「もしかして発達障害かも」大人になってから仕事や人間関係がつらくなった人におすすめの本5冊

暮らし

2019/9/28

 近年、メディアに取り上げられる機会が増え、世間的な認知度が高まってきた大人の発達障害。ネット記事やニュースをみて「もしかして、自分も…?」と不安に感じている人は多いのではないだろうか。

 発達障害とは、先天的な脳機能の発達のかたよりと、その人が過ごす環境や周囲の人とのかかわり合いのミスマッチから、生活上の困難が生じる障害のこと。なかには障害があっても、問題なく社会生活を送っている人もいるが、他人とのコミュニケーションが苦手・仕事上のミスが多いなどの傾向から、“生きづらさ”を感じている人は多いという。

「発達障害かも」という不安と、実際に生活上の困難を感じている場合は、早めに何らかの対処をしていくことが大切だ。そこで本稿では「大人の発達障害」に関する本を紹介する。生きづらさや不安解消に役立ててほしい。

「大人の発達障害かも」と感じたらはじめに読む本

『もしかして私、大人の発達障害かもしれない!?』(田中康雄/すばる舎)

 発達障害があっても、子どもの頃はまわりから“ちょっと変わった子”と思われ、本人自身も苦手なことがあるという認識で済んでいたものが、大人になってから“生きづらさ”を抱くケースは多いという。

『もしかして私、大人の発達障害かもしれない!?』(田中康雄/すばる舎)は、大人の発達障害に関する基本的な知識が得られる1冊だ。

本書によると、

●忘れ物が多い
●仕事の期限が守れない
●落ち着きがない
●空気が読めない

など、生活上の困りごとの裏には本人の努力不足ではなく、生まれながらもっている発達のアンバランスさ(=発達障害)が関係していることもある。

 本書では「もしかしたら発達障害かもしれない」と感じている人に対して、ただやみくもに医療機関での診断を促すのではなく、“発達障害とどう付き合っていけばいいか”の具体的な対応方法が紹介されている。

 ダメなところを直すのではなく、本人が生きやすくなることが大切だという本書を読めば、自分の特性と向き合うきっかけとなってくれるはずだ。

大人の注意欠陥・多動性障害(ADHD)をわかりやすく解説する入門書

『もしかして、私、大人のADHD? 認知行動療法で「生きづらさ」を解決する』(中島美鈴/光文社)

『もしかして、私、大人のADHD? 認知行動療法で「生きづらさ」を解決する』(中島美鈴/光文社)は、大人のADHDについて症状、原因、診断と治療、対処法、周囲の人ができることなどを、わかりやすく解説している1冊だ。

 著者は認知行動療法を専門とし、大人のADHD問題の解決に取り組む臨床心理士の中島美鈴氏。認知行動療法とは、その人の認知(物のとらえ方、考え方)と行動を整えていくことで生活上のさまざまな問題ごと・ストレスを改善していく心理療法のひとつだ。

 これまで注意欠陥・多動性障害(ADHD)は「教室でじっとしていられない」、「集中力が続かない」といった子ども特有のものと考えられてきた。しかし2000年頃から、大人のADHDもあることが広く知られるようになり、本人が社会に出てから自覚するケースが増えてきたという。

 本書内容より、ADHD傾向の有無を簡易的に判断するチェックリストを一部紹介する。

●失くし物や忘れ物が多い
●会議などで貧乏ゆすりなどをしてしまう
●思いつきで行動して後悔することがある

 これはADHDがもつ大きな特徴3つ(不注意・多動性・衝動性)を具体的に表したものだ。あくまで傾向をチェックするものであり、すべてに当てはまったとしても必ずしもADHDというわけではない。詳しい診断や治療法については本書で確認してほしい。

 本書では最新の研究成果を交えながら、大人のADHD問題の解決の助けとなる認知行動療法が紹介されている。実際のモデルケースが多く提示されているので、大人のADHDについてわかりやすく理解が深められるだろう。

職場でのホウレンソウが苦手…働き始めて気づく大人の自閉スペクトラム症

『職場の発達障害 自閉スペクトラム症編』(太田晴久:監修/講談社)

 発達障害かもという不安は、職場でうまくいかないことがきっかけのことも多いだろう。『職場の発達障害 自閉スペクトラム症編』(太田晴久:監修/講談社)は、自閉スペクトラム症(ASD)の人たちに職場での心得や対策を紹介する1冊だ。

 自閉スペクトラム症(ASD)とは、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、読み書きなどに困難が生じる学習障害(LD)などとならぶ発達障害のこと。自閉症やアスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害などの総称であり、ほぼ同じ概念である広汎性発達障害(PDD)と呼ばれることもある。

 ASDのおもな特性は「対人関係やコミュニケーションが苦手」、「興味の偏りやこだわりの強さ」であり、働きだしてから困難に直面して気づく人も多いという。大人の発達障害のなかでも近年、受診率が増えているのがASDとのことだ。

