「平均睡眠3時間」「手術室は極寒」医師&ナースが激白! 医療コミックエッセイ

アニメ・マンガ

2018/12/8

 医療漫画のコミックエッセイは、医師やナースなど医療関係者が直面する本当のリアルを垣間見ることができる。本稿ではそんな医療コミックエッセイを5作選んだ。いずれも過酷な医療現場や、重い現実などを、どこかおかしみのある作風で描き、万人に読みやすいものばかり。現場で彼らが確かに感じただろうことを知ることができるので読んでみてもらいたい。

■腐女医が描く、医療現場のぞき見コミックエッセイ

 いま最も有名な医療コミックエッセイは『腐女医の医者道!』(さーたり/KADOKAWA・メディアファクトリー)だろう。こちらは現役外科医・医学博士の大人気ブロガーが描く、お医者さんの実録エッセイである。激務の毎日の中でさーたり氏が語るお医者さんの世界は、「実はオタクだらけの医局」「知られざるドクターヘリの裏事情」など、その内容にはパワーワードが並ぶ。

 また平均睡眠3時間、立ったままで3分ごはん、スキンケア皆無…女性には過酷すぎる職場環境の中で、結婚、出産、育児を女医がどのように行っているのかも知ることができる。医療漫画を好きな人、医師を目指す人、女医の暮らしや外科医療に興味がある人などに、幅広くおすすめしたい。また第2弾となる『腐女医の医者道! 外科医でオタクで、3人子育て大変だ!編』も出版されている。

■女子研修医のお仕事はキラキラとは真逆! 3食カップ麺でもへこたれない!

『まどか26歳、研修医やってます!』(水谷 緑/KADOKAWA・メディアファクトリー)は、一人前の医師へ成長していく女性が主人公の物語だ。

「手術ってなんかかっこいい!」その一念で医師を志した若月まどか。しかし現場は男だらけの激務な職場。3食カップラーメン、睡眠時間は4時間、手術室は極寒地獄、仕事に追われて恋愛に割くキャパはゼロ…。逆境にもへこたれずまどかは生命と真剣に向き合っていく。

 実在する研修医「まどか先生」に取材して描いたリアルなコミックエッセイ。作者の水谷氏といえば『じたばたナース』『精神科ナースになったわけ』など、医療コミックエッセイを得意としている。本作も現場の生の声やエピソードを、深刻になりすぎないほのぼのとした絵柄で描いている。

■元・看護師が語る産婦人科の光と陰…

 ドラマ化もされた『透明なゆりかご』(沖田×華/講談社)は、産婦人科で看護師だった作者本人のリアルエッセイである。沖田氏が実体験をもとに描く命の生まれる現場を描いている。

「リアルすぎて目を背けたくなる、でも読みたい」と絶賛されたその内容は、産科・婦人科医療の光と陰が描かれている。主人公の華は中絶の現場やその後処置などを体験して「産婦人科は命が生まれるだけの場所ではない」と知る。一時は辞めようとするが出産の現場に立ち会い、生まれてくる命の力強さに感動、仕事を続けていこうと思うのだった…。

 幸福な出産の裏側にあるDV、性虐待といった事例にも焦点をあてている作品。厳しい現実を知ることで、生まれる命の重さや大切さをより一層理解できるかもしれない。

■アラサーのナースが、人生と医療現場でじたばた奮闘する!

『じたばたナース 4年目看護師の奮闘日記』(水谷 緑/KADOKAWA・メディアファクトリー)は本格ナースコミックエッセイだ。作者は前述の『まどか26歳、研修医やってます!』 や『精神科ナースになったわけ』と同じ水谷氏。しっかりとした取材により、知られざる病院と医療現場の裏側や、アラサー女性としてのリアルな悩みが描かれている。

 主人公は4年目のナース、秋野海。後輩もでき、職場でも一人前扱いされるようになってきた。もちろん年齢も上がってきている。でもまだ失敗して怒られることもしばしば…。「私このまま看護師続けていていいのかな? 結婚は?」海は悩んでいたいがそんな暇はない。認知症患者さんの看護、暴れる患者さん、看取りの現場…。「死の描写が生々しくてグッときた」とネットで話題になったシリアスな表現も本作の見どころだ。

■医師&ナースは爆笑? 笑えない? 4コマに高度な医療ネタ満載!

 離島医療を描いた人気作品『Dr.コトー診療所』。その監修者が描いたのが『がんばれ!猫山先生』(茨木 保/日本医事新報社)だ。本作は医療ネタを正統派の4コマに詰め込んだゆるゆる医療コミック…なのだが、その内容はかなりハード。その8割が現実という医療ネタは、作者が現役開業医である茨木氏ならでは。医師やナース、医療従事者だと笑える。いや笑えないネタが続く。まさにフィクションの皮をかぶった医師エッセイなのだ。

 主人公の猫山先生は、勤務していた医局が不採算部門だったこともあり、なんだかんだあってクリニックを開業することになる。開業はすなわち起業のようなものだ。お金の計算や人事(雇用)面も自分で行わなくてはならないが、医師は当然ど素人。猫山先生は医療現場と病院経営の2つに振り回され、トホホな毎日を送る(だから病院には事務長という経営をとりしきるポストがある)。ひとくせある医師や看護師、そしてクリニック開業にかかわる奇抜なキャラクターたちが登場する。たとえ医療ネタが分からなくても大笑いできるだろう。

 現役医師やナースが自分で描いたリアルエッセイ、綿密な取材をもとに描いたセミドキュメント、医師自らが医療従事者しか笑えないようなネタを正統派4コマ漫画にした異色の作品など、いずれも医療現場のリアルが楽しめてしまうおすすめの5作品だ。

 なお医療従事者のエッセイやコラムは多く出版されているが、コミックエッセイはそれほど多くない。オタクを自称するさーたり氏のように、自分で漫画が描ける人は少ないのだろう。

 リアルとされる医療漫画は他にもあるが、実際にそこで働く人たちが考えていることや、病院内のライブ感などを知ることができるのは、医療現場を深堀りしているコミックエッセイならではだ。

文=古林恭