乃木坂46高山一実「今はステージ上の姿を磨きたい」『トラペジウム』の大ヒット、写真集『独白』の発売、そしてこれから…

エンタメ

2019/3/4

 2017・2018年のレコード大賞を2年連続で獲得し、舞台や雑誌、バラエティ、CMなど活躍の場を広げる乃木坂46。結成当初からムードメーカーとしてグループの中心となり、最近では初小説『トラペジウム』(KADOKAWA)が20万部を突破し、小説家としても活躍。2月26日には、写真集『独白』(徳間書店)を発売するなど、ますます活躍が期待される高山一実さんに心境を伺った。

■一冊にぎっしり詰めた想いを多くの人に届けたい

――2018年11月の発売からわずか3カ月で、『トラペジウム』が累計発行部数20万部を突破しましたね。率直に今のお気持ちは?

高山一実さん(以下、高山) 自分的には、まだ実感が湧いていなくて。たくさんの方から反響をいただいて、その時は嬉しい気持ちになりますが、自分でネットニュースを見てもまだ信じられません。

 ただ、私としては『トラペジウム』を書き終えた時点で、幸せな気持ちでいっぱいだったので、「たくさん売れて嬉しい」というよりは、「自分が書いた作品をこんなに色んな人が読んでくださっている」ということのほうが嬉しいです。自分が伝えたいメッセージをすべて詰め込んだ作品なので、その想いが届いてくれたらいいですね。

――『トラペジウム』を発売して間もないですが、次回作にも期待してしまいます。

高山 日々、書きたいテーマを自分に投げかけてはいますが、本格的に原稿と向き合うのはもう少し経ってからでもいいかなと感じています。

『トラペジウム』には、今まで25年間生きてきた中での疑問を含めすぎてしまったので、今度は自分が書けることではなく、「自分が何を書きたいのか」を探して書きたいと思っています。

『トラペジウム』の時は、取材がすごく楽しかったので、自分が何に興味を持っているかが定まったら取材をさせていただいて、ストーリーにしていきたいなというのはなんとなく決まっています。

――後ほど詳しくお伺いしますが、『独白』のロケ地のフィンランドに憧れを抱いたきっかけのひとつに、村上春樹さんの『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読んだことも挙げられるそうですね。私生活でも小説の影響を受けますか?

高山 なんとなく自分の私生活のサイクルは決まっていて、お仕事(乃木坂46での活動)をしつつ、ちょっと躓いたり、落ち込んだりしたら、5歳のころから支えてくれている友人たちに会って発散しています。ただ友人に会う時は、SOSが出てから少し経って「どうしたの?」「じつは…」という流れなので、本当に自分の中でワーッとなった時は、本に助けられています。

 それが、自分をコントロールするために一番適した方法だと思っていて、「つらくてどうしようもない」「涙が止まらない」という時でも、無理やりでも本を読むと「やっぱり涙が止まるんだ」と実感するんです。人に相談するのが苦手な人は、いったん本を読むことをおすすめします!

――落ち込んでいる時は、どういった本を読むのでしょうか?

高山 内容がダークなほどよくて(笑)。主人公が自分と同じように悩んでいなくても大丈夫です。自分よりも、はるかに度を超えた闇を抱える登場人物がいる作品を読むと、自分の状況はまだ幸せなほうだなと思えますし、特に湊かなえさんの作品だと、すごく悪いことをした人がどんどん痛い目に遭っていくので、見ていて気持ちがいいです(笑)。

――ちなみに、最近ハマっている作品や作家さんはいますか?

高山 ずっときっかけがなくて読めていなかったのですが、海外の有名な作家さん、たとえばヘミングウェイをようやく読むことができました。中学生くらいの時って、日本の作家さんを国語の授業で覚えるじゃないですか。当時は、この作品を書いたのはこの人と暗記していたけど、よくよく考えたら教科書に載っている『羅生門』に触れることはあっても、有名だけどタイトルしか知らない作品もたくさんありますよね。最近は、そういう本を読みたいと思って読んでいます。ヘミングウェイの『老人と海』は、最近読んで心地よかったです。

■憧れのフィンランドでの撮影は、“素の表情”が満載!

――先ほども少し触れましたが、村上春樹さんの『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』などがきっかけで、フィンランドに憧れはじめたと聞きました。フィンランドには、どういった思い入れがあるのでしょうか?

