体験談は信じていいの? 「子育て情報」の真偽を判断する方法とは? 専門家がパパ・ママのQ&Aに答えました。

出産・子育て

2016/12/17

 今やパパもママも子育て世代の情報収集はネットが主流。「新生児はおくるみでグルグル巻きにするとぐっすり寝る」「子育て中の親はこまめに息抜きを」「しつけは大声で怒鳴りつけるのではなく冷静に指示して」…などなど、さまざまな育児情報が広まっている。

 だが、真逆の主張にどちらが正しいのか迷った経験はないだろうか?

「新生児はおくるみでグルグル巻きにするとぐっすり寝る」というけど、新生児の脚はМ字のままが自然で、無理にまっすぐにしないほうがいいと聞く。「子育て中の親はこまめに息抜きを」と同じくらい多く見聞きするのが、「できるだけ母乳で育てる方が丈夫な子に育つ」「子育てにはたくさん手をかけるべき」という意見。寝る時間を削ってまで子育てをがんばったほうがいいのか。

 また、今では「子どもを大声で怒鳴りつけるのではなく、冷静に指示する」のがしつけの常識だが、そうしたらしたで「厳しく怒鳴りつけないからいけないんだ」とやり玉に挙げられたりすることもある。いったいどの情報を信じていいのやら。

 情報が氾濫する今、何を信じればいいのか迷う人もいるだろう。しかもネットの情報は正しいものばかりとは限らない。何を基準に情報を判断したらいいのか。

その情報は信じていい?

 多くの人がこのように信頼性を評価していないだろうか。
「個人の意見<“ちゃんとした”WEBサイトの記事」

 悩みに対して、一般人が解決策を提案してくれるQ&A系のサイトや個人のブログなどは、専門家ではない“いち個人”の意見であり、根拠が明瞭な「ちゃんとした」記事とは別物である。一方、大手のサイトでアクセス数が多くて、立派なデザインで、署名記事で、情報元が表記してあれば安心、と。

 でも、一見「ちゃんとした」記事にも注意が必要だ。産婦人科医で自身も子育て中の宋美玄さんがこのように喚起している。

コラムサイトも玉石混交ですが、石が圧倒的に多いです。…
 最初から最後まで医学的に間違ったことがびっしり書かれているのに、本当らしくセンセーショナルにまとめられていて、読者はその内容に振り回されます。宋美玄のママライフ実況中継』より

 そして、WELQの件でも「キュレーションメディア」の問題が明らかになった。しかし、テレビでも雑誌でも書籍でも、医師が監修していてさえ、おかしな内容のものもある。では、どうやって「育児情報」と賢く付き合ったらいいのだろう?

孤独な中、不安を煽られるのは危険

 出産・育児情報に限らず、健康・ダイエット情報なども医学的根拠がないのに、まことしやかに伝えられている。「なぜ育児情報だけ?」と疑問に思うかもしれない。

 ひとつは、育児中の母親は孤独と感じがちだということ(ミキハウス子育て総研調べ)。妊娠・出産を経た女性の感情はセンシティブである。通常より無防備なため、情報に一喜一憂して、気持ちのゲージをすり減らしてしまいがちだからである。根拠のない情報でこれ以上、育児ストレスを増やしてほしくないからだ。

 困ったとき、不安なとき、ついネット検索に頼りがちだ。けれど、検索上位に来る記事は必ずしも正しくはない。情報を読み解く力、「リテラシー」をもっと高めれば、不安が減るかもしれない。とはいっても、リテラシーを高めるとはどういうことなのか。簡単ではないだろう。

 そこで、よく耳にする育児のうわさの真偽について、専門医ママシリーズ(メタモル出版)からピックアップしてみた。

ネット情報は正しいか専門家が解答

Q 粉ミルクを与えると病気になりやすい?
A 感染症予防は母乳だけではない

「母乳教」という言葉があるくらい、最近の母親は母乳育児に熱心だ。母乳には特有の免疫物質があり、様々な病気、とくに感染症にかかるリスクが減るのは明らか。でも、粉ミルクを与えると病気になりやすくなるというわけではないという。小児科医の森戸やすみ先生によると次の通り。

感染症予防の手段は母乳育児だけではありません。現在、日本全体の乳幼児死亡率は大変に低く、2011年の乳児死亡率(1000人のうち亡くなる数)は2.3。日本で最初の粉ミルクの発売は1917年ですが、その前年、ほぼ母乳栄養100%と考えられる1916年の乳児死亡率は170.3です。母乳だけで感染症などの病気を防ぐことができるなら、昔に比べて今のほうが赤ちゃんの死亡率がはるかに減っていることが不思議ですね*1(解答は記載の出展より抜粋。記事最後を参照)

