日本人はなぜ“海外からの評価”を気にするのか? 【サンドラ・ヘフェリンさんインタビュー後編】

社会

更新日:2015/3/4

――日本人が他の国からどう見られているか気になる理由ってなんでしょう?

 私も社会学者ではないので想像でしか話せないですが、気になる理由はいろいろあると思うんですよ。

 1つはやはり島国だから。ヨーロッパのように陸続きで「週末はフランスに行ってきたよ」「オランダに行ってきたよ」というのができないから。外国との行き来がすぐできるわけじゃない。飛行機に乗らなきゃいけない。

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 もう1つは移民が少ないから。外国人との交流、接点があまりないからだと思います。普段から接点があれば外国人からどういう風に思われているか、気になるまでもない。その2つが、大きいのかなと。あまり、観光以外で海外との行き来や交流がない。もちろん外国の人とビジネスをすることはありますけど、プライベートの人間対人間という意味での「外国人との付き合い」はまだまだ少ないのではないでしょうか。

 あとは、後ろ向きな意見ですが、鎖国していたから気になるというのもあると思います。日本人と外国人を別として考える。外国人がいて、日本人がいる。という考えがある。ドイツやフランスの人は、人種がいろいろ混ざり合っていて、おじいちゃんがイタリア人、おばあちゃんがギリシャ人というのが普通。外国人とドイツ人という風に、今更、区別しない。なので、外国人に私たちがどう見られているかというのは、あんまり気にならない。いわゆる「人種的に生粋なドイツ人」ってほとんどいないですしね。

――他の国っていう概念が日本のほうが強いかもしれないですね。

 多分。日本人がいて、外国人がいる。だから、外国人から日本がどう見えるかが気になる。ドイツでは外国人が多いんですけど、彼らは普通にドイツの学校に通って、ドイツの会社で就職しているから、どういう風に見えるかと言っても、結局、我々ドイツ人と一緒なんじゃないの? みたいな感覚ですね。

――ドイツに限らず、ヨーロッパ圏は全て同じ感覚ですか?

 大体似ていますね。ドイツにしても、フランスにしても、スウェーデンにしても、オランダにしても、移民の数は多いです。今だってシリアの難民がスウェーデンにきています。そんな中で、シリア人はスウェーデン人のことどう思っているのか? という、番組は作らない。今、スウェーデンに来ているシリア人はすごく深刻な理由で来てるわけです。だから、そういう番組は作れないと思います。

 そして、イギリスやフランスなどは植民地を多く持っていた。植民地の歴史は複雑ですし、今さら「アフリカの人はフランス人をどう思ってるの?」「アフリカの人はイギリスのことをどう思ってるの?」なんてノー天気な番組は作れない。

 逆に日本で「外国人は日本のことをどう思っているの?」という番組作りが成り立つのはある意味平和だからかもしれませんね。

 日本は、そういうネガティブな歴史が少ない。だからこそ、日本のことをどう思っている? という企画ができるのだと思います。日本は平和だから作れるんですね。

 ところで、聞いたところによると、フィンランドにはあるみたいなんです。外国人に聞いて、フィンランドのご飯、どう思いますか? というような番組。フィンランドは日本と似ていて、外国人が少なくて小さい国だからなのでしょう。あとは、平和だからというのもあります。

――日本人はどう見られているか気になると同時に、「日本と海外を比べて海外のほうがいいよね」と羨ましがるために海外文化を気にする人がいるようにも思えます。

 ドイツでも他の国を好きになって、ドイツを出る人って実は多いんです。

 ドイツが嫌になって、オーストラリアに移民したり、自分の好きな国にのめりこむ人は多いんです。だけど、ドイツにいながら海外のほうがいいよねと言っている人はあまりいないかもしれないですね。海外のほうがいいよねって思ったら、すぐにその国に行ってしまいます。一方で日本人は、日本にいながら海外のほうがいいよねという人は多い気がします。

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