一番最初にガツンときたのは鬼兄弟!【対談】岸本斉史×堀越耕平

アニメ・マンガ

2015/4/8

 ついに完結を迎えた『NARUTO―ナルト―』とその連載終了と時を同じくして、少年マンガシーンのトップに躍り出た『僕のヒーローアカデミア』。この2作には多くの共通点から『ジャンプ』のDNAが脈々と受け継がれているように感じられてならない。『ダ・ヴィンチ』5月号の『NARUTO』特集では、そんな2作の著者による対談が実現した。

――『NARUTO』の最終話が掲載された『ジャンプ』の巻末で、堀越さんはこんなコメントを出されていました。「NARUTOは僕の青春そのものです。最高の少年漫画を有難う御座いました!」。ぜひ“青春”の中身をお伺いしたいです。

【堀越】 『ジャンプ』で『NARUTO』の連載が始まってからは、学校の友達と毎週のように話をしていました。「今週、あそこヤバかったよね!」みたいな。とにかくナルトのことを追いかけて、ナルトが喜んだり悲しんだりする気持ちを僕も体験していって……。あっ、僕が一番最初にガツンときたのは……。

【岸本】 そういう話ってあんまり聞けないから面白い(笑)。

【堀越】 タズナを護衛する任務の依頼が来た回で、霧隠れの中忍2人組が出てくるじゃないですか。

【岸本】 えーと、再不斬(ザブザ)と白(ハク)じゃなくて?

【堀越】 その前です。その前にちょっと出てくる鬼兄弟って覚えてますか。

【岸本】 おわ! 久しぶりに思い出しました! 描きましたね。「描きましたね」って言うのもヘンだけど(笑)。

【堀越】 そいつが出てきた時に、首が前後に2つくっついて体は1つで。ガスマスクをしてている姿が超かっこ良くて。

【岸本】 あれに食いついたの(笑)!?

【堀越】 はい(笑)。鬼兄弟のデザインもそうなんですけど、その回の演出もすごくて。「たいしたことない任務だろう」みたいなことを言ってたら急に出てきて、その回の最後はカカシ先生がバラバラになるって“引き”だったじゃないですか。しかも、あそこでナルトとサスケの差が明確に出る。戦いでビビるやつと、ガンガン行くやつと……。しびれました。

【岸本】 やっぱり見るところが違いますね。キャラが行動をはっきり示すところを見てるんだ。

【堀越】 絵的なすごさでいうと、鬼兄弟は手が武器になっていますよね。サスケはクナイを手に持って戦って、ナルトは自分の弱い気持ちを奮い立たせるために、手にクナイを刺して。そのへんのシーンをずっと見ているうちに、手の細かい表現が気になり出したんです。あれ他のマンガ家さんとは手の描き方が根本的に違うぞ、と。

【岸本】 そういえば、『僕のヒーローアカデミア』のコミックス2巻で「手を描くのが好きです」と書いてましたよね。

【堀越】 『NARUTO』のおかげで手を描くのが大好きになったんです。顔のアップとかでも、必要ないのにわざわざ手を入れたりしています。手は顔の次に感情が出ると思うんです。

【岸本】 僕もそう思いますね。手って強く握ったグーと軽く握ったグーでは、全然表情が違う。顔とおなじぐらい、気持ちが手で表現できる。なんか手をずうっと見てると、だんだん「かっこいい……」となってくるんですよねえ。「神様すげえ!」って。

【堀越】 僕まだその領域にはいけてないです。まだまだです(笑)。

――鬼兄弟で『NARUTO』に心をつかまれてからは、どんなふうに楽しまれていましたか?

【堀越】 やっぱり「中忍試験」は最高でした。キャラで一番好きなのが我愛羅(ガアラ)なんですけど、異質な存在だらけの中でも際立って異質で、何より群を抜いて強い。中学生くらいの時って強さでキャラの好き嫌いを分けるので。

【岸本】 我愛羅は頭一つ飛び出た強さにしたい、という思いはありましたね。「こいつと戦うのはヤバい」という怖さを出したかった。『僕のヒーローアカデミア』でも最近、氷と炎の半分ずつの、ヤバい感じの生徒が出てきたじゃないですか。

【堀越】 轟焦凍(とどろきしょうと)ですね。

【岸本】 父親と母親のドラマを、うまいこと絡めていってる。あのキャラは今後伸びるな、と思いましたね。「このキャラは伸びしろがありそう」とか「このキャラならしばらくやっていける気がする」という感覚を身につけるのは、週刊連載をするうえで結構大事。

【堀越】 岸本先生が『NARUTO』の中で、描いていくうちに「こいついいかも」と思って膨らませていったキャラクターは誰ですか?

【岸本】 それはやっぱり、リーかな。彼がどういう人間なのか、あんまり考えてなかったの。「忍術が使えない」って設定だけ決めて描いていったら、ガイとの師弟関係だとか、どんどん広がっていった。

【堀越】 リーも大好きです! 中忍試験でサクラを守るために現れたシーンは、今読んでも泣けます。

【岸本】 ぶっちゃけリーのデザインはちょっと問題ありましたけどね。

【堀越】 あのデザインだからいいと思います(笑)。忍術がまったく使えず、しかも三枚目のくせに超強い、というギャップが新鮮でした。僕もこれから『NARUTO』みたいに、脇のキャラをどんどん立たせていきたいんですけど……。

【岸本】 あんまりやると主人公がないがしろになっちゃうから、『ジャンプ』的にはやめなさいって周りに言われる?

【堀越】 そんな感じです(笑)。

【岸本】 読者ってやっぱりね、主人公が見たいんですよ。そこはブレちゃいけない。まあ、「この作品のタイトルは『NARUTO』じゃなくて『SASUKE』じゃないの?」ってツッコまれてた僕に言われても、説得力ないけどね(笑)。

岸本斉史 きしもと・まさし●1974年、岡山県生まれ。1996年、第132回2月期ホップ☆ステップ賞にて佳作を受賞し、デビュー。1999年から2014年11月まで『NARUTO –ナルト–』を『週刊少年ジャンプ』で連載、世界各国でテレビアニメ化され、空前の大ヒットとなった。

堀越耕平 ほりこし・こうへい●1986年、愛知県生まれ。2006年、第72回手塚賞佳作を受賞し、翌年デビュー。14年より『週刊少年ジャンプ』で『僕のヒーローアカデミア』を連載中。他の代表作は『逢魔ヶ刻動物園』『戦星のバルジ』など。

取材・文=吉田大助/『ダ・ヴィンチ』5月号 “愛”と“継承”の物語『NARUTO―ナルト―』特集より一部抜粋

ダ・ヴィンチ

『ダ・ヴィンチ』2015年5月号

KADOKAWA メディアファクトリー
定価650円(税込)

・第1特集 “愛”と“継承”の物語『NARUTO―ナルト―』
岸本斉史描き下ろしイラスト
岸本斉史×堀越耕平
竹内順子、杉山紀彰、中村千絵
・第2特集 男 アラーキーの裸ノ顔
北野武×荒木経惟