生死を分かつタイムリミット「4分」のドラマ——救命救急医療を描いたおすすめ漫画

アニメ・マンガ

2018/12/29

 突発的な交通事故や、突然発症した病気などに24時間対応する…ここではそんな医療の原点とも言える「救命救急医療」を描いた漫画を紹介する。ER(救急医療センター)やそこに従事する医師、救急救命士を描いた作品を選んでみた。

 登場する頼もしい医師たちが現実にいてくれたなら、自分の身に何が起きてもきっと大丈夫だと思えるかもしれない。

■常時困難&緊迫感MAX! 「王道」救急医療漫画

 北斗医大付属埼珠病院を舞台に描かれる救急医療漫画が『高度救命救急センター』(関崎俊三:画、樋口雅一:作/白泉社)だ。この埼珠病院救命救急部にひとりの外科医がやって来る。それが主人公、相馬彬だ。たまたま傷害事件の現場に居合わせた彬は、けが人とともに救急車に乗り込んだが、渋滞に巻き込まれてしまい…。

 文字通り緊急性が高く、ハイスピードな救命救急医療。「救急医療に限度なんてない」「初期医療を充実させればもっと救える」彬はこう言いながら命を救い続ける。生死ギリギリの状況で、救急医療に携わるキャラクターたちの挑戦が描かれる。作画はテレビドラマ化もされた『ああ探偵事務所』を描いた関崎氏だ。

■救急患者の元に向かう「移動する病院」の物語

『特攻ドクター』(紅林 直:漫画、藤森 龍:原案、丸田一人:監修、酒井 義:原作協力/集英社)は、車内に最新式の医療機器を備えた「高機動型ICU(集中治療室)」を中心に物語が展開する。メインキャラクターはこの「高機動型ICU」を操る謎の医療チーム。自称「ド天才」の心臓外科医、板倉をはじめ、ひとくせもふたくせもあるメンバーがそろっている。

 彼らは命を救うためなら手段は選ばない。救急車の無線を傍受し先回りをし、車を止めさせて患者を奪うようにして、心肺補助装置まで備えた「高機動型ICU」へ搬送。路上で手術まで行うのだ。そうして複数の病院で受け入れを拒否された意識不明の老人など、見殺しにされそうな“ワケあり”の人々を救っていく。

 本作のキャッチコピーはハイスピード痛快医療コミックとあり、時間との闘いである救急医療に、移動する「高機動型ICU」という要素がプラスされ、文字通り物語のスピード感が加速。重厚な医療漫画が多い中、エンターテイメント感が楽しめる作品になっている。とはいえ昭和大学心臓血管外科医の丸田一人氏が、しっかり監修。作品に奥行きを与えているのも見逃せない。また生き生きとしたキャラクターたちを描いているのは、『嬢王』で知られる紅林氏。全編“楽しめる”救急医療漫画だ。

■救急救命士が愛する者の「死の運命」に立ち向かう

 救命医療を舞台に「純愛」を描いたのが『4分間のマリーゴールド』(キリエ/小学館)である。タイトルにある「4分」とは、救急医療において生死を分かつタイムリミットだ。呼吸が停止してから心肺蘇生を行わなければ、助かる可能性は分刻みに低下する。生存確率は2分で90%、3分で75%と下がっていき4分では50%となるのだという…。

 主人公の花巻みことは救命士。この時間制限の中で死を防ぎ、命を救う。だが彼には変えられない運命の中で生きていた。彼は手を重ねた人の「死の運命」が視える「能力」があった。最愛の義姉・沙羅、彼女と手を重ねた時、視えたのは沙羅が27歳の誕生日に死ぬイメージ…。

 生きてほしい、その願いも空しく、一度彼が視えた死の運命は必ず現実になる。人の最後を知っていても助けられない。美しい義姉に恋をしていたみことは絶望の中で運命を変えられるのか。彼女の命はあと365日と迫る…。まさに涙が枯れるほど泣きたい、そんなあなたへおすすめしたい救急医療漫画である。

■求めしは命の修羅場! アシュラの異名をもつ凄腕女医とは

『Dr.アシュラ』(こしのりょう/日本文芸社)の作者、こしの氏と言えばドラマ化した『Ns’あおい』や、地域医療を描いた『町医者ジャンボ!!』などを世に送り出すなど、医療漫画作家として知られている。医療漫画を描き続けた氏が挑むのが、救命救急の最前線だ。

 主人公・杏野朱羅(あんのしゅら)は、命にかかわる修羅場を異常なまでに欲する、「アシュラ」の異名をもつ凄腕女医だ。彼女のポリシーは、軽症患者を患者とみなさず、重症患者にしか興味をもたないこと。自分の生きがいを感じるのは生と死の狭間にいる患者と接する時のみ。さらに組織のルールにもまったく従おうとしない。

 さまざまな問題を起こすものの、どんな時でも動じることなく我が道を突き進む朱羅に憧れを抱くのが研修医の薬師寺。ゴッドハンドと呼ばれる男・梵天。孤高の救命女医がさまざまな医師たちと出会い、衝突し、医療現場の現実に挑む物語だ。

■弔うだけじゃない! 仏の教えを説き、患者の命を救う救急「僧医」。

 最後に紹介するのが、変わり種の救急医療漫画『病室で念仏を唱えないでください』(こやす珠世/小学館)である。主人公は得度した「僧侶にして救急医」の松本照円。舞台となるER(救急医療センター)内で袈裟を着て走り回り、作品タイトルそのままにツッコまれる。「縁起が悪い!」「まだ生きてるよ!」…なんて物を投げられたりもする。彼のせいで、あおば台病院救命救急センターは「あおば台寺」とも呼ばれている。

 ただ本作はけっしてギャグやコメディジャンルの医療漫画ではない。救急医療ならではの切迫した治療シーンや、時には助けきれない患者や、残された家族のシリアスなドラマが描かれていく。

 照円は小学5年生の時に釣りに誘った幼馴染が川で溺れ死んだことから高校卒業後に得度して仏門に入った。そして彼の母親がガンで亡くなったのを切っ掛けに今度は医療の原点とも言うべき医学部へ進学、救命救急医となる。死を弔う僧侶でもあり命を救う医者、しかも死と生をわかつ最前線の救急医療に従事している、照円はそんな自分に葛藤し、悩み、成長していく。

 弔うだけではなく、患者が生きるために仏教の教えを説き、「僧医」は今日も患者たちと救急医療に向き合っていく。仏の教えは、よりよく生きるために役立つはず…そう願う坊主がいる救急病院、現実にあったらあなたはどう思うだろうか。

 本稿では、思いがけなく突然に発生する病気やけがを治療する救急医療を描いた漫画を紹介した。救急医療は生きること、命をつなぐことに時間制限がプラスされる。そのためひょっとすると、最もアツく、ドラマティックな医療現場なのかもしれない。そんな現場で、高度な技術と瞬時の判断を必要とするキャラクターたちの活躍を、ぜひ読んでみてほしい。

文=古林恭