映画公開で改めて注目! 『深夜食堂』の絶品メニューを再現できるレシピ

食・料理

公開日:2015/2/3

 営業時間は夜12時から朝7時ごろまで−−。ネオン街の路地裏でマスターが一人で切り盛りする食堂を舞台にした『深夜食堂』が映画化された。原作は、安倍夜郎氏。「ビッグコミックオリジナル」に連載中の大ヒット漫画だ。TVドラマ化もされ、深夜枠ながらこちらも人気を博していたが、このたび待望の映画化が実現した。

 豚汁、お茶漬け、ポテトサラダ、鶏そぼろご飯、カツ丼、ピーマンの肉詰め……。『深夜食堂の料理帖』(小学館)に載っているレシピの数々だ。物語の舞台である「深夜食堂」のメニューは、酒と豚汁定食だけ。つまり、それ以外はすべて裏メニュー。「できるもんなら何でも作るよ」が口癖のマスターが、客のリクエストに応じて作ってくれる。

 マスターが作ったとされる本書のレシピは、大体が誰もが食べたことのあるものばかり。特別なものはない。それが胃と心をつかんで離さない。間違いなくおいしそうなのだ。それもそのはずで、レシピを手がけたのは、映画『かもめ食堂』『南極料理人』NHKテレビ小説『ごちそうさん』などのフードスタイリングで知られる飯島奈美さん。「毎日おいしく食べられるごはん、家庭料理のプロ」を目指したという飯島さんのレシピは、胃も心もほっこり幸せにしてくれる。

 安倍氏と飯島さんのコラボ本である本書。いくつかレシピをテーマにした安倍氏の悲喜こもごものストーリーも差し込まれていて、じんわり切なく温かい“スパイス”も効いている。自分のリクエストした好物を食べる人にとって、人間模様や思い出は、何よりの“スパイス”。それを察するマスターの絶妙な距離感は、さらに五感を刺激する。

 とはいえ、なじみ深い料理を絶品メニューに引き上げているのは、飯島さんの絶妙なアレンジに他ならない。中でも、レシピの頁に、スパイス的要素として小さく書かれている“ポイント”を見逃してはいけない。控えめな文字ながら「絶対においしいに違いない」小ワザが詰まっているのだ。

 たとえば、トマト卵いため。ポイントは、「トマトを先に炒めて水分をとばすと味が濃くなる」「十分に熱した油のたまっているところに卵を流し入れる」「強火で手早く」とのこと。また、あさりの酒蒸しは、「残ったらご飯にかける設定」なので、「少しバターを落としてご飯にかける」「残った汁にごはんを入れて煮てリゾット風にする」とオススメする。実際のところ、これがお酒にもご飯にもたまらなく合う。

 特別に難しい料理はひとつもない。「深夜食堂」のマスターのように食べる人の気持ちを思いやり、飯島さんの言う絶妙なポイントを押さえて、これらのレシピを試してみてはいかが。ほんの少しだけ手間をかけたり工夫したりするだけだ。いつものレシピがかけがえのない味になって、食卓に新しい思い出が紡がれるはずだ。「おいしいね」と食べるものは、何よりも特別な料理なのだから。

文=松山ようこ