目標は歌手への楽曲提供! 羽田圭介が新ラジオ番組で作曲家を目指すと宣言!

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公開日:2019/3/25

 又吉直樹との芥川賞同時受賞後は、テレビ番組への出演も急増。俳優としてのドラマ出演、YouTubeチャンネルの開設など、作家の枠を超えた活動を続けてきた羽田圭介。4月1日から始まるTBSラジオの新番組『ACTION』では、木曜日パーソナリティーとしてのレギュラー出演が決定した。実は熱心なラジオリスナーでもある羽田圭介のラジオとの関わりと、同番組で思い描く「作曲家を目指す野望」について話を聞いた。

■ハガキ職人は邪魔! くらいに思っていた

――過去のエッセイでは、伊集院光さんやさまぁ~ずさん、小堺一機さん、関根勤さんのことを「青春時代のラジオスター」と書かれていましたよね。学生時代は熱心にラジオを聞いていたんですか?

羽田 そうですね。中3のときにコサキン※1をたまたま耳にして、小堺(一機)さんがすごい下ネタを喋っているギャップに驚いて。そこから同じ深夜のUP’S※2の伊集院(光)さんや爆笑(問題)さんの番組を聞くようになりました。それがJUNKになり、『極楽とんぼの吠え魂』とかも始まって、面白いなーという感じでずっと聞いてきた感じですね。

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※1『コサキンDEワァオ!』
1981年から2009年までTBSラジオで放送された小堺一機と関根勤のラジオ番組。

※2『UP’S~Ultra Performer’S radio~』
1995年から2000年まで、TBSラジオで月~金曜に放送されていた深夜のラジオ番組ゾーン。同時間帯を含めた深夜枠は現在の『JUNK』に引き継がれている。

TBSラジオ『コサキンDEワァオ!』の大ファンの羽田さん。なお文藝賞を受賞した17歳のデビュー作『黒冷水』の書き出しは「なにが出るかな、なにが出るかな。コサカイさん風にはしゃいでしまう」だった。

――深夜ラジオのどんなところにハマったんですか?

羽田 リスナーとのあうんの呼吸ですね。何回か聞き続けるうちに、その面白さが分かってくる感じは、テレビにはない感覚でした。

――投稿もしていたんですか?

羽田 全然です。僕は「出しゃばるハガキ職人は邪魔!」くらいに思っていたので。

――そうなんですか。「パーソナリティーの話をもっと聞きたい」というか。

羽田 パーソナリティーが喋りそうなことの延長線上に、いい感じで投稿してくれる人はいいんですよ。何のネタもなく話し続けるのも限界がありますから。でも、「俺のハガキ読め!」みたいな出しゃばりな投稿とか、「フリートークが長すぎてコーナーの時間がない」と怒るようなハガキ職人は本末転倒だろうと。そこは中学生の頃からずっと思っていますね。

――なるほど(笑)。今はどんな番組を聞いていますか?

羽田 JUNKを中心に、radikoのタイムフリーや録音で好きな番組を聞いています。一時期はTBSラジオの全時間帯に聞きたい番組があって、「何だか聞くのが忙しいな」という感じでしたが、最近はそれも落ち着いて、また深夜しか聞かなくなりました。

■喋りたいことがない人だと見抜かれていると思っていた

――TBSラジオのリスナーとして、今回のレギュラー出演の話は嬉しかったのではないでしょうか。

羽田 正直、意外だったんですよ。昔から聞いているからよく分かるんですが、TBSラジオって「何かを主体的に喋りたい人がパーソナリティーになるラジオ局」だと思っていて。宇多丸さん(RHYMESTER)とか、喋りたいことが沢山あるのが伝わってくる人ばかりじゃないですか。ラジオの世界でずっと人気で、長く番組が続いている人も多いですし。僕はTBSラジオにはゲストでもあまり呼ばれていなかったので、「喋りたいことがない人だと見抜かれているんだな」と思っていました。

――以前に「テレビで話すことは二軍、三軍のネタだ」と仰ってましたね。

羽田 書きたいことはまず小説で書いて、そうじゃない場合はエッセイで書いちゃうので、しゃべってまで表現したいことはないんですよ。

――一方でテレビ出演については、自分がしたことがない体験ができて、それが小説のネタにもなるとも仰っていました。

羽田 そうですね。今回のラジオ番組も、ゲストの人と話すことが取材にもなるので、それを兼ねて仕事にできればと思っています。あと、ちゃんとした支持者層を作りたい思いもあって。テレビに出演すると、僕のことを認知してくれる人は増えるんですが、本の購買に結びつくことは少ないんです。テレビはマスに対して情報を届けるものなので、ラジオなら細くても太いパイプを作れるのかな、と思っています。

――それはリスナーとの距離の近いラジオならではの魅力かもしれませんね。

昨年はYouTubeの公式チャンネルも開設し、自作の朗読のほかポータブル高圧洗浄機のレビューなども投稿。「編集が大変なので手伝ってくれる人が欲しいです」

■「何もせずに33歳になった」と昨日も憂鬱になっていました

――『ACTION』について「こんな番組にしたい」というビジョンはありますか?