高山 初めて「あ、この国に行きたい!」とピンポイントで思えたのが、フィンランドです。そもそものきっかけは、以前本屋さんでグラビア撮影をした時。「好きな本を手に取って」と言われて、表紙がかわいくて選んだのがフィンランドの雑貨がたくさん載っているガイドブックのような本でした。元々、ピンクとかパステルカラーとか、かわいらしい、女の子らしい家具とかが好きなので、「行ってみたい」とは思いつつ、遠いし、英語じゃないし、ハードルが高いなと感じて。一生に一度行けたらいいくらいに思っていました。

 そうしてフィンランドの魅力を知ってから、その時読んでいた村上春樹さんの『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』にフィンランドが出てきたり、母が好きな映画が、フィンランドが舞台の『かもめ食堂』だったり、ということがあって。私自身、雑貨だけじゃなく、フィンランドが関係する作品も全部好きだなと気づいたんです。

――そして、今回の『独白』の撮影でフィンランドに行けることになったということですね。

高山 実際に、写真集のお話をいただいて、フィンランドに行けると決まった時は嬉しくて! フィンランドのことをたくさん調べていたら、フィンランドのことが書かれている小説が意外と少ないことがわかって、その中でたまたま巡り合っていたというのが、運命だなと感じました。

――実際にフィンランドに行ってみて、いかがでした?

高山 思い描いていたパステルカラーの街並みは、ヘルシンキから1時間ほどの距離にあるポルヴォーという都市で、はじめに行ったヘルシンキは残念ながらパステルカラーではなかったのですが、「パステルカラーじゃないのに、なんでこんなにかわいい世界なんだろう…!」と驚いたんです。色のイメージは違ったけど、すべてに北欧らしさが出ていて、空は地球のどこでも同じはずなのに、それすらも「フィンランドだ」と思ったり(笑)。石畳の街を歩いた時やトラムを見た時もそう思いましたし、すべてに驚きました。

 あとは、「人柄」ですね。ネットの口コミでは、「フィンランドの人はみんなクールだ」と書いてありましたが、まったくそんなことはなくて。直接コミュニケーションを交わしているわけでもないのに、表情にも温かさがにじみ出ていましたね。

 今はインターネットで何でも調べられる便利な世の中で、便利なものにすがってしまいがちですが、実際に行ってみないとわからないこともあると、フィンランドの街並みを見てあらためて思いました。

――その「人柄のよさ」は、『独白』の老夫婦や子どもとのカットからも伝わりますね。

高山 そうなんです! 日本でもついやってしまうのですが、かわいい子どもたちを見ると手を振りたくなるんです。シャイな子はなかなか目を合わせてくれないこともありますが、フィンランドの子どもたちはみんなが見てくれて、なかには手を振り返してくれる子もいて本当に癒されました。

 トラムの運転手さんも、目を合わせてくれたり、手を振ってくれたり、微笑んでくれたり、みなさんがそうしてくださって、とにかく温かかったです。

――ほかに印象に残っている出来事はありますか?

高山 フィンランド全体の人口が、東京都よりも少ないということを現地で知ったのですが、それがすごく心地よくて、過ごしやすかったです。撮影の時がちょうど美術館の無料開放デーで、たくさんの人が来るじゃないですか。ちょっと時間が空いたので美術館に行ってみたら、そのたくさんの人がいる美術館でもすごく居心地がよくて、平気で歩けますし、展示物もゆっくり見られますし、だけど活気にあふれている感じがあって、すごく好きだなと。

 あとは、時間がゆっくりしているというか、せかせかしていないところも印象的でしたね。ホテルから外を眺めていて驚いたのが、信号が点滅した時点でみんなの足が止まるところ。日本だと、青信号が点滅すると走る人がいるじゃないですか。それがフィンランドではひとりもいなかったんです。それを見て感動しましたし、フィンランドに来られてよかったと思いました。

――憧れの地での撮影ということもあってか、ご自身がフィルムカメラで撮った写真をプリントしたしおり(全4種)やコメント入りのオフショット冊子が付いてくるなど、高山さんの思い入れも強いように感じます。

高山 一生のうちに何度もできる経験ではないので、せっかくならいいものを作りたいと思って。1冊目の写真集は、まわりの方々にたくさんのことを決めていただいたことで素敵な作品に仕上がりました。しかし今回は自分で作りたいというよりは、まわりのみなさんのお力を借りて、自分の意見も言わせていただきながら素敵なものを作ることができたらと思ったんです。

