医学博士の学位を持つ弁護士が語る「医療裁判」の戦い方——ヤブ医者に騙されないために

社会

公開日:2018/1/24

『医療事故に「遭わない」「負けない」「諦めない」』(石黒麻利子/扶桑社)

 日本の高齢者の割合は全人口のおよそ30%を占めるようになり、医者にかかる人の割合も同時に増えていることは間違いない。医者の数が変わらないとして医療件数が増えると、1件1件の医療現場の質は落ちることもまた必至だ。そんななかで、医療事故に遭わないために、また、医療裁判で負けないために知っておくべきことがある。『医療事故に「遭わない」「負けない」「諦めない」』(石黒麻利子/扶桑社)は、医療事故に関して今だからこそ知っておかねばならないことを分かりやすい言葉で徹底的に解説している。

 本書の著者、石黒麻利子氏はこれまで数々の医療裁判を請け負ってきた正真正銘プロの弁護士だ。しかも日本国内には数十人しかいないといわれている医学博士と弁護士資格の両方を持つ強者である。そんな彼女は今ずさんな医療現場の存在に警鐘を鳴らす。

 本書は、法の知識と医療の知識の双方に精通している著者が医療事故の予防、医療裁判の進め方などを、法の観点と医療の観点の両方からズバリ切り込む形で紹介している。

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 具体的に紹介されているのは、カルテの改ざんを行う医師の存在があることや裁判をけしかけるのは病院側の弁護士であることなどだ。そしてこのような危険な医者の見抜き方から、医療ミスの補償のための損害賠償金の額は示談でも裁判でも変わらないこと、勝率2割といわれる厳しい医療裁判の戦い方といったことまでを徹底的に伝授している。

 これからも医療に向き合うことが多くなるはずの一般市民のわれわれが知っておくべき医療現場の実態を収めた本書は、これからの時代の新しい「教養書」となることは間違いない。医療現場と医療裁判に関する知識を身につけ、充実したウェルフェアライフを送りたいみなさんにおすすめしたい。

文=ムラカミ ハヤト