 本書によると、ASDの人たちは仕事ができないのではなく、症状のせいでこなしづらいという現状がある。たとえば口頭の指示が伝わりづらくても、文字や図など視覚的な情報は比較的に理解しやすいなど、少しアプローチを変えるだけでも問題が改善されるケースは多い。

 本書ではASDの人が知っておきたい会話の仕方やコミュニケーションの取り方、仕事の進め方、雇用サイドへのアドバイスなどの具体的な対策が紹介されている。職場での困りごと解決への糸口を探してみてほしい。

「ちょっとAS(自閉スペクトラム)」「ちょっとADH(注意欠如・多動)」発達障害の特徴は重複することも

『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』(本田秀夫/SBクリエイティブ)

 発達障害の症状は人によってさまざまだ。『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』(本田秀夫/SBクリエイティブ)によると、発達障害のいくつかが重複して現れ、複雑な症状をみせることもある。

 20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事してきた精神科医の著者、本田秀夫氏によると、いくつかの発達障害が重複している例はかなり多いという。むしろ発達障害が重複することで症状の現れ方が複雑化し、周囲から十分に理解されないことで一層悩んでしまうケースは少なくないのだ。

 発達障害を画一的にとらえるのではなく、その人自身の特性として見極めることが何より大切である。本書には「ホウレンソウが苦手な成人男性(新入社員)のケース」など具体的な例も盛り込まれているので、自分の傾向に近いモデルが見つけられるかもしれない。

 本書によると発達障害は自分が抱える特性を「理解」したうえで、生きやすくするために「環境調整」することが大切だという。自分の特性を理解したあとの発達障害へのアプローチ方法についても深く掘り下げられているので、さらに一歩踏み込んだ知識が得られるはずだ。

どう対応する? 発達障害の人が仕事で困らないためのコミュニケーション・マナー術

『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が会社の人間関係で困らないための本』(對馬陽一郎:著、安尾真美:著、林 寧哲:監修/翔泳社)

『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が会社の人間関係で困らないための本』(對馬陽一郎:著、安尾真美:著、林 寧哲:監修/翔泳社)は、「ホウレンソウがうまくできない」、「同僚や上司とどう仲を深めていいか分からない」などの発達障害の人が職場でぶつかりやすい悩みについて解決法が紹介されている1冊だ。

 他者とのコミュニケーションを苦手とする発達障害の人は、ビジネス場面で課題にぶつかることが多くなる。大人になり、社会に出てから発達障害の症状に苦しめられる人は多く、抑うつなどメンタル的な悩み(二次障害)で病院を受診し、発達障害だったと分かる場合もあるという。

 コミュニケーションは人や場面によって変わってくるので、「正解」というものはない。しかしビジネスシーンであれば、ある程度「正解」の範囲をしぼることはできるはずだ。本書では発達障害のある大人が直面しがちな職場での“あるある”な悩みに対して、実際に発達障害支援の場で生み出された解決法が添えられている。

 人が話している途中で質問を挟んだり、自分の思い込みで動いてしまったりして態度が悪いと勘違いされやすいADHDの人は、相づちをうつ、メモをとるなど指示待ちの作法で自分の印象をよくする。報告しようとすると多弁もしくは言葉足らずになりがちなアスペルガー症候群の人は、あらかじめフォーマットを整えたホウレンソウシートを活用する、などの具体的な解決法が盛り込まれている。職場での生きづらさ解消に、ぜひ役立ててほしい。

「発達障害かも…」という不安から一歩踏み出す勇気を

 職場や日常生活で生きづらさを感じやすい大人の発達障害。もちろん自分の個性として上手に向き合っている人もいるが、つらい状況に置かれている人も少なくないだろう。

「発達障害かも」という不安がある場合は、自己理解のため専門書を読んでみることはもちろん、無料で利用できる発達障害者支援センターや相談支援事業所などの行政サービスに頼るのもひとつの手だ。

 働き方に不安があるなら、発達障害の人の働き方を実践的に指導するジョブコーチという専門家もいる。発達障害のため思うように働けず、経済的な不安がある場合は、金銭的な負担を減らせる制度やサービスを受けられることもある。専門機関で相談することで、日々の不安は少しずつ取り除いていけるのだ。

 一方で、これまで発達障害は子ども特有のものと思われてきたため、じつは大人の症状をみられる医師は少ない。大人の発達障害について診療可能な病院には限りがあるのだ。そのため、専門外来のある病院を探すのも行政サービスで情報収集をおこなうといいだろう。

「病院に抵抗がある」という人は、必ずしも診断を受ける必要はないということを知っておいてほしい。発達障害は治すことではなく、本人が生きやすい環境を整えることが大切なのだ。発達障害の治療は環境調整やカウンセリング、SST(ソーシャルスキルトレーニング)などの心理・社会的アプローチがほとんど。症状にもよるが、はじめから薬物療法がおこなわれることは少ないという。

 発達障害は治すことは難しくても、自分の特性として理解し、生きやすい環境をつくっていくことは十分できる。そのためにもまず、ひとりきりで抱え込んでしまう現状から一歩、踏み出していこう。

文=ひがしあや