羽田 リスナーが何かを能動的にしたくなる番組にしたいですね。僕もケータイのTo doリストに色々なことが溜まっていますし、小さなことから大きなことまで「やらなきゃ」ということが沢山あるんです。それを始めるきっかけをこの番組で作りたいし、そんなパーソナリティーの姿を伝えることで、リスナーの方々も新しいことに踏み出してもらえたら嬉しいです。

――羽田さんは若い頃に自転車に本格的にハマったり、大人になってもピアノを習ったりと、やりたいことには積極的に挑戦してきた方……という印象なんですが。

羽田 まだまだですね。昨日も「自分は何もしないまま33歳になっちゃったな」と憂鬱になっていました。真剣味のない趣味がいくら増えてもしょうがないし、やることは全部商業ベースに乗せられるようにしたい欲があって。ある意味、貧乏くさい性格なんです。

――具体的にこの番組でどんなことに挑戦したいですか?

羽田 今は作曲教室に通っているので、曲を作れるようになりたいですね。12月から通いはじめて、レッスンは月2回だけなので、まだ全然なレベルですが。

――羽田さんはYouTubeチャンネルを昨年始められたので、そこで流す音楽を作る感じですか?

羽田 いや、ちゃんとJASRACから印税が入る楽曲提供をしたいです。

――そうなんですか! 安易な発想だと、小説家さんなので作詞をしたほうが早道だと思いますが……。

羽田 小説家が言葉を扱う仕事をするって、当たり前すぎるじゃないですか。歌詞提供は僕もデーモン閣下にしたことがありますし、きちんと音楽理論を学んで、文章とは全く違う表現の技法を手に入れて、商業ベースに乗るレベルまでいきたいです。プロの歌手に曲を提供したいですし、R&Bが好きなのでゴリゴリのR&Bを作るのが目標です。

――夢は大きいですね! 番組では羽田さんの作曲能力が成長していく過程もレポートしていくわけですね。

羽田 そうですね。最初は本当にしょぼいと思いますよ。昨日の教室の宿題が「できれば転調も使い、5小節のメロディーとコードをドラム、ベース入りで作れ」というものだったので、すごく牧歌的な曲しか作れないはずです。最初は笑ってた人たちを、「30代でもここまで成長できるんだ!」と感動させられたらいいなと思っています。

過去にはピアノ教室にも通っており、ギターの経験もあり。「もう忘れてしまったので作曲はゼロからのスタートです」

■番組のゲストコーナーでは花田優一さんを呼びたい

――番組では毎週ゲストを呼ぶコーナーがありますが、候補として考えている人はいますか?

羽田 花田優一さんですね。

――それはまたなぜ(笑)。

羽田 僕は靴のサイズが30センチで、大きい靴の専門店で買い物をしていることもあり、前から靴作りに興味があって。職人さんにじっくり話を聞いてみたかったんです。それで靴職人でぱっと名前が浮かぶ人は、花田優一さんだなと。

――確かに今いちばん有名な靴職人さんかもしれませんね。『ACTION』のほかの曜日では脚本家の宮藤官九郎さんやミュージシャンの尾崎世界観さんなど、違うジャンルの方がパーソナリティーを務めています。羽田さんはやはり小説家として、作家さんをゲストに呼ぶことが多くなりそうですか?

羽田 それは全く考えてないですね。知っている業界のことを聞いても仕方ないし、本当に取材のためにラジオを利用したいと思っていますから。あと、自分が気になっている人とか、小説のネタとして本当に会いたい職業の人とかを呼んだほうが、「この人は本当に興味があって聞いているんだな」という感じが出ると思いますし、ラジオではその熱が伝わると思います。

「私利私欲のために番組を使いたい」と言いつつ、どうすればパーソナリティーの熱がリスナーに伝わるのかもしっかり考えていた羽田さん

取材・文=古澤誠一郎 撮影=井上修二

■■■プロフィール
羽田圭介

1985年、東京都生まれ。2003年、明治大学附属明治高校在学中の17歳時、『黒冷水』で河出書房新社主催第40回文藝賞を受賞。2015年7月に『スクラップ・アンド・ビルド』で第153回芥川賞を受賞。テレビ等でも多角的に活躍中。4月12日に新刊『ポルシェ太郎』(河出書房新社)が発売。

■■■番組情報
TBSラジオ『ACTION』 4月1日スタート
月曜~金曜、15:30~17:30放送

宮藤官九郎(月曜日)、クリープハイプの尾崎世界観(火曜日)、Creepy NutsのDJ松永(水曜日)、羽田圭介(木曜日)、武田砂鉄(金曜日)と、様々な分野で活躍するパーソナリティーが曜日替わりで出演。日々感じていること、体験したことなど、日常の「ACTION」を一癖も二癖もある切り口で語っていく新番組。リスナーや企業を巻き込みながら、様々な野望を実現する番組発のプロジェクトも積極的に実行予定。