第162回芥川賞は古川真人の『背高泡立草』に、直木賞は川越宗一の『熱源』に決定!

文芸・カルチャー

2020/1/15

 第162回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)が発表された。選考会は1月15日(水)、東京・築地の新喜楽で開かれ、「芥川龍之介賞」は古川真人の『背高泡立草(せいたかあわだちそう)』に、「直木三十五賞」は川越宗一の『熱源』に決定した。

【第162回芥川賞受賞作品】

『背高泡立草(せいたかあわだちそう)』(古川真人/集英社)

【あらすじ】
草は刈らねばならない。そこに埋もれているのは、納屋だけではないから。
記億と歴史が結びついた、著者新境地。
 
大村奈美は、母の実家・吉川家の納屋の草刈りをするために、母、伯母、従姉妹とともに福岡から長崎の島に向かう。吉川家には〈古か家〉と〈新しい方の家〉があるが、祖母が亡くなり、いずれも空き家になっていた。奈美は二つの家に関して、伯父や祖母の姉に話を聞く。吉川家は〈新しい方の家〉が建っている場所で戦前は酒屋をしていたが、戦中に統制が厳しくなって廃業し、満州に行く同じ集落の者から家を買って移り住んだという。それが〈古か家〉だった。島にはいつの時代も、海の向こうに出ていく者や、海からやってくる者があった。江戸時代には捕鯨が盛んで蝦夷でも漁をした者がおり、戦後には故郷の朝鮮に帰ろうとして船が難破し島の漁師に救助された人々がいた。時代が下って、カヌーに乗って鹿児島からやってきたという少年が現れたこともあった。草に埋もれた納屋を見ながら奈美は、吉川の者たちと二つの家に流れた時間、これから流れるだろう時間を思うのだった。

【プロフィール】
古川真人(ふるかわ まこと)●1988年生まれ。第一薬科大学付属高等学校卒。2016年「縫わんばならん」で第48回新潮新人賞を受賞しデビューし、同作で第156回芥川賞候補に。
第2作「四時過ぎの船」で第157回芥川賞候補、第31回三島由紀夫賞候補、第4作「ラッコの家」では第161回芥川賞候補にノミネート。

【第162回直木賞受賞作品】

『熱源』(川越宗一/文藝春秋)

【あらすじ】
樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。
一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。
日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。
文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。

樺太の厳しい風土やアイヌの風俗が鮮やかに描き出され、国家や民族、思想を超え、人と人が共に生きる姿が示される。
金田一京助がその半生を「あいぬ物語」としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に描かれた、読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作。

【プロフィール】
川越宗一(かわごえ そういち)●1978年生まれ。2018年「天地に燦たり」で第25回松本清張賞を受賞しデビュー。
『熱源』で第10回山田風太郎賞候補、第9回本屋が選ぶ時代小説大賞受賞。

■第162回芥川龍之介賞の全候補作はこの5作品

・木村友祐『幼な子の聖戦』(すばる 11月号)

・髙尾長良『音に聞く』(文學界 9月号)

・千葉雅也『デッドライン』(新潮 9月号)
 作品レビューを公開中▶「抱かれればいいのに。いい男に」――気鋭の哲学者による“哲学×青春”小説

・乗代雄介『最高の任務』(群像 12月号)

・古川真人『背高泡立草(せいたかあわだちそう)』(すばる 10月号)

■第162回直木三十五賞の全候補作はこの5作品

・小川哲『噓と正典』(早川書房)

・川越宗一『熱源』(文藝春秋)

・呉勝浩『スワン』(KADOKAWA)
 著者インタビューを公開中▶残酷な現実と切り結ぶ少女の物語。彼女は何と闘っていたのか?

・誉田哲也『背中の蜘蛛』(双葉社)
 作品レビューを公開中▶唐突に容疑者が浮上する違和感…前人未到、衝撃の警察小説

・湊かなえ『落日』(角川春樹事務所)