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やりたくない仕事をする時代はもう終わり。「しるし書店」の次は、”子どものための学校”!? キンコン西野亮廣さん【インタビュー後編】

にしのさんの自宅アトリエにて

――西野さんのお仕事の進め方について具体的に伺いたいのですが、新しいアイデアを考えるとき、何かテーマにしていることや基準にしていることはありますか?

西野亮廣さん(以下、西野) 自分ひとりでやっているわけじゃないので、仲間とよく話題にするのは、世の中の解決しなくちゃいけない問題です。たとえば僕が去年一番気になったニュースは、「銀杯」だったんです。100歳の誕生日を迎えた人が首相から贈られる銀杯が、高齢者の増加のために銀メッキになったんですよね。でもそれは国が一生懸命、医療を発展させたりして国民の寿命を長くする努力をしてきたおかげじゃないですか。それなのにアンチエイジングみたいな言葉が流行って、高齢者が増えることや年をとることをネガティブにとらえる風潮が強まっている。

 そんなに高齢化が困るんだったら、寿命を延ばすなよっていう話です。寿命を延ばすだけ延ばしておいて、60とか65で定年退職したあと40年間、ただ社会のお荷物として衰えていくだけなんて虚しい。これはクリアにしなきゃいけない問題だと思って、60歳、70歳、80歳と年を経るごとに成長している部分は何なんだろう? と考えたわけです。

 たとえば、20、30代の人が遅刻したら怒られるけど、70、80代のおじいちゃんおばあちゃんが遅刻してもきっと許される。その、「おじいちゃんおばあちゃんだから、しゃあねえな」と許される力はどんどん成長していくなと。つまりその「愛され力」みたいな魅力は、効率と正確性だけを求めるロボットの対極にあるものです。

 その、“しゃあねえな力”で成り立つ仕事はなんだろうという話をしていて、それが、「店主が読んで、店主が“しるし”を入れた世界に一冊だけの本」を取り扱う古本屋さん「しるし書店」のプロジェクトへとつながっていきました。

――つまり本を通して、高齢者も含めた他人の物語を共有するということですね。

西野 そうです。「しるし書店」を企画したもうひとつの理由として、みんな出版不況とか嘆いているわりに、行動を起こす人が誰もいないということもありました。自分の本を売ることばかり考えて、出版業界全体を底上げするために動いている人が見当たらない。僕も本を出しているので、紙の本に興味持ってくれる人が増えたほうが、市場のパイが大きくなるじゃないですか。カラオケにいくより、居酒屋にいくより、本屋さんにいく人を増やしたほうが結果的に効率がよくなる。そういう思いもありました。

――クラウドファンディングで絵本の制作、展覧会、プロジェクトの資金集めをして多くのサポーターが西野さんの活動を支援するようになりました。「しるし書店」の支援金も順調に集まっていますね。

西野 ありがたいですね。おかげさまで、クラウドファンディングやオンラインサロンで、お客様がダイレクトに課金してくださるシステムが整ったので、今はお金稼ぎのことを考える必要がなくなりました。もともとお金儲けには興味がないんですよ。そんなことよりも、お客様に信用されているほうがいいし、アイツいつも楽しそうなことやってるなと思ってもらえるほうがいい。そうなったらお金は後からついてきますから。

――西野さんの場合、信用プラス期待もきっと大きいですよね。

西野 そうかもしれないですね。タレントさんはこれから、そっちでやっていったほうがいいと思うんですよ。タレントの収入って元をたどると広告費じゃないですか。スポンサーさんが広告費を払って、その一部がタレントさんのギャラになっている。ということは、タレントさんは好感度を求められるわけです。好感度を高めるためには、グルメ番組に出たらマズくても美味しいって言わなきゃいけないし、やりたくない番組でもいい顔しなきゃいけない。10年前ならそれでよかったかもしれませんけど、今はその店の料理が美味しいかマズいかなんてネットで調べればすぐわかりますし、嘘をついたらすぐバレます。

 つまり好感度を高めたければ、場合によっては嘘をつかなきゃいけないので、信用が下がってしまうわけです。認知度はあがっても人気や信頼がなくなると、それは大きな損失になります。“認知タレントさん”は、無料イベントだと人がくるけど、有料イベントだと人が集まらない。そうなってくるとヤバいですよね。収入を広告費にすべて頼るのはあまりにも危険なので、半分ぐらいにしておいて、もう半分はお客さんからのダイレクト課金で生きていくほうが健全だと思います。昔の芸能界と同じですよね。演芸小屋で芸を披露して、万札をつなげたネックレスを首にかけてもらうとか。投げ銭と同じ感覚です。

――独演会を続けているのも、そこを大事にしたいからなんですね。

西野 そうですね。ダイレクト課金の時代が絶対にくると思っているので。そういう時代に楽しく仕事していくために決めているのは、おもろない仕事はしないこと、嘘はつかないことです。お金は信用さえしてもらったら後からついてきますから。そのことを確信できてから、物事をより純粋にシンプルに考えられるようになりました。

――そうすると今は、精神的なストレスはないですか?

西野 うーん、ないですね。毎日、必ず誰かに「お前なにやってんの?」って言われますけど、そもそも相手にしてないので。そんなこと気にするより友だちとしゃべってるほうが楽しいですし。あえて不満をあげるなら、特に上の世代の人たちに、炎上をすごくネガティブにとらえている人が多いことですね。それは議論なのか、おでんツンツン男の炎上と同じレベルなのかの区別もつけずに、炎上芸人みたいな言われ方をされるのは納得いかないです。

 2013年にNYで開いた原画展の資金を、クラウドファンディングで募ったときも、めちゃくちゃ叩かれたんですよ。「人のお金で自分がやりたいことをやるなんて何事だ!」と。芸人からも言われたので、「お前らもライブするでしょ? ライブでお金とるじゃん。あれこそ完全なクラウドファンディングで、売り物は後から出すわけでしょ」って言ったんです。先にお金を徴収してから、何をやるかを披露する。コンサートだって、本番で何が飛び出すかわからないけど、先にお金を集めて衣裳つくったり設備を整えたりするわけで、「何が違うの?」と説明しても、なかなかわかってもらえませんでした。

 新しいものを理解できない人って、自分が恥をかくのが怖くてまず否定するんですよ。日本には、新しいものに対してまず否定から入る文化がありますよね。それって、未来の楽しいことを先延ばしにしている原因になっていると思います。

――「しるし書店」のほかに進めている企画があれば教えてください。

西野 この前、リクルートの社長さんに呼び出されて、学校の先生やってくださいって言われたんですよ。それで、リクルートさんが新宿3丁目に開校する子どものための学校で、藤原和博さんと一緒に、仕事のつくりかたやお金のことがわかる授業をする予定です。子どもたちに経済のことを教えない学校って、常識的に考えてもありえないですよね。先進国で日本ぐらいじゃないですか。そのほうが国民を支配しやすいですから。国がやらないなら、できる人がやるしかない。今はもうそういう時代になっている。

 子どもは大好きなので楽しみです。自分より年上がやっていることはだいたいわかったので、そこは尊重しつつ、これからは自分より年下の人たちと積極的に関わっていきたいですね。特に、想像もつかない行動を起こす子どもの面白さには大人は絶対かなわないので、先生をやりながらたくさん刺激を受けたいと思っています。

【前編】キンコン西野亮廣さんの自宅アトリエを訪問! 誰もやらないことをやることこそ、芸人の仕事。

取材・文=樺山美夏 写真=花村謙太朗

 

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