隠れエロ、非モテ……あの文豪の意外な素顔

文芸・カルチャー

2012/10/31

 芸人随一の読書家で、太宰治を敬愛するなど大の文学好きとして知られるピース又吉。彼がブレイクしたことで、文豪についても注目されるようになった。しかし、文豪の名前を聞いても「教科書で読んだだけ」「タイトルは知ってるんだけど……」といった人も多いのでは? 又吉のように文豪について語れたらかっこいいのに、文豪の作品はお堅い感じがしてなかなか手を付けられない――そんな人にオススメしたいのが、10月21日に発売されたコミックエッセイ『よちよち文藝部』(久世番子/文藝春秋)だ。

 文豪や、彼らの作品がとても身近に感じられるようになる、この本。たとえば、石川啄木の場合は、「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざり」という有名な詩をピックアップ。家族を養うために必死に働く様子を書いたこの詩から、親孝行で真面目な苦労人のようなイメージを持っている人もいるだろう。しかし、それは大きな間違い! プライドが高く、女遊びも好きだった彼は、仕事も休むことが多く、金遣いも荒かったそう。代表作のひとつである「不来方のお城の草に寝転びて空に吸はれし十五の心」も、ひとつ前の「教室の窓より遁げてただ一人かの城址に寝に行きしかな」と合わせてみると、ただ教室を抜け出して授業をサボっているだけ。「不来方の~」だけなら、ただ草原に寝転んで思春期の思い耽る様でも描いているのかと思うが、きちんと本で読むと見えなかった作者の本当の姿が見えてくる。教科書に載っているような一、二首を読んだだけでは見えてこないものが、本書を読むとよくわかる。

 一方、意外な素顔がわかるのが、中島敦の項だ。写真に映る彼の姿は、ビンの底のように分厚い丸メガネをかけ、もっさりとした髪型の冴えない青年。その上、代表作『山月記』の主人公・李徴が「臆病な自尊心と、尊大な羞恥心」のせいで虎になってしまうことから、李徴と作者を重ね、プライドの高い人だと思われがち。また、西遊記の沙悟浄を主人公にした『悟浄歎異―沙門悟浄の手記―』では、孫悟空や三蔵法師、猪八戒と比べて俺には何もないと落ち込んだりもしている。そんな非モテ男子の共感を呼びそうな作品を書いているせいか、作者の中島もさぞパッとしない人物なのだろうと決めつけてしまいそうになる。しかし、実際の中島は話し上手でダンスを習うなど多趣味な人だったのだとか。さらに、勤めていた女学校の生徒たちにも人気で、後に妻となるたかには熱烈なラブレターを送って恋愛結婚するなど、そのリア充っぷりが取り上げられている。作品で人は判断できない好例だ。

 このほか、川端康成の代表作『雪国』のエロさにも着目したり、夏目漱石の『坊っちゃん』がmixiにいたら……など、読めば読むほど文豪について知りたくなる構成の本書。さらに文豪に興味を持った人は、現在、宮沢賢治や永井荷風、坂口安吾といった文豪たちの作品を原作にしたオムニバス映画『BUNGO~ささやかな欲望~』も公開中なので、そちらもぜひオススメしたい。