 驚いたのが、“こういうシチュエーションでこういうカットを撮ります”とか“こういう表情をしてください”といった指示が一切なかったんです。これまでたくさんのカメラマンさんとお仕事をさせていただいて、みなさんの写真の腕に助けられていた部分もありました。だけど今回は、角度とかどんな表情をしようとか決めていたのに、そのタイミングでシャッターを切られることはほとんどなくて(笑)。「あれ、なんで押さないんだろう」と思った瞬間を撮られることもあったので、素の表情になっていると思います。

――ファースト写真集『高山一実写真集 恋かもしれない』よりも表情がやわらかくて、自然だと思いました。

高山 後半に笑っているカットがあるんですけど、みんなで湖を見ていて、すごくきれいで。寒いはずなのに、気づいたら編集者さんが水の中にいらっしゃったんですよ(笑)。それがすごく面白くて。笑おうと思って笑った写真はないはずなのに、写真集を見たら笑っているカットが多くなったのは、あの時は本当に楽しかったんだと一冊を通して見てから思い出しました。

――ちなみに、メンバーのみなさんには見せたりしたんですか?

高山 齋藤飛鳥ちゃんが、完成したら見たいとずっと言ってくれていたのですが、発売日前はライブなどで忙しくてバタバタしていて、まだ見てもらってないんです。

 ただ、ライブの確認作業の前にできあがった一冊を自分で見ていて、机に置いていたら、ちょっと目を離した隙に山崎怜奈ちゃんが隠れてずっと読んでいて(笑)。小さな声で「このカット好きです」とか言ってくれたのが嬉しかったです!

 あと、表紙の写真を決める時にいくつか候補があって、私が7年間一緒にやってきて、「この方に任せたら間違いない」という方にお見せしました!

――どなたですか…?

高山 この前卒業した、川後陽菜ちゃんです。乃木坂46の中でプロデュース能力が高くて、川後Pと呼ばれていたので。川後Pに「どれがいい?」と聞いたら、「Aはなんとか、Bはなんとか、Cはなんとかだけど一番顔がいいのはこれ」と適切なアドバイスをくれて、表紙選びの参考にしました。

――川後Pにお手伝いいただいた表紙はもちろんお気に入りだと思うのですが、表紙以外でお気に入りカットはありますか?

高山 全部お気に入りですけど、ヘルシンキ大学の図書館で撮影したカットは好きです。本に挟まれそうになるというのは、普通だったら怖いのかもしれないけど、本に挟まれて死ぬなら幸せだなと思いました。特に笑っているカットはお気に入りです。


『独白』より

 あとは、トラムの中でのカットも気に入っています。トラムに乗って、こんなにも表情を作らなくていいのかと思うくらいただただ街並みを眺めている写真で、「ここがフィンランドの住宅街かな」とか考えている最中の表情を収めてもらいました。

――クシャッとした笑顔の写真もある意味写真集らしくなくて、「テレビで見かけるあの笑顔だ」という気がして素敵だなと思いました。

高山 自分ではビックリしたんですよね。自分が普段写真を撮られる時の表情ってなんとなくできてしまっているし、テレビでしゃべる自分はなかなか見ないので。なんて言うのかな…昔から自分がしゃべっている姿は好きになれなくて、崩れた表情の自分から目を背けていたんですけれども、『独白』では、こんなに表情のレパートリーがあるんだ自分、みたいな。いい意味でそう思わせてもらったし、全部幸せそうな写真になったと思います。

『トラペジウム』を書いて思ったのは、文章は2、3年経ってから読み返すとなんか恥ずかしい気持ちになるということ。この時の自分はこんなこと思っていたんだとか。でも、写真だと自分の人生の中でアイドルという職業に就いていた時がきっと幸せだったと思えるんだろうなと。何年後、何十年後かにこの『独白』を見て、本当に嬉しくなるんじゃないかと思うんです。恥ずかしさよりも、嬉しさしか出てこないと思います。

――『トラペジウム』が20万部の大ヒット、満足のいく写真集が完成して、ますます勢いに乗る高山さんが、今後やりたいことはありますか?

高山 正直、今回の『独白』は、人生において、最後でもいいと思えるような作品に仕上がったので、写真集は十分かなって思っています。小説は、「これからも書くんですか?」「次回作も読みたいです」と、たくさんの声をいただいているので、そのたびに書きたい気持ちは膨らんでいます。

 でも、今一番やりたいことは、アイドルとしてステージ上での姿を磨くこと。ステージ上の自分の姿を映像で見返すと、粗が目立っているので、今回の写真集のように「よし、もう満足!」と思えるくらいの姿を今年一年、目指したいです。


取材・文=明日陽樹 撮影=花村謙太朗

■『高山一実写真集 独白』

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