 栄養・衛生・医療が充実した現代、粉ミルクを与えることが即、病気や死亡につながるわけではない。

Q 砂糖は子どもの健康に悪い?
A 血糖値上昇スピードは白米の方が早い

 子どもも大人も大好きな砂糖。しかし、「砂糖を食べるとキレやすくなる」などと、砂糖はとても怖い食品であるかのような噂もある。これについて管理栄養士の成田崇信氏の解答は次の通り。

(1)「砂糖はご飯(でんぷん)と違って血液中に急速に入り込むから血糖値の乱高下を引き起こし、子どもがキレやすくなる」、(2)「乳酸が生成され、血液が酸性になってカルシウムが抜ける」、(3)「ビタミンB1が不足して脚気になる」…
 でも、これらは全部ウソ。(1)については、そもそも血糖値は砂糖を取ったときよりも、消化の良いお粥を食べたときのほうが急速に上がります。お粥を食べたせいでキレやすくなることがないように、砂糖をとってもキレやすくはなりません。(2)については、激しい運動をすると体内で乳酸が発生しますが、だからといってカルシウムは抜けませんから、ありえないことだとわかります。(3)については、肉や野菜をしっかり食べていれば1日分のビタミンB1は十分に摂れるので、砂糖を食べたからといって、不足することはないでしょう。
 以上の理由で、砂糖を避ける必要はありません。(*2)

 特定の食べものが健康に「良い」「悪い」――このように食品の作用を過剰評価することを「フードファディズム」という。しかし、特定の食べものがそのように作用することはない。特定の食品を避けたり、大量に食べたりするのではなく、当たり前のことだが、バランスよく食べることが大切だ。

Q テレビは子どもに見せない方がいい?
A テレビが原因で発達に遅れが出ることはない

 子どもにテレビを見せると発達が遅れる、よくないという説がある。かといって、まったく見せないのも大変なことだ。それで、子ども番組を見せたりするけれど、罪悪感があるという人も少なくない。実際のところ、どうなのだろうか。日本小児科学会、日本小児神経学会は、以下のような発表をしている。

2004年4月に日本小児科学会(子どもの生活環境改善委員会)が、テレビ視聴時に親のかかわりが少なく、1日4時間以上見ている子どもでは、意味のある言葉の出始めが遅れるリスクが2.7倍高く、さらに言語理解・社会性・運動能力にも遅れがあったなどの調査結果を発表しました。これを受けて、同年7月には日本小児神経学会が「言葉の遅れや自閉症が、テレビやビデオ視聴のせいだとする十分な科学的根拠はない」との緊急声明を発表しています。

 先の「日本小児科学会」の調査報告では、テレビは発達の遅れや発達障害を引き起こすと誤解されそうだが、「日本小児科神経学会」はその調査を否定するようなコメントを出している。このふたつの学会の声明はどのように読み取ればいいのか。児童精神科医の白尾直子さんはこう考える。

テレビそのものが悪いというよりも、受動的にテレビを視聴する時間が長くなりすぎて、そのほかの経験(さまざまな運動、外遊び、絵本の読み聞かせや積み木などの遊び、親や友だちとのコミュニケーションなど)を積む時間が削られてしまうと、子どもの心身の発達への影響も起こりかねないというのが実際のところなのではないでしょうか。

 つまり、親が時間をコントロールして、親と一緒にコミュニケーションを取りながらテレビを見れば、「テレビすなわち悪」とまでは、言い切れないのである。(*3)

Q おしゃぶりは与えない方がいい?
A 歯並びに影響するのは3歳以上の子ども

 おしゃぶりをくわえさせると「クセになる」「歯並びが悪くなる」などと言われている。実際はどうなのか? 小児科医の森戸やすみ先生によると次の通りである。

赤ちゃんは生後3カ月頃まで、口をつけて吸う「吸啜(てつ)反射」をします。おっぱいを飲むために自然に備わった原始反射なので、お腹がすいていなくても、口で何かを探すとか吸いつくという動作をするのんですね。…
 私がいたNICU(新生児集中治療室)では、赤ちゃんに採血などの痛い処置をしたあと、すぐにおしゃぶりをくわえさせていました。

 おしゃぶりをくわえさせた場合、くわえさせなかった場合に比べ、心拍数が平常値に戻るまでの時間が短い、という研究結果があるからだ。つまり赤ちゃんが何かを「くわえて吸う」動作から安心感を得られるのではないか。
 新生児の赤ちゃんが、何をしても泣き止まない場合、おしゃぶりを試してみるのもありなのだ。気になる「クセ」についてもこう説明する。

