石川啄木を無限の借金地獄へと追い立てたもの/炎上案件 明治/大正 ドロドロ文豪史④
日本文学史に残る数々の名作の裏には、炎上があった…! 不倫やフェチ、借金、毒親、DVなど…文豪たちは苦しみながらアノ名作を残した。炎上キーワードをひもとき、彼らの人生の一時期を紹介する『炎上案件 明治/大正 ドロドロ文豪史』(山口謠司/集英社インターナショナル)から、5つの炎上案件を掲載!※本記事は 山口謠司 著の書籍『炎上案件 明治/大正 ドロドロ文豪史』から一部抜粋・編集した連載です
『炎上案件 明治/大正 ドロドロ文豪史』(山口 謠司/集英社インターナショナル)
石川啄木の成心 借金王啄木が求めたもの
イラスト:三浦由美子
詩はいわゆる詩であってはいけない。人間の感情生活(もっと適当な言葉もあろうと思うが)の変化の厳密なる報告、正直なる日記でなければならぬ。したがって断片的でなければならぬ。─まとまりがあってはならぬ。そうして詩人は、けっして牧師が説教の材料を集め、淫売婦がある種の男を探すがごとくに、何らかの成心をもっていてはいけない。 (石川啄木『食うべき詩』) 「成心」とは、もともとは「ある立場に囚われた見方」つまり先入観のこ…