえって遅くなる。きちんとこじらせておけば、気づいたら全部の糸がほどけているものだと思います」

 10代の頃はまっすぐで多面的な役が多かった。30代の今、また多面的な役のオファーがくるようになったことが、とても嬉しいのだという。

「30歳を越えてから、こじらせた女の役しかこなくなっちゃって(笑)。多面的といっても、30代はもっとボコボコしてる感じ。演じていると苦しいのは苦しいんですが、10代の頃にはできなかった役だなと感じています」

 変化したのは、自分だけではない。そのことがまた今の充実度を支えている。

「20代後半から、同世代の人たちと仕事をする機会がすごく増えたんですよ。今回の映画のプロデューサーの枝見さんも松居大悟監督も同い年なんです。先輩たちに憧れて、その背中を見ながらずーっと歩いてきたら、気がつくと隣にたくさんの仲間がいて、みんな、今、ちょうど第一関門をクリアしたところ。見えないところで戦ってきて、今、同じ場所にこうやって集まることができて、これからは一緒に戦うことができる。日本映画を変えてやるとか、そんなおこがましいことは思わないけど、この先の景色も、みんなで一緒に見ている感じがして楽しくてしょうがないんです」

(取材・文=瀧 晴巳 写真=冨永智子)

蒼井 優

あおい・ゆう●1985年福岡県生まれ。99年、ミュージカル『アニー』で舞台デビュー。2001年『リリイ・シュシュのすべて』で映画デビュー。06年『フラガール』で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞ほか多数の賞を受賞。公開待機作に映画『東京喰種トーキョーグール』、『家族はつらいよ2』がある。
ヘアメイク=草場妙子 スタイリング=山本マナ 衣装協力=ヴィンテージのブラウス2万9000円、ヴィンテージのスカート9万円(ライラ アトリエ TEL03-6455-1531)

 

『宿六・色川武大』書影

紙『宿六・色川武大』

色川孝子 文春文庫 品切れ再版未定

15歳も年の離れたいとこであり、鬼才と言われた小説家の色川武大と久しぶりに再会した時、彼は難病ナルコレプシーのため、変わり果てた姿となっていた。自分の結婚を破談にしてまで一緒に暮らし始め、結婚。やがて離婚してからも絆は途切れることはなかった。波乱万丈の20年を振り返ったエッセイ。

※蒼井 優さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ1月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

映画『アズミ・ハルコは行方不明』

原作/山内マリコ(幻冬舎文庫) 監督/松居大悟 出演/蒼井 優、高畑充希、太賀、葉山奨之、石崎ひゅーい 配給/ファントム・フィルム 新宿武蔵野館ほか全国公開中 
●突如、街に拡散される失踪したOL安曇春子(蒼井優)のグラフィティ・アート。無差別に男たちをボコる女子高生集団。地方に暮らす3世代の女の子たちの行き場のない焦燥をPOPに描いた山内マリコの原作を、『アフロ田中』『ワンダフルワールドエンド』の松居大悟監督が映画化。
(c)2016「アズミ・ハルコは行方不明」製作委員会