おしゃぶりや指しゃぶりは、やめられなくて困ることは少なく、いつのまにかやめてしまうケースがほとんど。

 ただし3歳以上の子がおしゃぶりを吸い続けていると、永久歯の歯並びに影響を与えることもある。新生児のうちなら問題なさそうだ。(*1)

Q 無痛分娩は、赤ちゃんによくない?
A リスクはゼロではない。けれど陣痛の痛みに意味はない

 麻酔分娩や和痛分娩とも呼ばれる、「無痛分娩」。背中から管を入れて、神経に硬膜外に麻酔を入れ、痛みを抑えながら行われる出産方法だ。無痛分娩に24時間対応できる病院は少なく、あらかじめ日にちを決めて陣痛誘発をするケースが多い。やっぱり出産の痛みを感じてこそ一人前の母であり、赤ちゃんにもいいのだろうか?

赤ちゃんの負担としては、母胎の血圧が下がるために、胎盤にうまく血液が流れなくなり、呼吸が苦しくなることがあります。また、陣痛が弱くなる『微弱陣痛』によって、出産が長引く『遷延分娩』になることも。*3

 ほかにも血圧低下のリスクもあるが、無痛分娩による帝王切開率は普通の分娩と変わりがない。そしてリスクもあるが、メリットもある。

痛みに弱い人、産後の回復を早めたい人にとっては有用です。そして陣痛の痛みを経験した私個人の感想としては、あの痛み自体に意味があるとは思えません。「痛みを感じることで母性が強くなる」と言う人がいますが、それは根拠のない価値観の押し付けです。

 自分にとって何が大切かよく考えた上で出産方法は選びたい。

気になることはたくさん調べてみよう

 このように科学的に「ありえない」ことが世の中では無責任に語られている。間違った情報を信じた結果、しなくてもいい努力をしたり、極端な食生活を貫いて子供の健康に害を与えることにもなりかねない。このように情報を簡単に信じてしまわないためにはどうしたらいいのか。
 ある疑問が沸いたときは、ひとつの情報では満足しないでたくさん調べてみるのがいいだろう。ネットだけではなく、書籍で調べたり、行政が設けている相談窓口を訪ねてみたりしてもいい。様々な考えに接していくうちに、見極める力が身についてくるのではないだろうか。

 けれども、「そんなに時間が取れない…」という人も多いだろう。その場合は、『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』*6が入門の一冊としていいだろう。この本は、一冊で育児、医学、教育、食、教育それぞれの専門家が、子育てにまつわる疑問にコンパクトに答えてくれている。読み進めていくうちに、根拠がある情報とはどういうものか、わかる構成になっている。
 この本のあとがきで、ニセ科学に詳しい大阪大学教授の菊池誠氏はこう語っている。

希望を叶えてくれるものには飛びつきたくなりますが、希望と事実は違います。きちんとした根拠が示されているでしょうか。…
 またうますぎる話にはちょっと立ち止まりましょう。たとえば、万能のものなんてありません。…
 つまらないかもしれませんが、結局は普通のものや普通のことが一番よかったりします。

 反対に、極端に「恐怖・不安」をあおる情報も、まず「あやしい」と疑ってみるべきだ。科学ジャーナリストの松永和紀氏の『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(光文社)には、このように書かれている。

「危険ですよ」「要注意ですよ」と警鐘を打ち鳴らす。これがマスメディアの特徴です。「○○には気を配らなくてもいいですよ」では、読者は興味を持ってくれません。(*7)

 この本では、さまざまな具体例を挙げながら、どうしてテレビなどのメディアがあやしい健康情報などを伝えてしまうのか、どうしたら真偽を見抜くことができるのか詳しく論じている。ぜひ一読をおすすめしたい。
そして、最終章の科学報道を見破るための十カ条を覚えておくと、必ず役立つだろう。

科学報道を見破る十カ条
1 懐疑主義を貫き、多様な情報を収集して自分自身で判断する
2 「○○を食べれば……」というような単純な情報は排除する
3 「危険」「効く」など極端な情報は、まず警戒する
4 その情報がだれを利するか、考える
5 体験談、感情的な訴えには冷静に対処する
6 発表された「場」に注目する。学術論文なら、信頼性は比較的高い
7 問題にされている「量」に注目する
8 問題にされている事象が発生する条件、とくに人に当てはまるのかを考える
9 他のものと比較する目を持つ
10 新しい情報に応じて柔軟に考えを変えてゆく(*7)

 最後に、子育ては楽しい一方で、とても大変なものだ。おかしな情報によって手間を増やされたり、悩まされたりすることないほうがいいに決まっている。子育て中の人だけでなく、それ以外の人もおかしな情報をシェアしないように気をつけたいものだ。

文=武藤徉子

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